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年末調整って何なの?今さら聞けない基礎知識

今年も人事担当者にとっては慌ただしい年末調整の時期を終えようとしております。

今回はそもそも年末調整って何なの?など今さら聞けない基礎知識をご説明します!

 

Q1.年末調整って何?

Q2.年末調整の際に集める書類は?

Q3.年末調整の対象外となる人とは?

Q4.12月給与の後に賞与を支給する場合には年末調整はどうするの?

Q5.年末調整で徴収が発生する人、還付がある人はどんな人?

 

 

Q1. 年末調整って何?

 

年末調整とは、1年間の所得税の確定作業です。所得税は1~12月の所得を元に最終的な金額が決まります(月々の給与で控除している所得税は概算額です)。所得税は各個人が確定申告により申告し納付するのが原則ですが、給与所得のみの人は例外的に確定申告を行う必要がなく、年末調整のみで納付が完結します。本来は税務署が行う作業を会社が代わりに行っているイメージです。

 

 

Q2.年末調整の時に集める書類は?

 

CSアカウンティングで年末調整を行う場合には、年末調整の際に以下5つの書類をご提出いただいています。税制改正により2020年からは配偶者控除等申告書が「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」に変わる見込みです。

 

(1)今年の扶養控除等異動申告書

(2)来年の扶養控除等異動申告書

(3)今年の配偶者控除等申告書

(4)今年の保険料控除申告書

(5)住宅借入金等特別控除申告書

 

(1)・(2)扶養控除等異動申告書とは?

 

扶養控除等異動申告書とは、給与について扶養控除等を受けるために提出するもので、ダブルワークをしている方は1社にしか提出することができません(通常は多く給与を受けている会社に提出します)。なお、所得税法194条に提出義務が定められていますが、罰則はありません。

提出がある場合 月々の給与計算での所得税が扶養情報等を加味した額で計算されるため、他の要因がなければ年末調整の際に大きく還付や徴収をされることがありません。
提出がない場合 月々の給与計算で扶養控除等を加味しないで計算するため、引かれる所得税が高くなり、手取り額が少なくなります。また、申告書の提出がない方は年末調整の対象外となるため、自分で確定申告をしなければなりません(月々の給与で控除されていた所得税は確定申告で精算されます)。

 

扶養控除等異動申告書は、その年の最初に給与を受けるときまでに提出することとなっているため、理論上は年末調整時に回収しなくても良いものです。しかし、今年の申告書は既に提出済の申告内容から変更がないか確認するため、来年の申告書は別途提出してもらうのは会社も社員も双方にとって手間となるため、年末調整の際に提出していただくこととしています。

 

 

(3)配偶者控除等申告書とは?

 

配偶者控除または配偶者特別控除を受けようとする社員が提出しなければならない書類です。扶養控除等申告書で配偶者の記載をしていたとしても、年末調整で配偶者(特別)控除を受けるためにはこの申告書を提出しなければなりません。この申告書に社員各人が本人及び配偶者の所得見積額を記載するのですが、給与計算に携わっていない方はそもそも所得が何なのかを理解しておらず誤った計算で申告をされるケースもあるため(支給額の中にも通勤手当など非課税で除外すべきものがあって給与収入額を把握するのも難しい上、給与所得控除の計算式のあてはめ方がよく分からないという質問もあります)、本人の給与額を把握している会社担当者が本人の申告した区分が誤っていないかチェックしているケースもあります。年末調整は本人の申告に基づいて行うものではありますが、誤った申告内容のまま年末調整を行うと、後日税務署から是正勧告が来て対応しなければならなくなります。

 

 

(4)保険料控除申告書とは?

 

控除の対象となる生命保険料、地震保険料、社会保険料(社会保険の加入要件を満たさないアルバイトの方や学生の間猶予されていた年金保険料を払った場合など)、小規模企業共済等掛金(IDECOなど)の支払を行った方は、年末調整の際に保険料控除申告書を提出することで控除を受けることができます。2019年までは添付書類の提出が必要な場合は原本を会社に提出することが必要でしたが、2020年の年末調整からは電子的控除証明書を提出することで紙の提出は不要となります。なお、医療費控除や寄付金控除等は保険料控除申告書で申告できないため、控除を受けたい場合は個人で確定申告を行う必要があります。

 

 

(5)住宅借入金等特別控除申告書とは?

 

要件を満たして住宅借入金等特別控除を受ける場合には、1年目は確定申告を行う必要がありますが、2年目以降は年末調整で申告することができます。

 

 

Q3.年末調整の対象外となる人とは?

 

年末調整をする前提として、扶養控除等異動申告書を提出している、ということがあります。そのため、他社に扶養控除等異動申告書を提出しており、自社では提出を受けていない場合には年末調整の対象となりません(保険料控除や住宅借入金等特別控除は提出していなくても差し支えありません)。その他、①給与の総額が2,000万円を超える人、②災害減免法の規程により所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人、③退職等により12月31日までに他社へ扶養控除等異動申告書を提出すると見込まれる者、は対象になりません。また、前職があり源泉徴収票を提出できない人はその年の給与総額が分からないため年末調整を行うことができません。確定申告をするので年末調整は不要です、と言われることがありますが、法的に言えば所得税法190条で会社に年末調整を行う義務が定められており、上記に該当しない場合は年末調整を行わなければなりません。社員が確定申告を行う場合は、年末調整を行った上で確定申告をしていただくことになります。

 

 

Q4.12月給与の後に賞与を支給する場合には年末調整はどうするの?

 

年末調整は12月の給与で行うのが一般的ですが、給与支給日より賞与支給日が後の場合には、12月賞与で年末調整を行うこともあります。年末調整は1年の所得に対して行う所得税の確定作業であり、賞与の方が後の場合には給与計算時点では1年間の総所得額が確定していないためです。

 

 

Q5.年末調整で徴収が発生するのはどんな人?

 

年末調整の結果は還付となることが多いです。なぜなら、月々の所得税は扶養情報のみを加味して概算保険料を計算しており、年末調整で保険料控除や住宅借入金等特別控除の申告を受けるためです。しかし、扶養親族としていた親族が年の途中で対象外になった場合(特に最近では本人の年末調整時に確認してみると本人の所得が思ったより多く、本人所得の要件がある配偶者控除において急遽対象外になる方がみられます)や、賞与の金額が多い場合(給与・賞与計算時の所得税は、賞与は年間を通じて給与の5か月分支払われるものとして算出されているため、賞与が多い場合には徴収不足となってしまいます)などに年末調整で徴収が発生します。

 

執筆者:中谷

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