お役立ちコラム

高齢者、学生、パートなどさまざまな雇用保険の加入手続きについて

人事の皆様は雇用保険加入手続きを日頃より行われている事かと思いますが、雇用保険の加入基準を正しく理解されていますでしょうか?

学生アルバイトの雇用、65歳以上の高齢者を雇用、又は外国人を雇用等、昨今の人出不足と相まって多様な人材を雇用する企業様が増えてきているのでは無いでしょうか?

雇用保険の加入条件を正しく理解し、適切な事務手続きを行う為に、雇用保険の加入基準についてQ&A形式でおさらいしてみましょう。

 

目次

1.雇用保険の加入条件は?

2.学生は雇用保険の対象外?

3.雇用保険対象外の労働者は労災保険も対象外?

4.労働保険の「暫定任意適用事業」とは?

5.雇用保険の年齢制限は?

6.令和2年4月度より変更となる65歳以上の雇用保険料徴収について

7.外国人は雇用保険に加入できる?

8.研修生・技能実習生は雇用保険に加入できる?

9.役員は雇用保険に加入できるか?

10.雇用保険の加入状況の確認方法

まとめ

 

 

1.雇用保険の加入条件は?

 

 雇用保険は全ての労働者が加入すると聞きましたが、加入条件は有るのでしょうか?

 

 雇用保険は次の対象者以外は原則として雇用される労働者は被保険者となります。

(1)1週間の所定労働時間が20時間未満の者

(2)同一の事業主に31日以上雇用されることが見込まれない者

(3)季節的に雇用される者であって以下のイまたはロに該当する者

  • (イ)4ヶ月以内の期間を定めて雇用される者
  • (ロ)1週間の所定労働時間が30時間未満の者

(4)昼間学生(詳細は次のQを参照)

(5)船員であって、特定漁船以外の漁船に乗り組むために雇用される者

 (1年を通じて船員として雇用される場合を除く)

(6)国、都道府県、市区町村等の事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が雇用保険の休職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者

 

また、以下の方は加入するためには一定の要件があるので注意が必要です。

  • 法人の役職員等
  • 同居の親族
  • 生命保険社員の外務員
  • 在日外国人
  • 2以上の事業主に雇用される者等

 

 

2.学生は雇用保険の対象外?

 

 学生は雇用保険の被保険者とはならないと聞きましたが本当ですか?


 学生のすべてではなく、昼間学生について適用除外とされます。

昼間学生とは、学校教育法第1条にいう学校の学生のことですが、

  • 通信教育を受けている者
  • 大学の夜間学部の課程の者
  • 高等学校の夜間又は定時制の過程の者
  • 昼間学生であっても、卒業前に就職し、卒業後も引き続きその事業場で働く予定であって、卒業見込み証明書を有する者
  • 休学中の者

等については、雇用保険の適用除外とならず雇用保険の被保険者となります。

 

 

3.雇用保険対象外の労働者は労災保険も対象外?

 

 雇用保険適用対象外の労働者は労災保険も適用対象外になるのでしょうか?


 労災保険は短時間労働者(パート、アルバイト等)を含む全ての労働者が対象となります。

労働者とは、職業の種類にかかわらず、事業に使用される者で、労働の対価としての賃金が支払われる者のことをいいます。

法人の役員、同居の親族等には、労災保険・雇用保険の対象とならない方がいます。

加入するかどうかは個別の実態に応じて判断する事になる為、判断に迷う際には、事業所管轄の労働基準監督署や公共職業安定所へご相談下さい。

 

 

4.労働保険の「暫定任意適用事業」とは?

 

 労働保険の「暫定任意適用事業」とは何でしょうか?労働者が1人でもいれば当然に強制適用事業となるのでは無いでしょうか?

