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海外航空券に係る消費税の注意点

 

海外航空券に係る消費税の注意点

 

海外出張などで飛行機を利用した際、請求書や利用明細書を見ると航空券代の他に「空港施設利用料」や「海外航空保険料」などの費用が記載されていることがあります。これらの費用はそれぞれ消費税の取扱いが異なります。

 

航空券代に付随して発生する費用は主に次のようなものがあります。

項目 課否区分
航空券代 国内線は課税
国際線は免税
国内空港施設使用料 課税
海外空港税等 不課税
海外航空保険料 不課税
発券手数料 課税
燃油サーチャージ 免税
取消手数料 不課税
査証料金 不課税

 

● 航空券代

東京~北海道のように国内間の移動の場合は消費税が課税される取引となります。

一方、東京~ニューヨークのように海外への渡航のための航空券代の消費税は免税となります。消費税法において、「国内及び国外にわたって行われる旅客又は貨物の輸送」が輸出免税取引等として消費税が免除される取引とされているからです。(消費税法基本通達7-2-1輸出免税等の具体的範囲(3))

また、新千歳空港から羽田空港まで国内線で移動したのち、国際線に乗り継いで海外に出張したような場合に請求書の航空券代が国内線と国際線に区分されておらず、合算で金額が記載されている場合があります。国内線を国際輸送の一環として利用し、国内線と国際線を24時間以内に乗り継いだ場合は、国内線の運賃も国際輸送に該当するとされて免税になります。(消費税法基本通達7-2-4旅客輸送に係る国際輸送の範囲

 

● 国内空港施設使用料

空港利用料ついては、国際空港内における空港を利用するという便益を享受するために支払うものであり、その空港内で受けるサービスの提供場所は国内となりますので、課税の対象となります。

したがって、空港利用料は課税仕入れとなり、仕入税額控除の対象となります。

 

● 海外空港税等

出国税や入国税、海外空港施設使用料、税関審査料など国や都市によって定めている税金等の料金です。これらの料金は航空会社が代理で徴収をして各国や都市に収めています。税金であったり海外の施設利用料であるため、消費税は不課税となります。

 

● 海外航空保険料

航空会社が加入している損害保険の保険料の搭乗者負担の料金です。米国で2001年9月に発生した世界同時多発テロ事件により航空会社が加入している保険がそれ以前にくらべ大幅に増大しました。これにより損害保険の一部を乗客が負担する付加料金として多くの航空会社で導入されたものです。保険料ですので消費税は課税されません。

 

● 発券手数料

これはその名の通り、航空券を発券するための手数料なので、国内で役務提供が完結しており消費税が課税される取引となり、仕入税額控除の対象となります。

手配手数料、手続手数料などの名目で請求されることもあります。

 

● 燃油サーチャージ料

燃料費の高騰により燃料費の一部を乗客が負担する付加運賃です。したがって、航空券代に付随する費用として取り扱われ、消費税は免税となります。2018年4月に原油価格の大幅な下落により燃油サーチャージが6年半ぶりにゼロになりましたが、2017年2月より再び燃油サーチャージの徴収がされるようになりました。航空会社によって燃油サーチャージの徴収がある場合とない場合がありますので、経理処理の際は請求書を確認する必要があります。

 

● 取消手数料

「手数料」とついていますが実質的にはキャンセル料と同様の取扱いとされるため、原則として消費税は不課税となります。

ただし、キャンセルの事務手数料や払戻手数料は消費税が課税されます。

 

● 査証料金(ビザ料金)

ビザの申請手数料は消費税がかからない取引です。

ただし、旅行会社や航空会社が代理で申請する場合の代行手数料は課税仕入れとなりますので、仕入税額控除の対象となります。

 

 

海外出張に伴うその他の消費税の注意点

 

◎ 経理処理について

消費税が課せられない費用には「免税」「非課税」「不課税」とあります。売上の場合にはこれらを判別して計上する必要がありますが、費用を支払う場合の経理処理については、これらの区分を特段意識せず消費税課税対象外として処理をして差し支えありません。

 

◎ 出張に際して支払う日当について

従業員が出張をする場合に日当を支給することがあるかと思います。この場合の消費税の処理は国内出張の場合、課税仕入れとなりますが、海外出張の場合の日当の消費税は課税対象外となります。(消費税法基本通達11-2-1出張旅費、宿泊費、日当等)

 

◎ 海外の取引先に渡すための手土産代は免税になることがある!

国内で手土産を購入した場合は通常、消費税が課税されます。ただし、一定の要件を満たすことによって消費税が免税となる場合があります。

<要件>

  1. 輸出物品販売場の許可を受けた免税店で購入した物品であること
  2. 1個当たりの金額が1万円を超えること
  3. その物品が渡航先における贈答用として出国の際に携帯し帰国若しくは再入国に際して携帯しないことの明らかなもの又は渡航先においてその海外旅行者が2年以上使用若しくは消費するものであること
  4. 購入者誓約書を輸出物品販売場を営む事業者が保存すること
  5. 海外旅行者が輸出したことにつき税関長が証明した「輸出証明書」を輸出物品販売場を営む事業者が保存すること

国税庁タックスアンサーNo.6555 海外旅行者が出国に際して携帯する物品の輸出免税

 

通常、購入時は消費税が課税され手続きをとることで、購入をした免税店から消費税相当額を返金されるという流れになります。

 

公開日:2012年08月12日

更新日:2019年08月09日

執筆者:高木(信)

 

 

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