お役立ちコラム

投資損失引当金はどのような時に計上できるのですか?

ここ数年、子会社の業績が悪化し、実質価額が低下してきました。減損を計上するまでには至っていないのですが、保守性の観点から引当金を積んでおきたいと考えています。何か方法はありますでしょうか?

次のいずれかに該当する場合には、将来の減損リスクに備えて投資損失引当金を計上することができます。

 

①    子会社株式等の実質価額が著しく低下している状況には至っていないものの、財務健全性の観点から、その低下相当額を引当金として計上する場合(実質価額の回復可能性が客観的に確実である等の場合を除きます。)

②    子会社株式等の実質価額が著しく低下したものの、回復可能性が見込めると判断して減損処理を行わなかったが、回復可能性の判断は実務上万全なものとはいえないことに鑑み、財務健全性の観点から、当該リスクに備えてその低下相当額を引当金として計上する場合

 

現行の会計基準においては、市場価格のない非上場の子会社株式等に対する減損の取り扱いとして、実質価額が著しく低下した場合(取得価額の50%程度以上下落した場合をいいます)には相当の減額をすることとされていますが、この要件を満たさない場合には、原則として減損の対象とはなりません。

しかしながら、減損処理を待たずして既に実質価額の低下している株式に対する損失計上を行うことは、財務健全性の観点から有用であり、また、保守性の観点からも会計処理上妥当なものであるとされるため、上記の通り投資損失引当金を計上することが認められています。

 

なお、留意点として、投資損失引当金を計上している場合には、その計上基準を重要な会計方針に注記する必要があります。また、会計監査等で投資損失引当金を計上している場合であっても、税務上は損金として認められず、全額加算されることとなりますので、注意が必要です。

 

<参考文献等>

監査委員会報告第71条 「子会社株式等に対する投資損失引当金に係る監査上の取扱い」

https://jicpa.or.jp/specialized_field/pdf/00480-001383.pdf

 

執筆者:水野

関連コラム

インボイス制度でETC料金の保存書類が増えます!
概要2023年10月1日より制度開始となる適格請求書等保存方式(以下、「インボイス制度」)について、自社が発行する請求書・領収書の書式が変わることやインボイス発行事業者になるための登録申請が必要といった情報は認知が進んでいますが「自社が受け…
会計の役割とは??
会計の役割とは、、??1.日々の業務と会計の繋がり「会計」というと、経理部門の人が知っておくべきスキルであって、経理関係者以外は知らなくても良いと思っているビジネスパーソンも少なからずいると思います。さらには、会計は知っておいた方が良いけれ…
これだけは押さえておきたい!月次決算の基本ポイント
月次決算を行う目的とメリット月次決算は、年次決算のように法律的な規制はありません。したがって計上基準は会社で独自に決定することができます。月次決算は年次決算と同様の作業を行うことになりますが、月次決算の目的である経営判断資料の早期作成をふま…
連結決算の基本的な考え方②
はじめに前回、企業グループ全体の財政状態や経営成績を把握するツールとして連結財務諸表について紹介しました。(連結決算の基本的な考え方)連結財務諸表が生まれた背景や基本的な仕組み等については、ぜひ前回のコラムを見ていただきたいです。今回のコラ…
経営分析の8つの指標
はじめにここでは経営分析について考えてみます。決算書の中身を理解した上で、会社の経営状態をチェックしていきます。経営分析は、会社の強みや弱みを客観的に把握するために有効な手段です。経営分析でできること経営分析には大きく2つの方法があります。…

当サイトの情報はそのすべてにおいてその正確性を保証するものではありません。当サイトのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、賠償責任を負いません。具体的な会計・税務判断をされる場合には、必ず公認会計士、税理士または税務署その他の専門家にご確認の上、行ってください。