お役立ちコラム
損金算入となる飲食費の基準変更について
はじめに
2023年12月14日に「令和6年度税制改正大綱」が公表され、税務上損金不算入となる交際費等の範囲から除外される飲食費にかかる金額基準についての見直しがありました。公表されてから半年以上経過しているため、既にご存知の方も多いと思います。
今回は、この改正に関わる留意点について詳しく解説させていただきます。
どの企業にとっても影響のある改正となっておりますので、今まで損金不算入となる飲食費について知識が曖昧だった方もぜひご確認ください。
1.飲食費の適用基準
今回の税制改正により、交際費から除かれる「1人当たり5,000円以下」とされていた飲食費の適用基準が、2024年4月1日以降に支出する飲食費より「1人当たり10,000円以下」に引き上げられることとなりました。
これにより、税務上損金算入される交際費の範囲が広がることとなりました。
尚、飲食費の定義や必要書類の保存要件を含め、他の適用条件には変更はございません。
さらに、これは資本金1億円以下の中小企業だけの改正ではなく、全ての法人に影響を及ぼすものとされています。
どの企業においても適用される改正ですので、今後の日常業務でも留意する必要がございます。
(参考)
項目 |
2024年3月31日以前 |
2024年4月1日以後 |
損金不算入となる交際費等の範囲から除外される飲食費の金額基準 |
1人当たり 5,000円以下 |
1人当たり 10,000円以下 |
適用条件 |
飲食費の定義、必要書類の保存要件等に変更なし |
2.交際費の保存要件について
損金不算入となる交際費等の範囲から除外される飲食費に関しては、一定の事項を記載した書類を保存していることが必要とされています。
必要な記載事項につきましては、以下の通りとなります。
当該飲食費に係る飲食等のあった年月日
当該飲食費に係る飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のあるもの等の氏名又は名称及びその関係
当該飲食費に係る飲食等に参加した者の数
当該飲食費の額並びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在地
その他飲食費であることを明らかにするために必要な事項
3.税務調査の否認事例について
ある住宅化学大手が税務調査を受け、6億円超えの申告漏れが指摘された事例があります。
指摘された申告漏れのうち、約5千万円が接待交際費に関するものであり、これは重加算税の対象となるほど重大な違反行為でした。
この法人は、得意先との飲食代で、参加人数を実際よりも多くすることで、1人当たりの交際費の金額が5,000円以下に収まるように調整をし、本来税務上加算する必要がある交際費を損金算入し、故意に所得を過少に算出する所得隠しをしていました。
このように税務調査では、交際費が焦点となるケースが多くあるため、支出の経緯や理由、費用の内容などを記載した書類をレシートや領収書と合わせて保存し、社内管理を徹底することが大切となります。
上記の事例のように故意の事例でなくとも、今回の改正を知らなかったため、適切な会計処理ができなかったということにもならないように飲食費の変更基準に留意し、日頃から経理業務を行うように気を付けましょう。
おわりに
今回、損金不算入となる交際費等の範囲から除外される飲食費に係る金額基準が変更されたことにより、税務上、損金算入される交際費の範囲が広がりました。
交際費等の範囲から除外される飲食費に関して、保存要件を満たす書類の保存が現状できているか確認の上、保存要件が不足している際は、社内の作業フローの見直しを行い、適切な管理をすることが望ましいと思われます。
CSアカウンティングでは、会計・税務のプロフェッショナルが、保存の必要な書類やその保存方法などをアドバイスすることができます。
他にも、日頃の経理業務の中で、わからないことや改善したいことがございましたら、CSアカウンティングは、お困りごとをワンストップでサポートできますので、会計・税務の専門家のアドバイスが必要な方は是非お問い合わせください。
本件、損金不算入となる交際費等の範囲から除外される一定の飲食費に係る金額基準の変更でご不明な点や、その他お困りのことがございましたら、お気軽にCSアカウンティングにお問い合わせください。
執筆者:谷
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