お役立ちコラム
『給与のデジタル払い』解禁で何が変わるのでしょうか?
現在、厚生労働省の労働政策審議会において「給与のデジタル払い」について議論されています。早ければ2021年内での制度化も視野に入れているという本施策ですが、企業と従業員はどう変化するのか。要点をまとめて解説します。

【給与デジタル払いとは】
給与デジタル払いとは、希望する従業員に対し、給与を銀行口座に振り込むのではなく、銀行口座を介さずに直接、資金移動業者が運営するアプリのアカウント等に入金することをいいます。

『資金移動業者』とは銀行以外に送金サービスを行う登録業者のことです。具体的にはPay PayやLINE Pay、メルペイ、au PAYなどが挙げられます。
つまり、従来は「毎月銀行口座に振り込まれるもの」と考えられていた給与ですが、デジタル払い制度が導入されることにより、「給与のうち○○○円は▲▲▲ペイで」と受け取ることが可能になるのです。実際にソフトバンク社では2021年3月に支払った特別手当について、「PayPay」を使って社員に支給しています。
【制度導入の背景】
政府が「給与のデジタル払い」制度を積極的に導入していきたいとする背景にはどのような狙いがあるのでしょうか。
菅政権が掲げる政策の目玉の1つに、行政サービスや社会全体のデジタル化の推進が挙げられます。その中でもキャッシュレス決済の浸透は大きな柱の一つです。そこで、給与払いのデジタル化を解禁することで、社会のキャッシュレス化を加速させる狙いがあります。日常の買い物シーンでは、QRコードなどを使用したキャッシュレス決済が増えてはいるものの、諸外国と比較するとその導入率はまだまだ低く、現状を踏まえた顧客の利便性を考慮した面もあります。
また、外国人労働者を意識した施策でもあります。
デジタル払い導入で大きく変わるポイントは「銀行口座を開設しなくても、労働者に現金手渡し以外の手段で直接給与支払いができる」点にあります。
一般的に、外国籍の方は日本人よりも銀行口座を開設するのに手間や時間がかかることがあります。そのため、給与のデジタル払いの解禁は外国人労働者の受け入れ環境の整備にもつながるわけです。企業にとっても労働者確保に向けて一つの転機となるでしょう。
【メリットとデメリット】
デジタル払いが導入されたら従業員、企業側それぞれはどのようなメリットを享受できるのか、一方でデメリットは何なのか。下記にまとめました。

労働者にとって給与の受取手段が多様化することは大きなメリットを享受すると言えます。しかしその一方で、企業側の事務担当者にとっては、給与計算業務がより複雑化し、事務作業の負担が増えることも想定されます。
また、就業規則(賃金規定)についても、デジタル払いに即した内容での改定が必要になります。
厚生労働省は2021年4月に行われた「投資等ワーキング・グループ」において、給与デジタル払いの仕組みを「2021年度のできる限り早期に実現する方針」を明らかにしています。上記の通り、デジタル払いにはメリットもデメリットもありますので、給与デジタル払いが解禁された場合には、社員のニーズを踏まえて導入するか否か検討されることをお勧めします。
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参考:厚生労働省 労働政策審議会 (労働条件分科会)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-rousei_126969.html
参考:内閣府 第12回 投資等ワーキング・グループ 議事次第
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/toushi/20210405/agenda.html
(執筆者:中西)
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