お役立ちコラム

絶対に失敗したくない!経理アウトソーシングで気をつけるべきこととは?

 

経理アウトソーシングを失敗しないための秘訣とは?

 

今回のコラムでは、経理アウトソーシングで失敗しないために取り組むべきポイントを紹介しています。経理アウトソーシングは委託すれば終わりというわけではありません。アウトソーサーに任せきりも良くありません。失敗している企業の多くはそれらの傾向が強く出ているのです。記事内では、失敗した企業に共通する問題点も挙げているので、どうすれば失敗しないのかがよりはっきりとわかります。ぜひ参考にしてください。

 

経理アウトソーシングでよくある失敗5パターン

 

経理業務においてアウトソーシングする会社は増えてきています。理由としては、人員削減に伴って、またはコスト削減のためなど、様々な目的に合わせているといえます。しかし、経理をアウトソーシングしたからといって必ずしも成功するわけではなく、中には失敗事例もあります。

今回は、経理業務でアウトソーシングを利用したことのある100社を対象に行った「経理アウトソーシング利用で不満に感じたことは何ですか?具体的なエピソードも教えてください。」というアンケート結果の上位回答、

  • 第1位:コストカットにつながらなかった
  • 第2位:自社に合わない経理処理で再確認で二度手間になった
  • 第3位:求めるほどの専門性がなかった
  • 第4位:例外的な対応をしてもらえず柔軟性に欠けた
  • 第5位:アウトソース先に頼りすぎて自社の人材育成に困った

をそれぞれ紹介し、共通する問題点および回避策を説明いたします。

(図1:アンケート結果)

 

 

コストカットにつながらなかった(第1位)

一番多かった「コストカットにつながらなかった」という回答では、思っていたよりも割高になってしまったという意見や、コスト削減になると思っていたものの、外注のほうが結局高くついたというような意見が目立ちました。コスト削減の方法として期待して導入したけど、現実はうまくいかなかったと感じる利用者が多いようです。何故このような期待との齟齬が生まれてしまうのでしょうか。

経理のアウトソーシングは会社の業務の一部である「経理」の部分を外部(=アウトソーサー)に委託するということになります。経理業務の中にはその会社独自の方法が含まれていることもあるため、アウトソーサーからすれば異なるルールだったというようなことも起こり得ます。アウトソーサーとの認識の差を理解したうえで、アウトソーシングする際に自社の経理業務の内容を伝えることが出来なければ、アウトソーサーも適切な提案ができず、オーバースペックな経理業務を行ってしまい、結果的にコスト高になってしまいます。

このようなことにならないために、アウトソーシングを行う前にアウトソーサーと現場の社員とのコミュニケーションの機会を設けることが必要になります。その上でアウトソーサーが適切な経理業務を柔軟に行ってくれるか、ということがアウトソーシングをするうえで重要になります。

 

自社に合わない経理処理の再確認で二度手間になった(第2位)

二番目に多かった理由としては、「自社に合わない経理処理で、再確認で二度手間になった」というのが理由でした。意見の中でも、「勘定項目が全く違う仕訳があったりしました。他社の経験からでなく自社の事業内容に沿った経理をして欲しかったです」や「アウトソーシングによって業務が軽減されることはメリットですが、これまでの処理と異なる部分があり、詳細な確認が必要となるケースが発生しました」というように、会社の戦略や慣例に合わない経理業務をされてしまい、それを自社に合わせるためもうひと手間掛かってしまったという意見が目立ちました。このような、齟齬がうまれてしまう理由としては、アウトソーシングの担当は会社の外部の人間であり会社の戦略や慣例までは理解していないということが挙げられます。

この対策としては、アウトソーシングを行う前に経理部の業務フローをしっかりと整理し、アウトソーサーに共有を怠らないことが重要になります。社内と社外の連携をしっかりと行うことで、無駄にかかってしまう手間を省きましょう。

 

 

求めるほどの専門性がなかった(第3位)

専門性が感じられないと回答した人の意見として、「アウトソーシングをすることで、今までとは違った観点で出来ると思ったが全く変わらず経費の無駄になってしまった」や「もしかしたら業種の問題かもしれませんが、あまり自分達でやるのと変わらなかった」のように、専門性を期待したが実際は違っていたという意見がありました。

この場合の対策としては、自社とアウトソーシング先の役割と、責任分担を明確にしましょう。自社独自の専門業務がある場合、そこだけは自社で行い、その他をアウトソーシングするという使い方も考えられます。その企業に特有の業務形態を活かせるような連携を心掛けましょう。

 

 

例外的な対応をしてもらえず柔軟性に欠けた(第4位)

このような意見には「細かな契約を結んだが故に、例外に対応してもらえず困った」や、「契約を重視する姿勢で、契約に書かれていないことは一切しないというサービス体制の不備があり、柔軟な対応をしてもらうためには別途費用がかかるので自社で行った方が良いと思った」というように、契約を細かに結んでしまったばかりに、その他の業務を行ってもらえず即座に対応してもらえないことがあるようです。

こういった場合は、契約を結ぶ前にアウトソーシング先の業務内容と自社の状況を照らし合わせ、柔軟な提案をしてくれるアウトソーシング先を選ぶことが大切です。ただ経理をアウトソーシングするだけと簡単に考えず、企業の業務に沿った適切なスペックの契約内容を心掛けましょう。

 

 

アウトソース先に頼りすぎて自社の人材育成に困った(第5位)

自社で人材育成ができなくなったという回答の意見としては「ずっと外部に委託していた為、人材の育成がうまく行えなくなりました」や、「経理アウトソーシングを利用して便利過ぎたので頼りきってしまいました」のように、アウトソーサーに頼り切ってしまったが故に、自社に専門知識を持つ人間がいなくなることもあるようです。

