お役立ちコラム
会社員でも還付金が戻る!知って得する「確定申告の義務がない人」のための還付申告
【はじめに】
今回の経理・会計・税務BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のコラムは、会社員でも還付金が戻る!知って得する「確定申告の義務がない人」のための還付申告についてです。
会社員として働いている方の多くは、毎月の給与から所得税が源泉徴収され、年末に会社が年末調整を行うため、自身で確定申告をする必要はありません。
しかし、「確定申告の義務がない」ことと、「確定申告をしなくても良い」ことはイコールではありません。
実は、年末調整だけでは控除しきれない費用や、会社が把握していない個人的な支出がある場合、自ら「還付申告」を行うことで、源泉徴収で払いすぎた税金が手元に戻ってくるケースが多々あります。
今回のコラムでは、会社員やパート・アルバイトの方が知っておくべき、還付申告の具体的なケースと、税金を取り戻すための手続きについて解説します。

1.還付申告とは?
還付申告とは、納税者がすでに納めた税金(源泉徴収された所得税)が、本来納めるべき税額よりも多かった場合に、その差額を国から返してもらうための手続きです。
通常の確定申告が「税金を納めるための申告」であるのに対し、還付申告は「税金を取り戻すための申告」というイメージです。
【最大のメリット】
還付申告は、確定申告の期限(翌年3月15日)に縛られません。
申告できる年分の翌年1月1日から5年間遡って手続きが可能です。
例えば、2024年分の還付申告は、2025年1月1日から2030年12月31日までいつでも行えます。
2.会社員が還付申告をすべき具体的なケース
(1)多額の医療費を支払った場合(医療費控除)
- 【要件】
1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費の合計額が、10万円、または所得金額の5%のいずれか低い額を超えた場合。 - 【対象となる医療費】
病院や歯医者の治療費、薬代、入院費用、通院のための交通費(公共交通機関)、介護サービス費用など。 - 【ポイント】
家族全員分の医療費を合算できます。生計を一にする配偶者や子どもの分も漏れなく集計しましょう。保険金や高額療養費で補填された金額は除外して計算します。
(2)住宅ローン控除を初めて受ける年(初年度)
- 【要件】
住宅ローンを借り入れて住宅を取得し、初めて控除を受ける年 - 【ポイント】
2年目以降は年末調整で対応できますが、初年度だけは建物やローンの契約書などの複雑な書類提出が必要なため、必ず自分で確定申告(還付申告)を行う必要があります。
(3)勤務先で年末調整を受けていない控除がある場合
年末調整で申告し忘れた、または間に合わなかった控除がある場合も還付申告の対象です。
- 【生命保険料控除、地震保険料控除】
年末調整で申告書を出し忘れた場合。 - 【iDeCo(個人型確定拠出年金)】
iDeCoの掛金は全額「小規模企業共済等掛金控除」の対象ですが、年末調整で申告し忘れると控除を受けられません。
(4)年の途中で退職し、年末までに再就職しなかった場合
- 【理由】
会社員は通常、年末調整で1年間の正確な税額が計算されます。
しかし、年の途中で退職し、その後再就職しないまま年を越すと、源泉徴収された所得税が過払いになっているケースがほとんどです。
退職時の源泉徴収額は、1年間勤務することを前提に計算されているためです。 - 【対策】
退職した会社からもらった源泉徴収票を使って還付申告をしましょう。
(5)副業収入が20万円以下の会社員
- 【ポイント】
副業の所得(収入から経費を引いた額)が20万円以下の場合、所得税の確定申告の義務はありません。 - 【還付申告のメリット】
たとえ20万円以下であっても、副業所得を申告することで、副業で生じた源泉徴収額が戻ってくる可能性があります。
(例えば、講演料や原稿料など、報酬からあらかじめ税金が引かれている場合)
3.還付申告で税金を取り戻すための具体的な手順
還付申告の手続きは、通常の確定申告とほぼ同じです。最も簡単な方法は、国税庁のウェブサイトを利用することです。
(1)必要書類の準備
- 【源泉徴収票】
会社から発行されるものを準備します。 - 【各種控除証明書】
- 医療費控除の場合:医療費控除の明細書(領収書は自宅で5年間保管)
- 生命保険やiDeCoの場合:控除証明書(ハガキなど)
- 住宅ローン控除の場合(初年度):借入金残高証明書、登記事項証明書、売買契約書など
- 【マイナンバー】
本人確認書類 - 【還付先の口座情報】
(2)申告書の作成(国税庁のサイトが便利)
国税庁のホームページにある「確定申告書等作成コーナー」を利用します。
- 「申告書等を作成する」から「所得税」を選択します。
- 質問で「確定申告書を提出しますか?」と聞かれたら、「いいえ」ではなく「はい」を選択し、「還付を受けたい」を選びます。
- 画面の案内に従って、源泉徴収票の情報を入力し、還付を受けたい控除の情報を入力していきます。
- すべての入力が終わると、還付される金額が自動で計算されます。
(3)申告書の提出
- 【e-Tax(電子申告)】 最も簡単で、還付までの期間が短い方法です。
- 【郵送】 作成した申告書を印刷し、必要書類を添付して所轄の税務署へ郵送します。
- 【窓口提出】 税務署の窓口に持参します。
【おわりに】
会社員だからといって確定申告を完全にスルーしてしまうと、知らないうちに「払いすぎた税金」を国に預けたままになっているかもしれません。
医療費や住宅ローン控除の初年度など、還付申告の対象となるケースに当てはまる場合は、過去5年分まで遡って税金を取り戻すチャンスがあります。
年末調整だけでは完結しない個人の支出をしっかりと把握し、還付申告によって家計にゆとりを取り戻しましょう。
この度は経理・会計・税務BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のコラムをお読みいただきありがとうございます。
次回の経理・会計・税務コラムでまたお会いしましょう。
(執筆者:北之園)
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