お役立ちコラム

職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けて


 

近年、パワー・ハラスメント(以下「パワハラ」という。)がもたらす様々な弊害への社会的な関心が高まってきており、ひとたびパワハラが生じると、職場内秩序を乱し、組織の正常な業務運営の障害となり得るものとなります。今回は、パワハラとは何か、ということからその予防・解決のポイントまでをご紹介致します。

 

1.パワハラとは何か(パワハラ6類型)

一般に「職務上の地位や権限又は職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、人格と尊厳を侵害する言動を行い、精神的・身体的苦痛を与え、あるいは職場環境を悪化させること」を指すといわれています。

6類型として、

(1)身体的な攻撃

(2)精神的な攻撃

(3)人間関係からの切り離し

(4)過大な要求

(5)過小な要求

(6)個の侵害

で分類されますが、パワハラに当たりうるすべてを網羅したものではなく、これら以外は問題ないということではありません。

 

2.パワハラについて企業が問われた法的な責任の例

現在も様々なパワハラに関する裁判がある中、上記(1)で取り上げた身体的・精神的な攻撃に該当するケースをご紹介致します。この裁判例は、パワハラの加害者のみならず、使用者も使用者責任を問われたケースでもありました。

 

(東京地裁平成22年7月27日判決 労働判例1016号35頁)

内容:

被告である上司は、

(1)部下A、Bに対して、扇風機の風を当て続けたり、

(2)部下Aの業務の方法について、事情を聞かずに叱責し、「今後、このようなことがあった場合には、どのような処分を受けても一切異議はございません」という始末書を提出させたり、Aの提案に対し、「お前はやる気がない。なんでここでこんなことを言うんだ。明日から来なくていい」と怒鳴るなどしました。

また、

(3)部下BとBの直属の上司を、「馬鹿野郎」「給料泥棒」「責任を取れ」などと叱責し、Bに「給料をもらっていながら仕事をしていませんでした」という文を書かせた上で、始末書を提出させたり、

(4)部下Cの背中を殴打し、面談中に膝を足の裏で蹴ったり、

(5)Cの妻にについて「よくこんな奴と結婚したな、もの好きもいるもんだな」と、Cに言ったりしました。

 

結果:

判決では抑うつ状態となり休職した部下Aについては、約100万円の損害賠償が、部下BとCについては、それぞれ40万円と10万円が慰謝料として認められました。

さらに、会社に対しては、被告上司のパワハラ行為は、会社の事業の執行に際して行われたものであるから、会社も使用者責任を負うとされました。

 

3.どのように予防・解決をすればよいか

まずは組織のトップが、職場のパワハラは職場からなくすべきであることを明確に示し、 そしてそれをルールとして運用していくため就業規則に関係規定を設け、労使協定を締結することが望ましいでしょう。

さらに社内アンケートなどで実態を把握するために従業員アンケートを実施すること、管理職研修や従業員研修といった教育を行うこと、組織のルールや相談窓口について周知することも求められます。

 

実際にパワハラが起こったあるいは起こりそうなときに従業員からの相談や解決の場を提供するため、企業内・外に相談窓口を設置し、職場の対応責任者を決めておいた方がよろしいのではないでしょうか。

なお、実際にパワハラが起こってしまった場合は、再発防止のための取組として行為者に対する再発防止研修等を行ってみてはいかがでしょうか。

 

実際に組織を運用していくうえで、パワハラが起こった後に諸々準備していると対応策が後手に回る可能性もございます。

さらには、放っておいたことにより、パワハラがエスカレートすることも考えられますので、お早目のご準備をお勧め致します。

(広報誌「こんぱす 2018年冬号」より抜粋)

 

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詳しくは下記のパンフレットをご覧ください。

 

関連ページ:

労務コンサルティング|人事・労務・社会保険サービス

ハラスメント対策研修

 

執筆者:竹田

(c)123RF

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