アウトソーシングをするにあたっても、自社内との連携が大切になります。自社の経理状況を把握したうえで自社内の連携を行い、適切にアウトソーサーに委託することが望ましいです。社内には会社のお金を把握した人間を残し、その上で会社の数字を理解してもらい、将来的な課題を一緒に克服してくれるようなアウトソーサーを選びましょう。

 

 

経理アウトソーシングで失敗した企業に共通する3つの問題点

近年、経理アウトソーシングで失敗している企業が多いと話題です。そして、失敗を経験する企業にはいくつか共通点があることもわかっています。

以下の3つは、経理アウトソーシングに失敗した企業に共通している問題点です。

 

1.企業の経営方針、理念をアウトソーサーにしっかり伝えていなかった

アウトソーサーに企業の経営方針や理念について理解を得られていないと、経理アウトソーシングは失敗しやすいです。そもそも、経理業務全般に関することですが、企業全体のお金の使い方は経営方針や理念によって変わります。そのためアウトソーサーに経理業務を委託する場合は、企業の経営方針や理念、その先の未来像までしっかり理解をしてもらい、適切に業務を遂行してもらう必要があるのです。

また、アウトソーサーとの提携にともないコスト削減を狙うのでれば、会社の現状を把握し、よりよい経営のための課題を提示してくれるアウトソーサーを選ぶ必要があります。

 

2.自社内の経理担当者からの理解を得ないままアウトソーシングを進めてしまった

もともと自社内に経理の担当者がいる場合は、経理アウトソーシングを始める前にその旨を経理担当者に伝えておく必要があるでしょう。なぜなら、今まで経理業務を行なっていた人にとっては専門業務を外されることになるため、不安を覚えるからです。人によっては「リストラ」を考える人もいるかもしれません。

また、今までの業務フローなどをこれから担当するアウトソーサーに教えるのは自社内の経理担当です。その人たちのモチベーションの維持を保ち、的確に引継ぎをさせるためにも自社内の経理担当者の理解を得ておくことは必要です。

 

3.アウトソーサーとのコミュニケーションが足りなかった

アウトソーサーとのコミュニケーションがうまく取れていないと、経理業務にも食い違いや不一致が起こってしまいます。コミュニケーションとは、単なるおしゃべりではなく、情報の共有や業務フローやプロセスの確認なども含まれ、それらを互いに確認し合わないことには、経理アウトソーシングのメリットを充分に得ることが難しいです。

アウトソーサーを選考し、委託して終わりではなく、その後のフォローもしっかり行う必要があります。

 

以上の3つが経理アウトソーシングに失敗した企業に共通する反省点です。

このことより、経理という会社の経営を左右する要の部分は、ただ任せればいいというわけではないことがわかります。

 

 

経理アウトソーシングをする上で失敗しないためには?

経理アウトソーシングで失敗をしないためのポイントは5つあります。

 

1. 経理アウトソーシングを行う目的を明確にし、得られる未来を確立させる

事業展開を行うときと同様に、経理アウトソーシングを実施する場合は、

  • アウトソーシングを行うことによって得たいメリット
  • どのようなアウトソーサーが必要なのか
  • アウトソーサーとの連携で自社が行なうべきこと

をしっかりと明確にしておくようにします。

これらを決めて自社内共有ができていないと、アウトソーシングを行っても経営の軸がぶれてしまい、大したメリットを得ることができません。せめて上述した3つは明確にしておきましょう。

 

2.自社の経理担当者に対するフォローや意思伝達をしっかりと行う

上述したように、自社の経理担当者にとって経理アウトソーシングは専門業務を奪われることと同じです。経理担当者のモチベーションや今後への不安をしっかり汲んだうえで、納得してもらう必要があります。話の持っていきかたとしておすすめなのは「経理業務以上に君には核となる業務についてもらいたい」と、期待を込めるようにすることです。

決して、経理担当者の今までを傷つけるような発言をしてはいけません。

 

3.業務フローやプロセスのマニュアル化、引継ぎできる環境の徹底

経理業務は、一見どの会社でも同じことをやるように思えますが、会社によって独自のルールが存在します。どこも同じだろうと思っていると、経理アウトソーシングは失敗してしまうでしょう。経理担当者と協力し、アウトソーサーが実施できるような細かいマニュアルを作成しておきましょう。

 

4.アウトソーサーとコミュニケーションを密に行える環境を作る

経理業務をアウトソーシングしたあと、すべての経理業務を任せきりにした結果、余計に費用がかかってしまったというケースも多いです。アウトソーサーとは常に情報を共有し、困ったときに相談できる体制を作っておきましょう。

 

5.アウトソーサー選考は温情で行わない、厳選する

会社に必要なアウトソーサーの理想像を明確化しておくことで、コスト以上のパフォーマンスを得られる結果につながるかもしれません。そのためには社内のコネなどは使わず、経理担当者だけで、受託会社を選考するべきです。会社によっては、経理担当以外は誰も口出しができないようになっているところもあります。

経理アウトソーシングも無料ではありません、選考の段階で精査してよりよいアウトソーサーを選べるようにしましょう。

 

 

経理アウトソーシングはポイントさえつかめば失敗しない

上述したように、失敗する多くの会社にみられる問題点には共通している部分があります。逆をいえば、その共通点を改善することで失敗はしないということです。経理アウトソーシングで得られるメリットはコスト削減だけではありません、会社の核となる事業の展開スピードや質の向上、ベクトルの掛け具合も変わってきます。

経理アウトソーシングのポイントをしっかり押さえ、よい成果を出せるようにしましょう。

 

 

執筆者:菅谷

写真:123RF

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