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要件追加・上乗せ措置・他の税制への影響も・・・!所得拡大税制の改正!


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 平成30年度税制改正の大綱が発表され、賃上げ・生産性向上・投資促進等の観点から改正が行われています。今回は、さらなる賃上げ及び投資促進等のため、適用要件や税額控除額の計算が大きく変わった「所得拡大税制の改正」について取り上げます。

 

1.適用要件

 従来はいずれも賃上げに関する適用要件が3項目掲げられていましたが、今回の改正で1項目に減りました。

賃上げにおいては、基準事業年度(平成24年度)の実績との比較が廃止され、前事業年度との比較に一本化されています。今まで基準事業年度との比較によってこの税制の恩恵を受けることができなかった法人も、今回の改正で一気に税額控除適用のチャンスが出てきました。

 しかし、大法人においては、同時に設備投資の要件も満たさないと税額控除を受けることができないため、注意が必要です(中小企業者等は設備投資要件なし)。

 

2.税額控除額の計算

 適用要件と同時に、税額控除額も改正されています。

 基本の税額控除に関しては、前事業年度からの増加割合に一本化され、単純なパーセント比較では控除率が上昇しています。

 さらに、今回の改正では大法人においても上乗せ措置が設けられており、前事業年度からの給与総額の増加額の最大20%(中小企業者等は25%)を税額控除することができます。

 

3.実務上の注意点

  • 平均給与等支給額の計算の基礎となる「継続雇用者」の定義が変わっています。改正後は前期と当期の全ての月で給与の支給がある者のうち一定の者が対象となります。範囲がかなり限定的になっているので、賃上げの対象者の選定や、要件の判定時にも注意が必要です。
  • 継続雇用者に対する賃上げは、情報連携投資等税制や研究開発税制等、所得拡大税制以外の税制の適用要件にもなっています。他の税制の優遇措置を検討する際も、賃上げ基準を忘れずに考慮しておく必要があります。

(広報誌「こんぱす 2018年春号」より抜粋)

 

関連ページ:

平成30年度 法人税関係法令の改正の概要|国税庁

会計・経理・税務アウトソーシング|会計・経理・税務サービス

 

執筆者:西山

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