お役立ちコラム
副業導入時のポイント~就業規則の整備~
先日のコラムにて、会社側は副業の導入に当たり、下記の対応が必要になるとお伝えしました。
①副業、兼業を認める方向にて就業規則などの見直しを行う必要があります。
②労働者の労働時間管理が必要になります。労働者から事前に副業の内容を確認する必要があります。
③給与計算前には労働時間を通算し、適切な給与計算を行う必要があります。
通算して管理するにあたっては自社で取り入れやすい方法を採用し、自社と副業先での労働時間を確実に通算する必要があります。
④長時間労働になり労働者の健康が阻害されないよう、過重労働を防止することや健康確保を図ることが重要です。
今回はこの中のうち①就業規則の整備について解説します。

【就業規則のポイント】
大前提として企業側は労働者から副業を行いたいと申告があった際、それを理由なく禁止することはできません。そのため、現在、副業を禁止(一律許可制)にしている企業は、副業を認める方向で就業規則を見直すことが望ましいとしています。
就業規則の見直しのポイントは
・副業を原則認めることとすること。
・労務提供上の支障がある場合など、裁判例において例外的に副業を禁止または制限することができる場合を必要に応じて規定すること。
・副業の有無や内容を確認するための方法を、労働者からの届け出に基づくこととすること。
以下に厚生労働省が記載している就業規則の規定例を載せておりますが、あくまでも副業に関する規定の一例であり、各企業においてこの規定例通りの内容にしなければならないという性質のものではありません。事業場の実態にあったものとしなければならないことから、副業の導入の際には、労使間で十分検討するようにする必要があります。

■厚生労働省「モデル就業規則の改定案(副業・兼業部分)」より抜粋
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000188623.pdf
労働者が副業に関する相談、自己申告を行ったことにより不利益な取り扱いをすることはできません。
労働者の副業について、過去の裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由であることが示されていることから、第1項において、労働者が副業できることを明示しています。なお、どのような形で行う場合でも、過労等により業務に支障を来さないようにする観点から、就業時間が長時間にならないよう配慮することが望ましいです。
【どのような場合に副業を禁止、制限できるのか】
裁判例では、各企業が副業の制限を許される場合は、モデル就業規則内の第3項で規定したような場合であることが示されていると考えられます。各号に該当するか否かは各企業で判断いただくものですが、就業規則の規定を拡大解釈して、必要以上に副業を制限することのないよう、適切な運用を心がけていくことが肝要です。
『①労務提供上の支障がある場合』には、副業が原因で自社の業務が十分に行えない場合や、長時間労働が労働者の健康に影響を生じる恐れがある場合、労基法第36条に基づく時間外労働の上限規制等に基づく使用者の義務が果たせないケースが含まれると考えられます。
※裁判例⇒都タクシー事件(広島地決昭和59年12月18日)
自動車運転業務について、隔日勤務に就くタクシー運転手が非番日に会社に無断で輸出車の移送、船積み等をするアルバイトを行った事例において、「タクシー乗務の性質上、乗務前の休養が要請されること等の事情を考えると、本件アルバイトは就業規則により禁止された兼業に該当すると解するのが相当である」としたもの
『②企業秘密が漏洩する場合』については以下の裁判例を参考にできます。
※古河鉱業事件(東京高判昭和55年2月18日)
労働者は労働契約に基づき労務を提供するほか、信義則により使用者の業務上の秘密を守る義務を負うとしたうえで、会社が機密漏洩防止に特段の配慮を行っていた長期経営計画の基本方針である計画基本案を謄写版刷りで複製・配布した労働者に対する懲戒解雇を有効と判断した事案。
『④競業により、企業の利益を害する場合』については以下の裁判例を参考にできます。
※協立物産事件(東京地判平成 11 年5月 28 日)
労務者は、使用者との雇用契約上の信義則に基づいて、使用者の正当な利益を不当に侵害してはならないという付随的な義務を負い、原告の就業規則にある従業員の忠実義務もかかる義務を定めたものと解されるとしたうえで、外国会社から食品原材料等を輸入する代理店契約をしている会社の従業員について、在職中の競業会社設立は、労働契約上の競業避止義務に反するとされた事案。
■厚生労働省 「副業・兼業の促進に関するガイドラインわかりやすい解説」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000695150.pdf
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(執筆者:中西)
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