お役立ちコラム

退職予定者の年次有給休暇の請求について

1か月後に退職する社員から、残っている年次有給休暇を使い切って退職したいため、明日から請求したいと申し出がありました。会社は、引き継ぎ業務が残っているため、出勤させたいと思っています。この場合、どうすればいいでしょうか?

労働基準法は、年次有給休暇を付与することは、会社の義務であり、これを拒むことはできません。

確かに、年次有給休暇の本来の趣旨は、継続的に勤務する労働者に、賃金を払いながら休暇を与え、心身のリフレッシュを図ってもらい、その後のモチベーションアップをするものなので、退職を前提とした今回のような取得請求は、労働契約上、権利の濫用にも考えられますが、違法とまでは言えません。

また、会社には、繁忙期等を理由に労働者に有給取得日を指定する「時季変更権」がありますが、他方、労働基準法の通達では、「労働基準法に基づくものである限り、当該労働者の解雇予定日を超えての時季変更権は行えないものと解する」としています。退職も同様に考えられ、結局、今回の場合は、労働者の主張を認めざるを得ないことになりそうです。

あとは、労働者の権利を尊重しつつ、引き継ぎ業務の履行の重要性など会社としての考えを明確にし、双方にとっての譲歩案を引き出せるよう、話し合いをしてみることをおすすめします。

 

関連コラム

障害者の法定雇用率 段階的な引き上げ決定
障害者の法定雇用率が段階的に引き上げられます。(令和6年4月以降)目次障害者の法定雇用率の段階的引き上げ常用雇用労働者、障害者のカウント方法除外率の引き下げ障害者雇用のための事業主支援1.障害者の法定雇用率の段階的引き上げ民間企業の法定雇用…
治療と仕事の両立支援を考えましょう
【会社が治療と仕事の両立支援を行う意義】「治療と仕事の両立支援」とは、病気を抱えながらも働く意欲・能力のある労働者が、仕事を理由として治療機会を逃すことなく、また、治療の必要性を理由として職業生活の継続を妨げられることなく、適切な治療を受け…
SDGs達成のために人事部門が取り組むべき施策とは?
ここ数年、ニュースなどで大々的に取り上げられることが多いSDGs、企業経営の中では避けては通れないテーマとなっています。その中で、人事労務担当者として自社のSDGsについて取り組む場合、具体的にどのように進めていけば良いでしょうか。17ある…
男女の賃金差異の公表が義務化されます!
令和4年7月8日に女性活躍推進法に関する制度改正がされ、情報公表項目に「男女の賃金の差異」を追加するともに、常時雇用する労働者が301人以上の一般事業主に対して、当該項目の公表が義務づけられることとなりました。【法改正の背景】日本における男…
社内だけでは済まされない!社外関係者とのハラスメント対策について
2019年5月、改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が成立しました。改正法は、大企業では2020年6月、中小企業では2022年4月から施行されています。パワハラ防止法において事業主に求められていることは、自社の雇用する労働者間にお…

当サイトの情報はそのすべてにおいてその正確性を保証するものではありません。当サイトのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、賠償責任を負いません。具体的な会計・税務判断をされる場合には、必ず公認会計士、税理士または税務署その他の専門家にご確認の上、行ってください。