お役立ちコラム

郵便切手類・印紙・物品切手等の消費税の取扱

 

1.はじめに

 
消費税の取引分類は様々ありますが、その中でも郵便切手や印紙、物品切手(いわゆる商品券やプリペイドカード等)はあらゆる会社で取り扱いがあるうえ、同一のものであっても流通の段階等で課非判断に影響があり、複雑な論点となっています。
そこで、本コラムではこれらの消費税を種類別にまとめています。
 
 

2.郵便切手類と印紙

 

(1) 郵便切手類・印紙とは

 
  • 郵便切手類とは、郵便切手、郵便葉書、郵便書簡を指します。(※1) 
  • 印紙とは、印紙をもつてする歳入金納付に関する法律に規定する収入印紙、雇用保険印紙、健康保険印紙、自動車重量税印紙、特許印紙を指します。 (※2)
(※1)消費税法基本通達6-4-2
(※2)消費税法別表第一第4号イ

 

(2) 郵便切手類・印紙の購入時の消費税

 
郵便切手類と印紙については、購入場所によって課非判断が異なります。
 

(ア) 非課税となる購入先

  • 日本郵便株式会社
  • 印紙売りさばき所
  • その他法令で指定された販売所等(※3)
 

(イ) 課税となる購入先

  • 非課税となる購入先以外から購入した場合は、全て課税となります。例えば、金券ショップで印紙を購入した場合は消費税が課税されます。
 
(※3)印紙をもつてする歳入金納付に関する法律第三条、郵便切手類販売所等に関する法律
 

(3) 郵便切手類・印紙の使用時の消費税

 
郵便切手類は通常郵送の対価として使用するため、その使用時点で消費税を認識します。印紙は印紙税の納付として使用するため、消費税の対象外となります。
 
 

(4) 郵便切手類の消費税課税のタイミング

 
例えば、3月1日に郵便切手(110円)を購入し、その後4月1日にその郵便切手を使用して郵送サービスを受けた(100円+消費税10円)場合は以下のような経理処理となります。
 

(ア)原則

3月1日 貯蔵品 110円 現金 110円
4月1日 郵送料 100円 貯蔵品 110円
仮払い消費税 10円
 

(イ)自分で使うと分かっているものについては、継続適用を前提に以下の処理も認められています(※4)

3月1日 貯蔵品 100円 現金 110円
仮払い消費税 10円
4月1日 郵送料 100円 貯蔵品 100円
 
(※4)消費税法基本通達11-3-7
 

3.物品切手等

 

(1) 物品切手等とは

 
物品切手等については、「請求権を表彰する証書」(※5) と表現されており、これと引換えに資産を購入したり、役務提供を受けたりすることが出来るものが該当します。
具体的には以下のものが列挙されています 。(※6)
  • 商品券、ギフト券、旅行券、テレホンカード、プリペイドカード
 

(2) 物品切手等の発行時の消費税

 
事業者が物品切手等を発行し、交付した場合において、その交付に係る相手先から収受する金品は資産の譲渡には該当せず、消費税の対象外となります 。(※7)
 

(3) 物品切手等の発行者以外からの譲渡時の消費税

 
発行者ではない取扱店等が、別の取扱店や消費者に物品切手等を譲渡する場合は、消費税は非課税となっています 。(※8)
これは、「物品切手等」と「物品切手等を使用して購入する商品やサービス」は同一のものであるにもかかわらず、物品切手等の譲渡の段階で課税してしまうと、同一の課税主体に対して、二重課税が生じるという問題が起きるからです。
 

(4) 物品切手等の使用時の消費税

 
物品切手等は実際に商品の購入又はサービスの提供を受けた時に消費税を認識します。この「商品」又は「サービス」については、物品切手の本来の交換目的は関係ありません。
例えば、3月1日にビール券(110円)を購入し、4月1日に社員研修の外部講師への報酬謝礼(100円+消費税10円)としてビール券を渡した場合は以下のような経理処理となります。
 
3月1日 貯蔵品 110円 現金 110円
4月1日 報奨金 100円 貯蔵品 110円
仮払い消費税 10円
 

(5) 物品切手等の消費税課税のタイミング

 
郵便切手類と同様に、自分で使うと分かっているものについては継続適用を前提に購入した日の属する課税期間の課税仕入とすることが認められています 。(※9)
 

(6) 使用済みの物品切手等の消費税

 
消費者が物品切手等を使用して販売店から資産を購入したり役務提供を受けたりした場合、販売店の手元には使用済みの物品切手等が残っています。
使用済み物品切手等は、販売店が発行者に譲渡して現金等と交換することになり、この交換は消費税の対象外取引となります。但し、その交換時に取扱手数料がかかる場合は、その取扱手数料の額が消費税の課税対象となります。
 
(※5)消費税法別表第一第4号ハ
(※6)国税庁タックスアンサーNo.6229
(※7)消費税法基本通達6-4-5
(※8)消費税法別表第一第4号ハ
(※9)消費税法基本通達11-3-7
 

4.その他個別論点

 

(1) 購入価格と額面が異なる物品切手等の消費税

 
鉄道の回数券のように、購入価格(10回分の値段)と額面(11回分の使用が可能)が異なる物品切手等があります。購入時は非課税となりますが、使用する際は取得に要した金額を基に課税仕入を認識することとなります 。(※10)
この例で1回分の値段が100円だった場合、1回使用するごとに90円(1,000円÷11回)ずつ課税仕入を認識することとなります。
 

(2) 未引換の商品券について、法人税の規定により収益計上した場合の消費税

 
法人税においては、商品券の発行代金を預り金として処理します。その後、「商品と引き換えた場合」はその引き換えた時点で収益に計上し、「その商品引換券等の発行の日から10年が経過した日の属する事業年度終了の時点で未引換えの場合」はその事業年度終了時点で収益に計上する必要があります 。(※11)
消費税においては、上記のいずれによって収益計上されたかで取り扱いが異なります。商品と引き換えた際の収益計上は、資産の譲渡等の対価として課税取引となりますが、未引換商品券の収益計上は資産の譲渡等を伴わないものですから、原則として消費税の課税の対象とはなりません 。(※12)
 
(※10)消費税法基本通達11-4-3
(※11)法人税法基本通達2-1-39(平成30年改正後)
(※12)国税庁消費税質疑応答事例「商品券の発行に係る売上げの計上時期」
 
 
執筆者:西山
 
 
 

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