お役立ちコラム

年末調整 ~中編~

 11月に入り、年末調整の時期がやってきました。平成29年の税制改正を受け、平成30年からは配偶者控除等申告書が新たに配布されます。

 本コラムでは年末調整について3回(前編・中編・後編)にわけて年末調整についてお伝えしていきます。中編の今回のテーマは「扶養控除等異動申告書」と「配偶者控除等申告書」についてです。

 

 前回のコラムで年末調整の計算のしくみについてお伝えし、その中で給与所得の金額から各種所得控除の金額を差し引いて課税給与所得金額を求めます、とお伝えしました。扶養控除等異動申告書と配偶者控除等申告書は受けることができる各種所得控除について申告するものです。以下でそれぞれの申告書の相違点や具体的な書き方をまとめていきます。

 

 

1.提出時期

 

 扶養控除等異動申告書は各月の給与計算での源泉徴収税額の計算に必要であるため、毎年最初の給与の支払の前日までに提出する必要があります。一方、配偶者控除等申告書は年末調整で受ける配偶者(特別)控除の金額を申告するものであるため、その年の最後に給与等の支払いを受ける日の前日までに提出する必要があります。

 

 

2.提出対象者

 

 扶養控除等異動申告書は給与所得を受ける居住者は全員提出しなければなりません。

※所得税法194条において以下の通り規定されています。

 国内において給与等の支払を受ける居住者は、その給与等の支払者(その支払者が二以上ある場合には、主たる給与等の支払者)から毎年最初に給与等の支払を受ける日の前日までに、次に掲げる事項を記載した申告書を、当該給与等の支払者を経由して、その給与等に係る所得税の源泉徴収に係る所得税の納税地の規定による納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

 一方、配偶者控除等申告書については年末調整において配偶者控除や配偶者特別控除を受けようとする給与所得者のみが提出すれば良いこととなっています。

 

 

3.申告できる所得控除

 

<扶養控除等異動申告書>

 

 扶養控除等異動申告書では、3-1.障害者控除、3-2.寡婦(寡夫)控除、3-3.勤労学生控除、3-4.扶養控除の4つを申告することができます。以下にそれぞれの内容を記載します。。

 

3-1. 障害者控除

 納税者自身、同一生計配偶者又は扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合には、一定の金額の所得控除を受けることができます。 なお、障害者控除は、扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族を有する場合においても適用されます。

 障害者控除の対象となるのは、次のいずれかに当てはまる人です。

(1) 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人

 この人は、特別障害者になります。

(2) 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定により、知的障害者と判定された人

 このうち重度の知的障害者と判定された人は、特別障害者になります。

(3) 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人

 このうち障害等級が1級と記載されている人は、特別障害者になります。

(4) 身体障害者福祉法の規定により交付を受けた身体障害者手帳に、身体上の障害がある人として記載されている人

 このうち障害の程度が1級又は2級と記載されている人は、特別障害者になります。

(5) 精神又は身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が(1)、(2)又は(4)に掲げる人に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人

 このうち特別障害者に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人は特別障害者になります。

(6) 戦傷病者特別援護法の規定により戦傷病者手帳の交付を受けている人

 このうち障害の程度が恩給法に定める特別項症から第3項症までの人は、特別障害者となります。

(7) 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定により厚生労働大臣の認定を受けている人

 この人は、特別障害者となります。

(8) その年の12月31日の現況で引き続き6ヶ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする(介護を受けなければ自ら排便等をすることができない程度の状態にあると認められる)人

この人は、特別障害者となります。

 

3-2.寡婦(寡夫)控除

 納税者自身が一般の寡婦であるときは、一定の金額の所得控除を受けることができます。

 その年の12月31日の現況における要件を以下にまとめております。

要件

寡婦
※女性のみ

寡夫
※男性のみ
特別の寡婦
 

配偶者と死別・離婚(その後婚姻していない)
若しくは配偶者が生死不明

必要 必要 必要
合計所得金額が500万円以下

どちらか一方で良い
※離婚+所得500万以下の人は対象外

必要 必要

生計を一にする子がいる
※総所得金額等が38万円以下で他の人の扶養親族等になっていない者に限る

必要 必要

 

3-3.勤労学生控除

 納税者自身が勤労学生であるときは、一定の金額の所得控除を受けることができます。

 勤労学生とは、その年の12月31日の現況で、次の三つの要件の全てに当てはまる人です。

(1) 給与所得などの勤労による所得があること

(2) 合計所得金額が65万円以下で、しかも(1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること

 例えば、給与所得だけの人の場合は、給与の収入金額が130万円以下であれば給与所得控除65万円を差し引くと所得金額が65万円以下となります。

(3) 特定の学校の学生、生徒であること

3-4.扶養控除

 納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられます。これを扶養控除といいます。扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人を控除対象扶養親族といいます。なお、控除額は扶養親族の年齢や同居の有無等により異なります。

 扶養親族とは、その年の12月31日(納税者が年の中途で死亡し又は出国する場合は、その死亡又は出国の時)の現況で、次の四つの要件のすべてに当てはまる人です。

(注)出国とは、納税管理人の届出をしないで国内に住所及び居所を有しないこととなることをいいます。

(1) 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。

(2) 納税者と生計を一にしていること。

(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。

 (給与のみの場合は給与収入が103万円以下)

