お役立ちコラム

リース会計処理の改正について

はじめに


2023年5月2日付で、企業会計基準委員会日付で、企業会計基準委員会(ASBL)より「リースに関する会計基準(案)」および「リースに関する会計基準の適用指針(案)」が公表されたことをご存知でしょうか?

今回のリースに関する会計基準の改正は、実務に関わる影響が大きく、リースの定義やリースの識別を始め従来と異なる対応が求められます。

また、適用時期につきましては基準改正から2年程度を経過した日の4月1日以降に開始する事業年度の期首からの適用とされておりますが、早期適用も認められます。

 今回は、そのリース会計基準の改正に伴う会計処理の変更点についてご説明させていただきます。それを踏まえて、今回のリースの会計基準の改正に伴い、実務にどのような影響があるのかについても、ご参考にしていただければと思います。

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1.【改正点】借手の会計処理


(※貸手の会計処理につきましては、抜本的な改正はございません。)

「借手は、すべてのリースについて、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区別することなく、使用権資産およびリース負債を計上(オンバランス処理)することになります。」(金銭的に重要性が乏しいもの、及び契約期間が1年以下の短期リースを除く)

以下、今回の会計基準()と、現行の会計基準の比較になります。

会計基準()

企業会計基準第13

借手の会計処理

ファイナンス・リースとオペレーティング・リースを区別することなく、すべてのリースについて、使用権資産およびリース負債を計上する。

リース取引をファイナンス・リースとオペレーティング・リースに区別する。

ファイナンス・リースは、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理により、リース物件とこれに係る債務をリース資産およびリース債務として計上する。

オペレーティング・リースは通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行う。

使用権資産およびリース負債の

計上額

原則として、リース開始日において未払である借手のリース料からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値により算定する方法による。

リース料総額の現在価値と貸手の購入価額等(貸手の購入価額等が明らかでない場合は借手の見積

現金購入価額)とのいずれかの低い金額。


〇ファイナンス・リース...貸手が借手の代わりに商品を購入し、それを借手に貸す取引

〇オペレーティング・リース...借手が対価として金銭を支払うことで貸手から資産をレンタルする取引

〇オンバランス処理...資産や負債、資本の項目として貸借対処表(B/S)に記載する処理

今回の基準改正は、主として借手の会計処理について改正を行うものであり、貸手の会計処理については基本的に企業会計基準第13号の定めを維持することが掲げられています。

従って、貸手の会計処理につきましては、抜本的な改正は行われておりません。 


2.実務上の注意点


会計基準()では、自動車のリースや、我が国における事務所等の不動産賃貸契約、賃貸用住宅事業のためのサブリース契約などの取引について、現行の会計基準ではリース取引として処理をしていない取引ですが、オンバランスの対象となるとされています。

そのほか、従来は資産管理システムで管理することが少ないオペレーティング・リースにつきましても、契約ごとに管理が必要となっており、今回の改正によって、多くの企業にとって業務フローの変更や会計システムの改修が必要となってきることが予想されます。

おわりに


今回のリース取引の会計基準の変更に伴い、従来と異なる会計処理が必要になってきます。

従来のリース取引の会計基準との変更点を確認するとともに、業務フローを見直す作業を行うのは、日々のルーチンの業務の合間で対応するには、負担に思われる実務担当者の方も多いかもしれません。

会計基準を見直すことも、専門知識が豊富でないと難しいと感じることも多いかと思います。

CSアカウンティングでは、リース取引を始めとする昨今の様々な税務関連の制度の詳しい説明に加えて、実際の業務フローの見直しまで幅広くフォローすることが可能です。

また、日頃の経理業務に役立つ経理システム導入のご提案をしたり、専門知識を持って幅広くサポートをしたりすることも可能です。

自社の税務の業務や、日々の経理業務に少しでも不安のある方、気になる方はぜひお気軽にご連絡ください。

執筆者:谷

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