お役立ちコラム

「交際費等の範囲」の概要と具体例~押さえておくべき他科目との違い


 

 

1.交際費等の法人税法上の取扱い

 交際費等とは「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」(※1)と規定されています。

 交際費等は本来、得意先との関係を円滑にしたり親密化を図ったりして、事業の継続拡大に寄与する販売促進費用でもあります。

 しかし、こういった支出を際限なく損金として認めてしまうと、過度の接待や特定の個人への所得移転により、企業資本の私的使用や課税逃れにつながる可能性があります。

 そこで、法人税法ではいわゆる「冗費・濫費」を抑制するために、交際費等については原則損金不算入としています。

(※1)租税特別措置法 第六十一条の四(交際費等の損金不算入)

 

2.交際費等の損金算入・不算入の判断

 交際費等は原則損金不算入とされていますが、一定の要件を満たすと損金算入できる場合もあります。

(1) 個々の支出が法人税法上の交際費等に該当するかどうかを検討する

(2) 事業年度における交際費等の合計額に対して適用できる損金算入規定を検討する

 (1)に関しては、その支出の内容や金額を基に、通達等で示された交際費等の範囲に照らし合わせ、個々に判断を行います。そこで該当しないと判断されれば、交際費等としての損金不算入の対象からは外すことになります(当然別の観点から損金不算入にならないか検討する必要はあります)。

 (2)に関しては、交際費等のうち、接待飲食費の50%相当額のみ損金算入が認められているほか、一定の中小法人においては年800万円までの交際費等の損金算入(接待飲食費の50%損金算入と重複適用不可)も認められています。

 これらのうち、(1)の判断を行うにあたっては、「交際費等の範囲」を理解しておくことが重要になります。そこで、本コラムではこの交際費等の範囲についての概要と具体例を紹介します。

 

3.交際費等の範囲の概要

 どのような場合に交際費等として課税されるのかについて、三要件説が多く用いられます。

【交際費等の三要件説】(※2)

  • 「支出の相手方」が事業に関係のある者等であり
  • 「支出の目的」が事業関係者等との間に親睦の度を密にして取引関係の円滑な推進を図ることであるとともに
  • 「行為の形態」が接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為である

 交際費等に該当するかどうかは、基本的には上記の要件に当てはめて判断しますが、一般的に交際費等はその相手方や目的、形態が多岐にわたることから判断が難しいケースが多くあります。

 国税庁の法令解釈通達においても判断の例示が多数掲載されており、参考にすることができるため、その内容を科目別に紹介します。(※3)

 

(1)寄附金との区分

 以下の支出は事業に直接関係のない者に対する金銭の寄附であるため、原則として交際費等には含めず、寄附金として取扱う。

  • 社会事業団体、政治団体に対する拠金
  • 神社の祭礼等の寄贈金

 

(2)値引き・割戻との区分

 法人がその得意先である事業者に対し、売上高等に比例して金銭で支出する売上割戻しの費用等は、交際費等に該当しないものとする。

 また、金銭に変えて物品等を交付する場合は、以下のように判断する。

  • 得意先で事業用資産(棚卸資産か固定資産)として使用する場合は交際費等に該当しない。
  • 購入単価がおおむね3,000円以内である場合は交際費等に該当しない。
  • 上記以外の物品の交付又は旅行・観劇等に招待する場合は交際費等に該当する。

 

(3)広告宣伝費との区分

 不特定多数の者に対する宣伝的効果を意図するものは広告宣伝費の性質を有するものとし、次のようなものは交際費等に含まれないものとする。

  • 製造業者又は卸売業者が、抽選により、一般消費者に対し金品を交付するために要する費用又は一般消費者を旅行、観劇等に招待するために要する費用
  • 製造業者又は卸売業者が、金品引換券付販売に伴い、一般消費者に対し金品を交付するために要する費用
  • 製造業者又は販売業者が、一定の商品等を購入する一般消費者を旅行、観劇等に招待することをあらかじめ広告宣伝し、その購入した者を旅行、観劇等に招待する場合のその招待のために要する費用
  • 小売業者が商品の購入をした一般消費者に対し景品を交付するために要する費用
  • 一般の工場見学者等に製品の試飲、試食をさせる費用(これらの者に対する通常の茶菓等の接待に要する費用を含む。)
  • 得意先等に対する見本品、試用品の供与に通常要する費用
  • 製造業者又は卸売業者が、自己の製品又はその取扱商品に関し、これらの者の依頼に基づき、継続的に試用を行った一般消費者又は消費動向調査に協力した一般消費者に対しその謝礼として金品を交付するために通常要する費用

 

(4)福利厚生費との区分

 社内の行事に際して支出される金額等で次のようなものは交際費等に含まれないものとする。

  • 創立記念日、国民祝日、新社屋落成式等に際し従業員等におおむね一律に社内において供与される通常の飲食に要する費用
  • 従業員等(従業員等であった者を含む。)又はその親族等の慶弔、禍福に際し一定の基準に従って支給される金品に要する費用

 

(5)給与等との区分

 従業員等に対して支給する次のようなものは、給与の性質を有するものとして交際費等に含まれないものとする。

  • 常時給与される昼食等の費用
  • 自社の製品、商品等を原価以下で従業員等に販売した場合の原価に達するまでの費用
  • 機密費、接待費、交際費、旅費等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないもの

