お役立ちコラム

担保物がある場合の貸倒れの処理は税務上どうなるの?

当社は、取引先のA社に対して800万円の貸付金を有しており、A社所有の土地に抵当権を設定しています。

この度A社が倒産するに至ったため、貸付金の回収可能性を検討したところ、当社の抵当権順位は第6順位となっておりました。そのため、A社所有の土地が処分されたとしてもその資産価値が低く、当社に対する配当の見込みが全くないことが判明しました。A社所有の土地の処分によって当社に配当される金額がない場合、A社の資産状況、支払能力等からみて、当社が貸付金の全額を回収できないことは明らかです。

そこで、当社は、A社所有の土地の処分を待たずに、当期においてこの貸付金について貸倒損失として損金経理しようと考えていますが、税務上もこの処理は認められるのでしょうか。

法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒損失として損金経理をすることができます(法人税基本通達9-6-2)。この場合において、当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒損失として損金算入をすることはできず、原則、担保物処分前に貸倒損失として損金経理を行っても、当該金額は損金不算入となります。しかし、担保物の適正な評価額からみて、その劣後抵当権が名目的なものであり、実質的に全く担保されていないことが明らかである場合には、担保物はないものと取り扱って差し支えありません。

今回のケースの場合、当社に対し配当見込みがなく、実質的に全く担保されていないことが判明しております。したがって、A社の資産状況、支払能力等からみて貸付金の全額が回収不能と判断されるとのことですから、担保物を処分する前であっても貸倒損失として損金経理することで、当該金額は当期の損金の額に算入されることとなります。

 

<参考文献等>

国税庁HP 質疑応答事例 担保物がある場合の貸倒れ

http://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/16/04.htm

 

法人税基本通達9-6-2 回収不能の金銭債権の貸倒れ

http://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_06_01.htm

 

執筆者:八巻

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