お役立ちコラム
違約金や損害賠償金は消費税が課税される!?

違約金や損害賠償金を支払った場合や受け取った場合には、原則として、消費税は課税対象外(不課税取引)とされます。しかし、違約金や損害賠償金であっても課税取引とされることがあります。
そもそも、消費税が課税される取引というのは次の4要件を満たす取引を言います。
1.国内において行われるものであること
2.事業者が事業として行う取引であること
3.対価を得て行う取引であること
4.資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供等に係る取引であること
違約金や損害賠償金は3つ目の「対価を得て行う取引であること」を満たさないため、課税対象外の取引とされます。通常の商取引であれば、商品の売買やサービスの提供の「対価」として金銭を授受しますが、違約金を受け取った場合等は商品やサービスの「対価」としてではなく、遺失利益の補填という性格のため不課税取引とされます。
不課税取引とされるものを具体的に見てみましょう。
- 営業車を運転していて交通事故を起こしてしまい、被害者に対して損害賠償金を支払った場合
- サービスの利用契約を締結したが、正当な理由なく契約を解除したために違約金を支払った場合
これらの取引は名実ともに違約金や損害賠償金なのでわかりやすいかと思います。
では、どのような場合に違約金や損害賠償金に消費税が課税されるのでしょうか。
<違約金の支払いが課税取引とされる場合>
事務所を賃貸していて解約時に違約金を発生する例として下記のようなものがありますが、それぞれ消費税の取扱いは異なります。
(1)中途解約をしたことにより発生した違約金 → 不課税取引
(2)明け渡しが遅滞したことにより発生した違約金 → 課税取引
(1)の場合は中途解約されたことにより生じる逸失利益を補填するためのものであるため不課税取引となります。(2)の場合は違約金という名目ですが、明け渡しが遅滞したことにより事務所は使用されていますので、事務所の利用の対価として消費税は課税されます。
また、(2)の場合に違約金として通常の賃貸料の3倍の金額を徴収することとなっている場合でも、その全額が課税取引となります。入居者が正当な権利なくして使用していることに対する割増し賃貸料としての性格を有しているため、全額が事務所の貸付の対価として課税取引となります。
<課税取引となる損害賠償金>
交通事故の被害者に対する損害賠償金は不課税取引と書きましたが、次のような場合は損害賠償金であっても課税取引となります。
(1)交通事故によって商品に傷をつけてしまったため損害賠償金を支払い、その商品は加害者に引き渡された軽微な修理をすることによって使用することができるような場合
(2)製品開発をするにあたって他者の特許権を無断で使用していたため、その特許権を持っている相手に訴えられて損害賠償金を支払う場合
この2つはどちらも課税取引となります。
(1)、(2)ともに損害賠償金という名目ですが、(1)の場合は商品の引き渡しを受けてその商品を使用ができるような状態であるため実際にはその商品購入したのと同様の状態にあります。(2)の場合は特許権を使用して金銭を支払っているため、損害賠償金ではあっても使用料を支払っているのと同様の状態にあります。
したがって、これらの取引は課税取引となります。
なお、商品の引き渡しを受けた場合であっても、軽微な修理により使用することが可能である場合のみ課税取引となります。破損の状況がひどくて廃棄するしかないような場合は商品の譲渡の対価ではなく、損害の補填として支払うものになりますので不課税取引となります。
<キャンセル料とキャンセル事務手数料>
飛行機のチケットやゴルフ場の予約をキャンセルした場合にキャンセル料とキャンセル事務手数料がかかる場合があります。
キャンセル料は本来得ることができたはずの利益を補填するためのものであるため、資産の譲渡等の対価とされず、課税対象外とされます。
一方、事務手数料は解約の手続き等の事務を行う役務の提供の対価であるため、課税取引とされます。
では、キャンセル料とキャンセル事務手数料を区分せずに一括で支払いをしている場合はどうでしょうか。この場合は支払額全体を逸失利益の補填のためのキャンセル料ととらえて、全額を課税対象外として取り扱うこととされています。
違約金や損害賠償金を支払った場合や受け取った場合にはその名目で判断するのではなく、取引の実態を見て対価性のある取引なのかどうかを判断したうえで課税取引となるか、不課税取引となるかを判断する必要があります。
<違約金や損害賠償金を受け取った場合の法人税・所得税の取扱い>
法人が違約金や損害賠償金を受け取った場合は消費税の取り扱いにかかわらず、収益として認識することとなります。
個人の場合には違約金や損害賠償金を受け取った内容により事業所得、不動産所得、一時所得などになる場合や非課税として所得税が課税されない場合がありますので、内容を確認して課税関係を判断する必要があります。
参考資料
国税庁タックスアンサーNo.6261建物賃貸借契約の違約金など
執筆者:髙木
写真:123RF
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