(※2)東京高等裁判所判決 平成15年9月9日

(※3)国税庁ホームページ 法令解釈通達 第一款 交際費等の範囲

 

4.交際費等の範囲の具体例

 上記の概要・他科目の区分を見ても判断が難しい場合もあります。

 そこで、実務上の判断の例として、Q&A形式で以下に列挙しました。

Q1

自動車の製造を営む法人ですが、販売促進のために、自動車を購入した一般消費者を抽選によって温泉旅行に招待することとし、この旨を大々的に宣伝しています。この招待に要する費用は、交際費としなければならないのでしょうか。

A1

製造業者または卸売業者があらかじめ広告宣伝して、一般消費者を旅行に招待する費用は、不特定多数の者に対する広告宣伝を目的とするものであるため交際費等には該当しません。
 なお、旅行、観劇等に招待する相手が一般消費者ではなく得意先である小売業者または卸売業者の場合には、広告宣伝の費用というよりは得意先である業者の歓心を買うための費用と認められることから、交際費等として取り扱われることになります。(「CSアカウンティングお役立ちコラムNo.1024」より)

 

Q2

株主総会を開催する際に、出席した株主に対してお土産品を持たせることがありますが、これは交際費となるのでしょうか?

A2

他社から購入した菓子折り等を土産品として持たせる場合は、その購入費用を交際費とします。交際費等は法人がその得意先や事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答等の行為にかかる費用で、一定額が損金不算入となります。つまり株主総会で菓子折りを渡す行為も接待に当たると考えられます。
 しかし、一方で食品会社が自社製品をお土産品として持たせた場合は基本的には得意先に対する見本品や試用品に通常要する費用となって、広告宣伝費として処理することができます。但し、その額が高額の場合や、持株数に応じて株主に異なるお土産品を用意している場合は交際費等となる可能性があります。
 交際費になるかどうかの判断は、接待等を行うための支出であるかどうかがポイントになります。(「CSアカウンティングお役立ちコラムNo.1431」より)

 

Q3

接待用のみに使用する固定資産を購入した場合において、その購入費用は交際費に該当するのでしょうか。

A3

接待用のみに使用する固定資産を購入した場合において、その資産の取得時点ではまだ接待行為を行っていないことから、交際費等の範囲に掲げる「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為」には該当せず、その取得価額が交際費に該当することはありません。
 またその固定資産が減価償却資産であった場合に、各事業年度において計上する減価償却費は「支出」によって計上する費用ではないので、こちらも交際費に該当することはありません。
 したがって、当該固定資産の購入費用は取得時・減価償却費の計上時のいずれにおいても交際費の認識をする必要ありません。(「CSアカウンティングお役立ちコラムNo.1443」より)

 

Q4

法人税の通達にある、『交際費等の意義』に、交際費等の支出の相手方として『その他事業に関係のある者等』と明記させていますが、どのような者が含まれるのでしょうか。

A4

間接的に利害関係のある者、及びその法人の役員、従業員、株主等も含まれます。
 交際費等の支出の相手方は、得意先、仕入先等その法人と直接取引関係のある者の他、間接に利害関係のある者等もその対象とされます。(措通61の4(1)-22、68の66(1)-25)
 例えば、株主、直接取引関係のない同業者、関係官庁等の社外の者だけでなく役員、従業員等、社内の者も含まれます。したがって出張してきた本店の職員を支店において接待する費用や、株主総会後に行う株主を対象とした懇親会の費用等も交際費の範囲となります。
 なお、一般の消費者についてはその法人と取引をするという点で、事業に関係のある者に含まれてきますが、その取引に対して行われる接待、贈答等が広告宣伝の意味合いをもったものであれば、その接待、贈答等については交際費に該当しません。(措通61の4(1)-9、68の66(1)-9)(「CSアカウンティングお役立ちコラムNo.1898」より)

 

Q5

社長の結婚披露宴の費用を会社で支払うことになりました。招待客の大半が得意先等の事業関係者なので、この費用は会社の交際費になりますか?

A5

交際費ではなく、社長に対する役員報酬として損金不算入の費用となります。
 結婚式や結婚披露宴は、社会通念上個人の私的行事とされ、会社の事業のために得意先を接待する目的で催したとは考えがたいものです。たとえ会社が得意先等の事業関係者を多数招待した事実があるとしても、会社が費用負担することは適当ではないといえます。
 社長の結婚披露宴の費用は、社長が個人として負担すべきものですので、その費用を会社が支払った場合は、社長に対する役員賞与としてその全額が損金不算入とされます。
 冠婚葬祭に関連する費用として、社葬費用を会社が支払う場合は、社会通念上相当であると認められるときは、社葬のために通常要すると認められる部分の金額は、損金算入することができます。
 社葬は会社の行事であると認められるのに反して、結婚式はあくまで私的行事であると認識され、社葬とは本質を異にするものとされています。(「CSアカウンティングお役立ちコラムNo.1987」より)

 

関連ページ:会計・経理・税務サービス|サービス紹介|CSアカウンティング株式会社

 

執筆者:西山

(c)123RF

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