お役立ちコラム

『給与のデジタル払い』解禁で何が変わるのでしょうか?

現在、厚生労働省の労働政策審議会において「給与のデジタル払い」について議論されています。早ければ2021年内での制度化も視野に入れているという本施策ですが、企業と従業員はどう変化するのか。要点をまとめて解説します。

104283596_s.jpg

【給与デジタル払いとは】

給与デジタル払いとは、希望する従業員に対し、給与を銀行口座に振り込むのではなく、銀行口座を介さずに直接、資金移動業者が運営するアプリのアカウント等に入金することをいいます。

kyuuyo1.png

『資金移動業者』とは銀行以外に送金サービスを行う登録業者のことです。具体的にはPay PayLINE Pay、メルペイ、au PAYなどが挙げられます。

つまり、従来は「毎月銀行口座に振り込まれるもの」と考えられていた給与ですが、デジタル払い制度が導入されることにより、「給与のうち○○○円は▲▲▲ペイで」と受け取ることが可能になるのです。実際にソフトバンク社では20213月に支払った特別手当について、「PayPay」を使って社員に支給しています。

【制度導入の背景】

政府が「給与のデジタル払い」制度を積極的に導入していきたいとする背景にはどのような狙いがあるのでしょうか。

菅政権が掲げる政策の目玉の1つに、行政サービスや社会全体のデジタル化の推進が挙げられます。その中でもキャッシュレス決済の浸透は大きな柱の一つです。そこで、給与払いのデジタル化を解禁することで、社会のキャッシュレス化を加速させる狙いがあります。日常の買い物シーンでは、QRコードなどを使用したキャッシュレス決済が増えてはいるものの、諸外国と比較するとその導入率はまだまだ低く、現状を踏まえた顧客の利便性を考慮した面もあります。

また、外国人労働者を意識した施策でもあります。

デジタル払い導入で大きく変わるポイントは「銀行口座を開設しなくても、労働者に現金手渡し以外の手段で直接給与支払いができる」点にあります。

一般的に、外国籍の方は日本人よりも銀行口座を開設するのに手間や時間がかかることがあります。そのため、給与のデジタル払いの解禁は外国人労働者の受け入れ環境の整備にもつながるわけです。企業にとっても労働者確保に向けて一つの転機となるでしょう。

【メリットとデメリット】

デジタル払いが導入されたら従業員、企業側それぞれはどのようなメリットを享受できるのか、一方でデメリットは何なのか。下記にまとめました。

kyuuyo2.png

労働者にとって給与の受取手段が多様化することは大きなメリットを享受すると言えます。しかしその一方で、企業側の事務担当者にとっては、給与計算業務がより複雑化し、事務作業の負担が増えることも想定されます。

また、就業規則(賃金規定)についても、デジタル払いに即した内容での改定が必要になります。

厚生労働省は20214月に行われた「投資等ワーキング・グループ」において、給与デジタル払いの仕組みを「2021年度のできる限り早期に実現する方針」を明らかにしています。上記の通り、デジタル払いにはメリットもデメリットもありますので、給与デジタル払いが解禁された場合には、社員のニーズを踏まえて導入するか否か検討されることをお勧めします。

CSアカウンティングの人事・労務・社会保険サービスは、勤怠管理・給与計算・社会保険を一元化することにより、本来従事すべきコア業務へのシフトをお手伝いいたします。

また、アウトソーシングによるコスト削減のみならず、社会保険労務士などの経験豊富な専門家がお客様のよき相談相手となり、人事・労務に関する問題をスピーディーに解決します。

ご相談はこちら⇒https://business.form-mailer.jp/fms/c543034e81511

参考:厚生労働省 労働政策審議会 (労働条件分科会)

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-rousei_126969.html

参考:内閣府 第12回 投資等ワーキング・グループ 議事次第

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/toushi/20210405/agenda.html

(執筆者:中西)

関連コラム

雇用保険料率の引き上げについて
令和5年4月1日から労働者負担分・事業主負担分ともに雇用保険料率が上がります。労働者負担分が変更となっておりますので、給与計算時に料率の変更を忘れないようにご注意ください。令和5年4月1日から令和6年3月31日までの雇用保険料率は以下のとお…
令和5年1月からの国外居住親族に係る扶養控除改正点について
扶養控除、年末調整に関連する法改正が令和5年より施行されています。その中の大きな改正点として、国外居住親族に係る扶養控除の適用を受けるケースに関するものがあります。自身の会社に外国人従業員がいる場合には、母国の親族を扶養親族としているケース…
給与のデジタル払い解禁に備えて会社に必要な準備とは?
厚生労働省は令和4年11月28日、給与のデジタル払い(資金移動業者の口座への賃金支払い)を可能とする「労働基準法施行規則の一部を改正する省令」を公布しました。 給与の振込先が拡大されるのは25年ぶりで、企業は、労使協定を締結したうえで労働者…
【法改正】育児休業中の社会保険料免除制度が変わりました
10月から育児休業中の社会保険料免除制度が変わりました2022年10月から出生時育児休業(産後パパ育休)、育児休業の分割取得など、育児に関する制度が大きく変わりました。こちらに伴い、休業中の社会保険料の免除制度も変わったことはご存知でしょう…
最低賃金改定
令和4年10月より最低賃金が改定されます。本コラムでは最低賃金改正に関して、具体的にどの様に変わるのか?また、これまで弊社へご相談頂いたご質問のご紹介や活用できる助成金のご案内等について、解説して参りたいと思います。目次最低賃金額はいつから…

当サイトの情報はそのすべてにおいてその正確性を保証するものではありません。当サイトのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、賠償責任を負いません。具体的な会計・税務判断をされる場合には、必ず公認会計士、税理士または税務署その他の専門家にご確認の上、行ってください。