お役立ちコラム

CSA社労士雑記 ~パワーハラスメントを考えてみよう(1)~


 

パワーハラスメントが流行っている

というわけでもないのでしょうが、最近、特に注目をされているようですね。

 

体操やレスリングでのパワハラ騒動、

誰もが知っている有名企業でのパワーハラスメント訴訟など。

 

ほぼ毎日のように目にしているように思えます。

 

皆さんの会社ではいかがでしょうか。

 

上司が怒鳴った

ねちねちとうるさい同僚がいる

いちいち部下が言うことをきかない

部下が集まって自分への悪口を言っている

嫌いな同僚に無視をされたのでこちらも無視をしている

いわれのない悪いうわさで、会社に居場所がなくなってきている

同僚と比較して、能力が低いといわれた

上司に責任をなすりつけられて、評価が下がった

 

これらのことがハラスメント行為であるか否かは別として、

 

会社で人間関係が悪化してしまったとしたら、

つらいこと、泣きたいこと、悔しいこと。

 

とにかくいろいろと大変です。

 

育ってきた環境も価値観も違う人たちが、

会社という一定の枠の中で競争をするわけですから、

仕方のない部分はあるのかもしれませんが、

 

パワーハラスメントは、

つまりそんな悪化した対人感情から発生することが多いこともあり、

 

結果として、こじれるだけこじれて、争いになって遺恨が残る、

といった厄介な代物というわけです。

 

上司が怒鳴った、

部下が怒鳴り返した

 

これはパワーハラスメントなのでしょうか。

それとも、上司からの業務上の指導で、それに対する部下からの意見なのでしょうか。

 

どちらに非があってどちらが悪いのか、

 

パワーハラスメントについての法律が整備されていればよいのですが、

平成30年現在、法律上に記載はありませんので、

その判断は難しいものとなることが多いのです。

 

とはいっても、企業には従業員への安全配慮義務がありますし、

問題が大きくならないうちに解決をしなければならないはずですから、

 

基本的には、定められた定義に従って、ハラスメント行為であるかどうかを判断しつつ、誠実に向き合うことが求められます。

 

 

<職場のパワーハラスメントの定義>

 

職場のパワーハラスメントとは、

同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為

のことを指します。わかりやすい言葉では下記のような内容となります。

  • 職場の地位・優位性を利用している

上司から部下という“いち方向”だけではありません。

例えば、部下複数人で上司を攻撃する、クライアントから営業担当者に対して、尊厳を貶めるような暴言がある、といったような場合も含まれます。

  • 業務の適正な範囲を超えた指示・命令がある。

例えば、弁当買ってこい!とか、お金貸せ!とか、適正な業務範囲を超えているようなことです。弁当買ってこい!などは、体育会系の先輩後輩の中ではありがちですが、買ってくる側に負の感情が芽生えていればトラブルになり得ます。

土下座をさせるなんていうことも、適正な業務範囲を超えているといえるでしょう。

  • 著しい精神的苦痛や職場環境を害する行為を行う。

少しのミスに対して、“退職したら”、とか、“頭悪いね”、とか、“窓際に追いやって無視”とか。例を挙げればきりがありませんが、つまり尊厳を傷つけるようなことです。

 

 

<具体的な行為分類>

 

(1)身体的侵害

これはわかりやすいですね。

つまり暴力的行為のことです。

「上司が怒りにまかせて身体に向けてボールペンを投げつけてきて身体に当たった」

例えば、これもパワーハラスメントになり得る可能性もあると思います。

「営業成績が悪い事で複数回殴られた」

等の強烈な身体的侵害の場合は、目に見える行為ですから立証しやすく、パワーハラスメントとしての企業側の判断は比較的容易であると考えます。

 

(2)精神的侵害

脅迫、名誉棄損、暴言、などで精神的な苦痛を与えるようなことです。

立証が難しいので、パワーハラスメントとしての企業側の判断も難しいものとなります。対人感情も大きな要因となっていることが多いため、その対応には頭を悩ますところとなります。

 

(3)人間関係からの切り離し

電話しか置いていないような部屋に席があったり、無視されたり、一人だけ飲み会に誘われなかったりと、いわゆる仲間外れ状態のようなことですね。

 

(4)過大な要求、過少な要求

明らかに達成できないノルマを課せられた、逆に、お茶くみだけ、トイレ掃除だけ、電話だけ、とかいうようなことです。

 

(5)個の侵害

恋人についてしつこく聞いてきたり、有給休暇の使い方を細かく聞いてその結果、有給休暇の取得を認めない、SNSを常にチェックされていて指摘を受けるなど、本人が不快に思うことが続けば、パワーハラスメントに該当してしまう可能性があります。

 

従業員として働く皆さんは、会社で不快な思いをしているようなことがあったとして、それが上記のようなことに当てはまると考えられるでしょうか。

人事担当の方や管理職の皆さん、役員の皆さんは、上記のようなことが起きているとして、適切な対応が出来ているでしょうか。

争いになってからでは、解決が困難ですから、ハラスメントらしい言動や行為があると思われるときは、影響が小さいうちに相談したり、指導をすることが大切です。

(CSA社労士雑記~パワーハラスメントを考えてみよう(2)~に続く)

 

関連ページ:

労務コンサルティング

CSA労務士雑記~パワーハラスメントを考えてみよう(2)~(お役立ちコラム)

 

執筆者:立山

(c)123RF

関連コラム

令和7年度地域別最低賃金額改定について
先日開催された第71回中央最低賃金審議会で、今年度の地域別最低賃金額改定の目安について答申が取りまとめられました。【答申のポイント】(ランクごとの目安)各都道府県の引上げ額の目安については、Aランク63円、Bランク63円、Cランク64円。注…
「企業による社員の仕事と介護の両立支援に向けた実務的支援ツール」が公表されました!
令和7年4月1日より、「介護離職防止のための雇用環境整備」や「介護離職防止のための個別の周知・意向確認等」が義務化されましたが、対応は進められているでしょうか。この度、厚生労働省から「企業による社員の仕事と介護の両立支援に向けた実務的支援ツ…
採用面接などで具体的に気をつけることは?
採用選考は企業と応募者の最初の接点です。企業の信頼性を高め、トラブルを防ぐためにも、基本的な考え方や注意点を押さえておきましょう。1.採用選考の基本的な考え方について採用選考は、「人を人として見る」人間尊重の精神、すなわち、応募者の基本的人…
障害者を雇用する上で必要な3つの手続きをご存知ですか?
従業員40人以上の事業主は、毎年6月1日現在の障害者の雇用に関する状況(障害者雇用状況報告)をハローワークに報告する義務があります(障害者雇用促進法43条第7項)。毎年報告時期になりますと、事業所に報告用紙が送付されてきますので、必要事項を…
職場における熱中症対策が強化されます!
今回は職場における熱中症対策として改正労働安全衛生規則が施行されますのでお知らせいたします。次の表からも2年連続で死亡者数が30人レベルであることなどから、死亡に至らせない(重篤化させない)ための適切な対策の実施が必要となります。具体的には…

当サイトの情報はそのすべてにおいてその正確性を保証するものではありません。当サイトのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、賠償責任を負いません。具体的な会計・税務判断をされる場合には、必ず公認会計士、税理士または税務署その他の専門家にご確認の上、行ってください。