お役立ちコラム
2028年4月施行予定 遺族厚生年金の見直しについて
令和7年5月16日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が第217回通常国会に提出され、衆議院で修正のうえ、6月13日に成立しています。
この法律は、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化を図る観点から、働き方や男女の差等に中立的で、ライフスタイルや家族構成の多様化を踏まえた年金制度を構築するとともに、所得再配分の強化や私的年金制度の拡充等により、高齢期における生活の安定を図るためのものです。
遺族厚生年金についても女性の就業率向上などに合わせて、男女差が解消される仕組みへ見直されておりますのでご確認ください。(2028年4月施行予定)
今までは生活を支える夫がなくなった際の妻への所得保障を前提に作られたものでしたが、今後は男女平等の世の中において妻だけがもらえる制度は平等ではないなどの理由から改正が行われています。
下図の通り「女性・男性」と区別されていた仕組みから「男女共通」の仕組みへ変更となっています。
1.見直しの対象者
- 法律では、遺族厚生年金の見直しは2028年4月施行予定です。
- 女性の場合、施行直後に原則5年間の有期給付の対象となるのは、18歳年度末までのこどもがいない、2028年度末時点で40歳未満の方です。新たに対象となる30代の女性は推計で年間約250人です。(20代の方は既に5年間の有期給付となっています。)
- 一方男性の場合、新たに5年間の有期給付を受けられるようになるのは、18歳年度末までのこどもがいない60歳未満の方です。対象者は推計で年間約1万6千人です。
2.見直しの影響を受けない方
以下①~④に該当する方は、今回の見直しによって受ける影響はありません。
①既に遺族厚生年金を受給している方
②60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する方
③18歳年度末までのこどもを養育する間にある方の給付内容
④2028年度に40歳以上になる女性
3.見直し後の5年間の有期給付と継続給付について
- 有期給付の額は新たに加算(有期給付加算)が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍となります。
- 5年間の有期給付の終了後も、障害状態にある方(障害年金受給権者)や、収入が十分でない方は、引き続き増額された遺族厚生年金を受給することができます(継続給付)。
単身の場合は、就労収入が月額約10万円(年間122万円(※))以下の方は、継続給付が全額支給されます。収入が増加するにつれて収入と年金の合計額が緩やかに増加するよう年金額が調整されるしくみとなります。遺族厚生年金の年金額にもよりますが、概ね月額20~30万円を超えると、継続給付は全額支給停止します。
※2025年度税制改正を反映した地方税所得に基づくと132万円(見込み)。また、夫と死別した妻が所得に関する要件を満たして地方税法上の「寡婦」に該当する場合は、年間204万程度となる。
4.こどもがいる場合
- 18歳年度末までのこどもがいる場合、こどもが18歳年度末になるまでは現行制度と同じであり、見直しの影響はありません。
(こどもが18歳になった後、さらに5年間は増額された有期給付+継続給付の対象となります。) - また、遺族基礎年金の「こどもがいる場合の加算額」が増額(年間約23.5万円→28万円)となります。
【参考】
遺族厚生年金の見直しについて
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00020.html
年金制度改正法が成立しました
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html
遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html
遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-04.html
★お役立ち情報満載のCSアカウンティングYoutubeはこちら
★定期的に情報を発信しているCSアカウンティングのX(旧Twitter)はこちら
CSアカウンティングの人事・労務・社会保険サービスは、勤怠管理・給与計算・社会保険を一元化することにより、本来従事すべきコア業務へのシフトをお手伝いいたします。
また、アウトソーシングによるコスト削減のみならず、社会保険労務士などの経験豊富な専門家がお客様のよき相談相手となり、人事・労務に関する問題をスピーディーに解決します。
ご相談はこちら⇒https://business.form-mailer.jp/fms/c543034e81511
(執筆者:坂田)
関連コラム
- 令和7年4月から現物給与の価額が改正されます
- 今回は社会保険における現物給与についてお伝えいたします。厚生年金保険および健康保険の被保険者が、勤務する事業所より労働の対償として現物で支給されるものがある場合は、その現物を通貨に換算し報酬に合算のうえ、保険料額算定の基礎となる標準報酬月額…
- 令和7年1月1日改正 養育期間特例添付書類が省略へ
- 令和7年1月1日から、養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置を申請時の「戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書」(原本)についても省略可能となりました。これまで、養育期間特例の手続きには、「戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書」(原本)お…
- 3歳未満の子どもの養育特例申出において、添付書類が省略へ
- 『「養育特例」には戸籍謄本や住民票が必要で、お金も時間も少しかかって困る』とお思いの方は朗報です!厚労省からの通知により【2025年1月1日】から、それらが不要になる、という決定がなされました!厚生年金保険には、いわゆる「養育特例」と呼ばれ…
- 社会保険適用拡大のコストについて試算してみた
- 令和6年(2024年)10月から、短時間労働者の社会保険加入義務が、被保険者数101名以上の企業から、51名以上の企業へ拡大される。短時間労働者の社会保険の加入要件は次のとおりだ。・週の所定労働時間が20時間以上・所定内賃金が月額8.8万円…
- 傷病手当金に関する7つの質問に答えます!
- 怪我や病気になって働くことが出来なくなったらどうしよう…そんな時役立つのが【傷病手当金】です。傷病手当金について様々な事項をご説明します!傷病手当金とは?傷病手当に関する7つの質問入社1年未満でも傷病手当金はもらえる?傷病手当金と労災は同時…
当サイトの情報はそのすべてにおいてその正確性を保証するものではありません。当サイトのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、賠償責任を負いません。具体的な会計・税務判断をされる場合には、必ず公認会計士、税理士または税務署その他の専門家にご確認の上、行ってください。