 

 労働保険は、「事業」毎に適用されます。

労働保険適用事業所は厚生労働省のサイトで検索する事が出来ます。

労働保険適用事業場検索

この「事業」とは、独立した組織と見做されれば、本社、支店、工場等とそれぞれが事業として扱われます。

それぞれの事業は、原則として労働者を1人でも使用していれば法律上、当然に、労働保険に加入することとなりますが、このような事業を当然適用事業といいます。

一方、暫定任意適用事業とは、農林水産の事業のうち、労働保険に加入するかどうかは事業主の意思やその事業に使用されている労働者の過半数の意思にまかされている事業をいいます。保険関係は、事業主が任意加入の申請をし、その承諾を得てはじめて成立します。

 

イ)労災保険の暫定任意適用事業

  • 労働者数5人未満の個人経営の農業であって、特定の危険又は有害な作業を主として行う事業以外のもの
  • 労働者を常時は使用することなく、かつ、年間使用延労働者数が300人未満の個人経営の林業
  • 労働者数5人未満の個人経営の畜産、養蚕又は水産(総トン数5トン未満の漁船による事業等)の事業

 

ロ)雇用保険の暫定任意適用事業

下記に掲げる農林水産の事業(国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業および法人である事業主の事業を除きます)であって、常時5人未満の労働者を雇用する個人経営の事業です。

  1. 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業(いわゆる農業、林業と称せられるすべての事業)
  2. 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他畜産、養蚕又は水産の事業

労働保険にも任意適用事業場がある事はあまり知られていないかもしれませんが、関係する業種を営む個人事業主は注意をしておく必要があります。

 

 

5.雇用保険の年齢制限は?

 

 雇用保険へ加入する際に年齢制限はあるのでしょうか?


 年齢による制限は有りません。

これまで65歳以上の労働者は、雇用保険に新規加入することができませんでしたが、平成29年1月1日以降、65歳以上の労働者についても、「高年齢被保険者」として雇用保険の適用の対象となりました。

 

● 各種給付金の支給について

 

(1)高年齢求職者給付金について

高年齢被保険者として離職した場合、受給要件を満たすごとに、高年齢求職者給付金が支給(年金と併給可)されます。

 

(2)育児休業給付金、介護休業給付金について

平成29年1月1日以降に高年齢被保険者として、育児休業や介護休業を新たに開始する場合も、要件を満たせば育児休業給付金、介護休業給付金の支給対象となります。

 

(3)教育訓練給付金について

平成29年1月1日以降に厚生労働大臣が指定する教育訓練を開始する場合は、教育訓練を開始した日において高年齢被保険者である方または高年齢被保険者(平成28年12月末までに離職した方は、高年齢継続被保険者)として離職日の翌日から教育訓練の開始日までの期間が1年以内の方も、要件を満たせば教育訓練給付金の支給対象となります。

 

※高年齢継続被保険者とは

平成28年12月に廃止された制度で、雇用保険の被保険者のうち、同一の事業主に65歳以前から雇用されている者(短期雇用特例被保険者および日雇労働被保険者を除く)を指します。

(表1:新旧対照表)

  改正前 改正後
新規雇用 65歳に達した日以後に新たに雇用される労働者については、雇用保険の被保険者対象外 65歳に達した日以後に新たに雇用される1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上の雇用見込みがある労働者を雇用保険の被保険者(高年齢被保険者)とする
雇用保険料 保健年度の初日(4/1)において64歳以上の労働者は雇用保険料を免除 保健年度の初日(4/1)において64歳以上の労働者は、平成31年度までは免除となるが、平成32年度よりすべての労働者について雇用保険料を徴収
高年齢求職者給付金 高年齢継続被保険者が失業した場合、1回に限り高年齢求職者給付金を支給 高年齢被保険者が失業した場合、その都度高年齢求職者給付金を支給
育児休業給付金
介護休業給付金
高年齢継続被保険者は対象外 要件を満たせば育児休業給付金、介護休業給付金の支給対象
教育訓練給付金 高年齢継続被保険者は対象外 要件を満たせば教育訓練給付金の支給対象

 

 

6.令和2年4月度より変更となる65歳以上の雇用保険料徴収について

 

