お役立ちコラム
CSA社労士雑記 ~長時間労働について考えてみよう(2)~

労働基準法で、
(1)1日8時間を超えて働いてはいけない
(2)週合計で40時間を超えて働いてはいけない
と定められ、違反に対する罰則まで設けられているというのに、
なぜ、多くの企業では夜遅くまで残業をしているのか、
今回は、その先のところについて、お話を進めていきたいと思います。
<36協定について>
一度は耳にしたことがあるのではないか、と思いますが、
はたしてどこまで理解されているのか。
新聞記事を読んでも、その仕組みまで詳しく書いていることは稀ですから、
よく理解できていないことも多々あるでしょう。
現に、ネット記事の中にも、
“36協定における限度時間と、特別条項の時間数を取り違えている”
と思われるものがあったりしますから。
さて、まずそのネーミングですが、
36協定は ”サブロクキョウテイ” と読みます。
3月6日に作られただとか、36番目に作られた協定だから、ではなく、
労働基準法第36条にその記載があるので、36協定といいます。
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36協定だけではなく、例えば、24協定と言われる協定など、
いろいろな協定書があります。
労働基準法第24条の定めによる協定書につきましては、お役立ちコラムの
”CSA社労士雑記 ~正しい賃金の話をしよう(1)(2)(3)~”
でお話をしていく予定です。
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この36協定がどんなものであるのか、ですが、
ざっくりと言えば、
“36協定が適正に会社に備わっていれば、残業しても法律違反に問われない”
特例的な方法、とでも言いましょうか。
+++++
もう少し詳しくご説明しますと、
36協定というものは、多くの労使協定のなかの一つです。
労使協定とは、
使用者(つまり会社)と、
過半数労働者で組織される労働組合(労働組合が無い場合は、過半数代表する者)
が取り交わす書面による協定書
のことです。
協定が締結されますと、
(1)法の規制は解除され、使用者は法違反による処罰を逃れることが出来る。
(罰則免除)
(2)法の規定に抵触する法律行為(例えば8時間以上働かせる等)も有効となる。
(法の強制力の解除)
という効力を発揮します。
日本の多くの企業はこの仕組みを利用して法律の効力を打ち消し、
残業をしているというわけですね。
しかし、
“うちの会社は36協定締結済みだから大丈夫!!”
といった希望的観測は少し危ない。
なぜなら、36協定が有効とされるには、
一定の要件をみたさなければならないからです。
<36協定の効力が生じるための要件について>
(1) 使用者と労働者の過半数を代表する者が締結すること。
つまり、過半数を代表していない労働者が締結した労使協定は
“無効”ということになります。
たとえば、
“上司の命令でよくわからないが印をついている”
といったケースは、比較的よく聞く話ですから注意が必要です。
労働者の過半数を代表する者の選出(労働者の過半数以上で組織される労働組合が無い場合)には、
きちんと民主的(投票とか挙手、労働者の話し合い等)に選ばれた過半数代表者であることが必要となります。
(2) 36協定は、労基署へ届出をしていないと無効
36協定は、労基署へ届出をおこなって初めて効力が生じるものです。
36協定の有効期間は最大で1年ですから、
年1回の更新が必要です。
たとえば
“人事担当者が退職してしまって、更新をすることに気付かなかった”
こんなことがあれば、
会社は違法に残業をしていることになってしまうので、
更新日の管理には、十分に注意しなければなりません。
(3) 過半数を代表する者は、監督、管理の地位にあるものでは“ない”こと
労働者の概念には、監督者、管理者は含まれますが、
過半数代表者になることはできません。
つまり、仮に過半数代表者を選挙するとして、
監督者・管理者が投票することはできますが、“過半数代表者になることはできない”
ということになります。
(4) 協定書は、事業場単位で締結が必要であること。
会社として、“協定をひとつだけ締結する”ということでは不足です。
つまり拠点(事業場)がいくつかあれば、それぞれの拠点ごとに締結が
必要であるということです。
本社で締結しているから、“支社でも法定時間外労働は可能”
とはなりませんから注意しましょう。
+++++
もう少し突っ込んでお話をすれば、
36協定は、“罰則免除”と“法の強制力の解除”の効果はありますが、
だからと言って、法定時間外に残業をさせることの根拠にはなりません。
労働基準法では、
“8時間を超えての労働、40時間を超えての労働を禁止している”
わけですからね。
その根拠として、就業規則に“残業をさせることがある旨”、を記載しておく必要がります。
つまり、36協定の締結と、就業規則への記載の両輪が揃って初めて、
”法定時間外に労働(残業)ができる”となります。
協定書の中身につきましては、
- 時間外または休日の労働をさせる必要のある具体的事由
- 業務の種類
- 労働者の数
- 1日および1日を超える一定の期間についての延長をすることが出来る時間、又は労働させることが出来る休日
- 有効期間の定め(労働協約による場合を除く)
等の取り決めが必要となりますが、
そのあたりは長くなりますし、これ以上堅いお話を続けても・・・・
代わりに、下記に東京労働局のリンク先を載せておきますので、ご参照ください。
(CSA社労士雑記~長時間労働について考えてみよう(3)~につづく)
関連ページ:
執筆者:立山
(c)123RF
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