(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。

 

 申告時に必要な添付書類や特別な記載事項を以下図表にまとめましたのでご参照下さい。

年の途中で就職した人で前職収入がある人 源泉徴収票の添付
扶養親族が別居している場合(国内) 送金額の記載
扶養親族が非居住者の場合 親族関係書類及び送金関係書類の添付
※送金関係書類は扶養親族ごとに必要
障害者・特別障害者 障害の状態又は甲府を受けている手帳の種類、障害の程度の記載
寡婦・寡婦・特別の寡婦 理由及び所得の見積額(寡婦除く)の場合
勤労学生 学校名・入学年月日・所得見積額の記載
※中・高・高専・特別支援・大学「以外」の学生で控除を受ける場合は別途添付書類必要

 

<配偶者控除等申告書>

 

 税制改正により、配偶者控除に本人の所得要件が加わりました。一方、配偶者特別控除は本人所得により段階的に減額されるのは配偶者控除と同じですが、配偶者の所得要件が拡大されました。改正に伴い、今年から本人と配偶者両方の所得見積額を計算し、控除額を申告する必要があります。

 従来配偶者控除を申告されていて配偶者に所得がない方は所得の見積を計算したことがなく、記入に戸惑う方も多いかと思いますので、本コラムでは今回は国税庁のフォーマットをベースに記載方法、記載の際の注意事項についてご説明致します。

 記載の順番は(1)真ん中の「合計所得金額の見積額の計算表」で本人及び配偶者の所得見積額を計算、(2)求めた合計所得金額を元に真ん中上側で区分Ⅰ及び区分Ⅱを算出、(3)一番下の「控除額の計算」欄に(2)で求めた区分を当てはめ、控除金額を算出、の順になります。以下ではそれぞれの欄の記載にあたり注意事項を記載致します。

 (1)合計所得金額の見積額の計算では、申告年の本人と配偶者の所得見積額を計算します。所得金額とは収入金額から必要経費等を差し引いたものです。給与明細に記載されている支給金額が収入金額、社会保険料や税金等の控除額を必要経費、手取りの金額を所得金額とイメージしていただければ分かりやすいかと思います。

 ご覧いただいている方は給与所得のみの方が多いかと思いますので、給与所得の求め方についてご説明致します。

給与所得の収入金額は、慶弔見舞金や通勤手当(月額15万円まで)などの非課税の収入を除いた金額になります。収入金額には賞与や残業代なども含みます。提出時点では確定金額は分かりませんので、昨年の源泉徴収票や給与明細を参考にして見込み額を記載します。

 給与所得の必要経費等の欄には斜線が引いてありますが、これは給与所得は他の所得と違い、実際の経費の金額ではなく一定の算式を元に給与所得控除額を算出するためです。例えば自営業を行っている場合、経費を明確に区分して計上することが可能ですが、給与所得についてはどこまでが給与を得るのに必要な経費かの線引きが難しいため、このような措置がとられています。給与所得控除額は収入金額に応じて異なるため、裏面に記載されている計算表を用いて控除額を算出します。

 見込み収入金額から算出した控除額を差し引いた金額が給与所得の見積金額になります。

 本人及び配偶者の見積所得金額を求めた後は、区分Ⅰ及び区分Ⅱのどこに当てはまるかを判定します。

 区分Ⅰ(本人)については、900万円以下、900万円超950万円以下、950万円超1000万円以下のいずれに当てはまるかを判定します。税制改正により本人の所得が多い場合には配偶者控除の金額が段階的に減額され(900万円超で2/3、950万円超で1/3)、1,000万円を超える場合には配偶者控除を受けられなくなっています。

 区分Ⅱ(配偶者)については、配偶者の年齢及び見積所得金額に応じて①~④のいずれにあたるかを判定します。配偶者の見積所得金額123万円を超える場合には配偶者控除等の適用はありません。配偶者の区分要素に年齢が含まれているのは、配偶者が老人控除対象配偶者(その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人)であるかどうかを判断するためです。

 配偶者が老人控除対象配偶者である場合には、配偶者の区分判定真ん中(生年月日の下)の老人控除対象配偶者に○をつけた上で、区分Ⅱの判定で(1)と記載します。老人控除対象と判定された場合には、一般配偶者控除の控除額が38万円であるのに対し、48万円の控除が受けられます。なお、老人扶養は合計所得金額が38万円以下であることが要件となっておりますので、合計所得38万円超から適用される配偶者特別控除には老人控除の適用がありません。

 本人所得及び配偶者所得の区分を判定した後は、一番下の表を使用して控除金額の算出を行います。配偶者の見積所得金額が38万円以下の場合は配偶者控除、38万円超123万円以下の場合は配偶者特別控除が適用され、配偶者控除と配偶者特別控除が両方適用されることはありません。

 

 今回のコラムでは扶養控除等異動申告書及び配偶者控除等申告書について説明致しました。次回の後編では残る保険料控除申告書及び住宅借入金等特別控除申告書について記載していきます。

 

参照:国税庁ホームページ

 

関連ページ:

給与計算アウトソーシング

年末調整~前編~(お役立ちコラム),

年末調整~後編~(お役立ちコラム)

 

執筆者:中谷

(c)123RF

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