 令和2年4月度より変更となる65歳以上の雇用保険料徴収について教えて下さい


 平成29年1月1日から雇用保険法の改正により、被保険者の適用範囲が拡大され、65歳以上の方で新たに雇い入れる場合や既に入社していたものの年齢要件を満たせず未加入だった方も被保険者(高年齢被保険者)となりました。

これまで、年度初日(4/1)に64歳以上の雇用保険被保険者は免除対象高年齢労働者として労使双方の雇用保険料が免除されていましたが、今後は廃止され、公平に保険料を負担することになります。

ただ、急な廃止は会社への負担も大きくなるため、3年間の経過措置が設けられており、令和元年度までは、雇用保険料の徴収免除制度が継続となっております。間もなく始まる高齢社員からの雇用保険料徴収に備えて、予め対象社員の方へ通知される事をお勧め致します。

 

 

7.外国人は雇用保険に加入できる?

 

 今回、新たに外国人の方を雇用しました。雇用保険は加入できるのでしょうか。

 

 原則、日本国に在住し就労する外国人は、雇用保険の加入条件を満たせば、雇用保険の被保険者となります。

例外として、外国公務員および外国の失業補償制度の適用を受けていることが立証された者、ワーキングホリデー制度による入国者及び留学生(昼間学生)は被保険者となりません。

 

 

8.研修生・技能実習生は雇用保険に加入できる?

 

 外国籍の研修生・技能実習生を受け入れることになったのですが、どちらも雇用保険の加入対象となるのでしょうか。

 

 外国人技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とした制度です。主に、技能実習生と研修生に分かれます。

 

● 技能実習生(在留資格:技能実習)

実践的な技能習得等を目的として事業主と雇用関係を結ぶため、雇用保険被保険者となります。

 

● 研修生(在留資格:研修)

あくまでも「研修」を目的としているため雇用関係は発生せず、雇用保険被保険者にはなりません。

 

 

9.役員は雇用保険に加入できるか?

 

 今回、新たに兼務役員となった方がおります。雇用保険はそのまま継続加入ができるのでしょうか。

 

 雇用保険は原則として雇用される労働者は被保険者となりますが、法人の役員として登記されている以下の人および取締役は被保険者にはなれません。

  • 代表取締役
  • 専務取締役、常務取締役
  • 監査役

 

ただし、役員であり同時に部長、支店長、工場長等従業員としての身分のある兼務役員の場合、一定の要件を満たせば被保険者になることができます。判断基準として以下の内容があげられます。

 

(1)月々の役員報酬と賃金との割合

役員報酬よりも賃金の占める割合が多ければ労働者的性格が強いとされます。

 

(2)就労実態

職務遂行の実態が経営者による指揮命令の範囲内で行なわれていれば労働者的性格が強いとされます。

 

(3)労働基準法の適用状況

労働者名簿、賃金台帳、出勤簿(タイムカード)等が調整されており、就業規則が適用されていれば労働者的性格が強いとされます。

実際には、管轄のハローワークに「兼務役員にかかわる雇用保険被保険者資格要件証明書」の届出を行い雇用保険の資格を認めてもらう必要があります。また届出には定款、就業規則、賃金台帳等添付書類が必要となります。

 

 

10.雇用保険の加入状況の確認方法

 

 雇用保険被保険者資格取得届の手続き漏れがないか確認する方法はありますか?

 

 事業所を管轄する公共職業安定所にて、請求のあった事業所に適用されている被保険者の氏名や資格取得年月日が記載された台帳「事業所別被保険者台帳」を提供してもらう事で確認する事が出来ます。

具体的な請求方法は、事業所を管轄する公共職業安定所に問い合わせをしてみましょう。

また、社会保険労務士等を代理人として依頼することも可能です。

 

 

まとめ

 

現在は多様な人材を雇用する時代、社会保険手続きにも様々な知識が必要となります。法改正に伴う変更にも対応しなければならず、労務手続きに携わる担当の方は、常に最新で正しい知識で多くの労務管理を要求されることとなります。

弊社のコラム記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

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執筆者:緒方

写真:123RF

 

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