お役立ちコラム
外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の平成29年度税制改正
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外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)が、平成29年度税制改正において見直しされたと聞きました。ポイントを教えてください。
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平成29年度税制改正において、外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の大幅な見直しが行われました。
【ポイント】
(1)旧制度においては、租税負担割合が20%未満か否かによって「特定外国子会社等」に該当するか否かを判定していました。
この「20%」は「トリガー税制」とも言われ制度の入口基準として重要な意味を持つものでした。
しかし、一見して明らかに受動的な所得しか得ていない(経済実態のない)ペーパーカンパニー等について、租税負担割合が20%以上であるという事実だけをもって制度の適用を免除するのは問題がある、という議論等によりトリガー税制は廃止されました。
ただし、納税者の事務負担の大幅な増加を回避するために、制度免除基準としての「税率基準(租税負担割合)」は残されています。
(2)「ペーパーカンパニー」や「事実上のキャッシュボックス」といった新たな企業概念が定義され、これらの会社に対する合算課税制度が創設されます。
新制度においては、租税負担割合が20%以上であったとしても、ペーパーカンパニー等に該当すると当該会社の全ての所得に対して合算課税が生じます。
ペーパーカンパニー等に該当しない外国関係会社については、最初に、「経済活動基準」(※事業基準、実体基準、管理支配基準、所在地国基準又は非関連者基準の4つがある。)を満たすかを検討する必要があります。
4つの経済活動基準を一つでも満たさない場合には、外国関係会社の全ての所得が合算課税対象とされます(会社単位の合算課税)。これは、旧制度とほとんど変わらない取扱いとなっています。
問題になるのは、4つの経済活動基準を全て満たす場合です(旧制度においては、適用除外基準を全て満たすケースに該当)。
この場合は、「一定の受動的所得」についてのみ合算課税対象となります(部分合算課税制度)。
この制度は旧制度における「資産性所得」の合算課税と同様のコンセプトによる課税ですが、合算対象とされる所得の種類は増えており、その範囲も広がっていますので注意が必要です。
なおこの新制度は、外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
図式等詳細が国税庁HPに掲載されていますのでご参考下さい。
<参考文献等>
国税庁HP:
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/hojin/kaisei_gaiyo2017_4/pdf/08.pdf
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