お役立ちコラム
企業版ふるさと納税の延長とその概要
はじめに
今回の経理・会計・税務BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のコラムは、企業版ふるさと納税の延長とその概要についてです。
令和7年度税制改正大綱により企業版ふるさと納税の適用期限3年間延長が発表され、令和10年3月31日までの間に支出した分までが対象となりました。
企業版ふるさと納税自体は2016年に創設された制度ですが、個人のふるさと納税はご存じでも、企業版のふるさと納税はそれほどご存じでない方も多いのではないでしょうか。
今回の延長措置を機に改めて企業版ふるさと納税について確認をしていきます。
企業版ふるさと納税とは
1.制度概要
企業版ふるさと納税は、正式名称を「地方創生応援税制」といい、企業が地方公共団体に対して行う寄附を通じて、地方創生を支援する制度です。
企業側としては社会貢献によるPR効果や地域資源を活かした新事業展開、地方公共団体についても民間資金を活用した地方創生事業の実施や官民提携による企業とのパートナーシップの構築といったメリットが掲げられています。
内閣府の資料によると企業版ふるさと納税は、令和2年度税制改正において適用期限の延長や税の軽減効果の拡充等により寄附実績が大幅に増加し、令和元年度33.8億円だった寄附額は令和5年度には470億円となっています。また本税制を活用したことのある地方公共団体数も平成28年度~令和5年度までの累計で1,536団体となっています。
2.ふるさと納税の個人と企業の違い
個人のふるさと納税では最大で寄附金額から2,000円を除いた金額だけ税金が低くなり、様々な返礼品を貰えるという事はよく知られているかと思います。
最近でもお米の値段が高騰し、返礼品としてお米が貰える自治体へふるさと納税が集中して返礼品の準備が間に合わないといった事もニュースになっていました。
それでは企業版ふるさと納税はいかがでしょうか。企業版ふるさと納税については返礼品を受け取ることができません。
地方公共団体が寄附を行う法人に対し、その代償として経済的な利益を供与することは禁止されています。
一方で企業側の負担については最大寄附額の約9割について税額が軽減されることとなり実質的に企業負担は寄附額の約1割となります。
|
個人 |
企業 |
返礼品 |
あり |
なし(寄附の代償として経済的な利益を供与することは禁止) |
税負担 |
2,000円(ただし限度額を超えれば負担額は増) |
寄附額の約1割 |
税負担の詳細
1.税負担
前述の通り企業版ふるさと納税では企業の負担は寄附額の約1割となります。
イメージとして100万円を寄付した場合、およそ90万円税金が軽減され、残りの10万円(100万円の1割)だけが実質的に企業負担となります。
これは寄附金が損金算入となり約3割の減税効果があるのに加え、企業版ふるさと納税として最大6割の税額控除があるため、合わせて最大約9割の軽減効果が得られることとなっています。
~税額控除(最大6割)の内容~
➀法人住民税
寄附額の4割を税額控除(法人住民税法人税割の20%が上限)
②法人税
法人住民税で4割に達しない場合、その残額を税額控除。ただし寄附額の1割を限度(法人税額の5%が上限)
➂法人事業税
寄附額の2割を税額控除(法人事業税額の20%が上限)
おわりに
今回は企業版ふるさと納税について確認していきました。
企業版ふるさと納税は企業が地方公共団体に対して行う寄附を通じて地方創生を支援する制度ですが、企業にとっては税負担軽減だけでなく、社会貢献や企業イメージ向上、地方公共団体にとっては財源確保や地域活性化といった効果が考えられます。
今回のコラムにより企業版ふるさと納税の知識を深めて頂けましたら幸いです。
経理・会計・税務BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のコラムをお読みいただきありがとうございます。次回のコラムでまたお会いしましょう。
執筆者:笠井
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