お役立ちコラム

メンタルヘルス対策とストレスチェック制度について


 

4月に入り、新たな社員の入社や異動の季節となりました。
期待と夢が膨らむ季節でありますが、新しい環境・新たな人間関係が発生する中で社員のメンタルヘルスケアがより重要となる季節でもあります。

クライアント先様からのご相談も多くなってきている【メンタルヘルス対策】について、御社ではどの様な措置を取られていらっしゃいますか?

 

現在の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスになっていると感じる事柄がある労働者」の割合は59.5%(平成29年労働安全衛生調査)と、多くの社会人がストレスを抱えている事が統計上も明らかになっています。

 

国は、労働安全衛生法を改正し、『ストレスチェック制度』を義務付けしました。

 

ストレスチェック制度とは

 

ストレスチェック制度の概要は下記の通りとなります。

 

1. 常時使用する労働者50人以上の事業者は、年1回、労働者に対してストレスチェックを実施することが義務となります。(50人未満の事業所については「努力義務」)

2. プライバシー保護の観点より、検査結果は、検査を実施した医師、保健師等から直接本人に通知され、本人の同意なく事業者に提供することは禁止されます。

3. 検査の結果、労働者から申出があった場合、医師による面接指導を実施することが事業者の義務となります。
※事業者が面接指導を申し出たことを理由に、労働者に対して不利益な取扱をすることは禁止されています。

4. 面接指導の結果に基づき、医師の意見を聴き、必要に応じ就業上の措置を講じることが事業者の義務となります。
※就業上の措置とは、労働者の実情を考慮し、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業務の回数の減少等の措置を行なうこと。

 

よく、クライアント先様から受ける質問に【労働者50人】のカウントの仕方について受ける事があります。特に、派遣先の場合、派遣労働者の方を含めるのかどうか?についてです。

回答としては、派遣先の常時労働者に派遣労働者は含めてカウントしてください。但し、ストレスチェックを実施する対象者には必ずしも派遣社員の方を対象にしなくても問題ありません。

具体例を記載します。

 

(質問):45人の正社員と10人の派遣社員が働いている事業場では、派遣社員も含めてストレスチェックを実施する必要がありますか?

(回答):事業場の人数の数え方は、派遣労働者を含めて数えますので、常時50人以上の労働者を使用する事業場となり、45人の正社員に対してストレスチェックを実施する義務があり、派遣労働者10人に対しては、ストレスチェックを実施する法的義務はありません。

しかし、指針では、「集団ごとの集計・分析については職場単位で実施することが重要であるから、派遣先は派遣先事業場における派遣労働者も含めた一定規模の集団ごとにストレスチェック結果を集計・分析するとともに、その結果に基づく措置を実施することが望ましい」とされています。

派遣先においても、派遣元とは別途、自社の労働者と合わせて派遣労働者に対するストレスチェックを実施し、その結果に基づく措置を実施することが望ましいです。

 

ストレスチェックを実施するために

 

一般的に、ストレスチェックに対するイメージがあまり芳しくないように見受けられます。

私がメンタル疾患になる訳がない、これまで色々なストレスを乗り越えて今があるのだから!という懸命に仕事に取り組む社会人が多い事の裏返しなのでしょうか?

ストレスチェックの受検を拒否する人が多い、という相談も受ける事があります。

 

会社としては受検者数が少ない場合でも、ストレスチェックを実施したことになるのかどうか不安になる所です。

労働者は受検することを義務づけられてはいません。よって、強制的にチェックを受けさせる事が出来ず、就業規則等でも受検しない者に対して懲戒等を課す事も出来ません。

 

厚生労働省のストレスチェック制度実施マニュアルには以下が示されています。

 

~~~~~~~~~~

<解説>

  • 事業者による個々の労働者の受検の有無の把握と受検勧奨については、受検しない労働者に対する不利益取扱いが行われないことを確保した上で、実施することが可能です。ただし、ストレスチェックを受検すべきことを就業規則に規定し、受検しなかったことをもって懲戒処分の対象とすることは、受検の強要や受検しない労働者に対する不利益取扱いに当たる行為であり、行ってはいけません。
  • 業務命令のような形で強要するようなことのないよう、受検勧奨のやり方については衛生委員会等でよく話し合い、労働者に周知しておく必要があります。
  • 実施者又はその他の実施事務従事者が自ら受検の勧奨をすることも可能です。

(厚生労働省のストレスチェック制度実施マニュアル抜粋)

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受検を拒否する従業員には制度趣旨をご理解頂ける様、何度も丁寧にお話し、受検してくれるよう、粘り強く勧奨を続けるしかない様です。

 

ストレスチェック実施の報告

 

実施の報告は、制度の趣旨を考えれば、全ての労働者が受検することが望ましいですが、未受検者に対して勧奨しても受検しなかった場合、結果的に少ない人数であっても、実施はしたことになりますので、そのまま報告することになります。

 

もちろん従業員数50人未満の会社でもストレスチェックを実施する事は可能ですし、大変望ましい事です。

働き方改革で長時間労働の抑制に伴い、従業員同士ゆっくり語り合う機会も少なくなってしまう事も懸念されます。

ストレスチェックを行って、会社と従業員の関係が良好になるきっかけ作りに役立てるかもしれません。

 

厚生労働省では「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラムの無料ダウンロード」もあります。無料のプログラムになりますのでこの機会に是非御社でも導入をご検討ください。

 

関連ページ:

厚生労働省版ストレスチェック実施プログラムダウンロードサイト

労務コンサルティング|人事・労務・社会保険サービス

 

執筆者:渡辺

(c)123RF

 

 

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