お役立ちコラム

育児休業についてのQAいろいろ

 

育児休業は、社員が一定期間仕事を休業し、養育に専念できる制度です。法律上、育児休業給付金や社会保険料の免除などのサポートが充実していて、仕事と子育てがより良い関係を築いていくために、会社も対応が求められます。

今回は育児休業に関し、基本的事項のおさらいとレアケースを中心に疑問にお答えしていきましょう。

 

<産休、育休で必要になる社会保険上の手続は?>

 

産休と育休はどう違うのでしょうか? また、社会保険で必要な手続にはどんなものがあるでしょうか?

 

産前休業は出産予定日以前42日間(多胎妊娠の場合は98日間)、産後休業は出産翌日から56日間で、これらを合わせて産前産後休業(産休)といいます。予定日より後に出産した場合、その間の期間は産前休業に含まれます。それ以降は育休です。産休・育休で必要な手続は、以下のとおりです。

 

■ 健康保険から本人が受けられる給付

 

(1)出産手当金

産前産後休業期間について、1日あたり、支給開始前(12ヶ月)の平均標準報酬月額 ÷ 30日 × 2/3 の金額が支給されます。

なお、支給開始前の期間が12ヶ月に満たない場合は、次の1・2を比べて少ないほうの額を使用して計算します。

  1. 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
  2. 当該年度の前年度9月30日における、全ての被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額

 

(2)出産育児一時金

出産した場合(妊娠12週超の生産、早産、死産(流産)、人工妊娠中絶が含まれます)、1児毎に一律42万円(医療機関が産科医保障制度に加入していない場合または妊娠22週未満の場合、39万円)が支給されます。健康保険組合によっては付加給付が上乗せされて支給されます。

 

■ 健康保険料・厚生年金保険料の免除

育児休業期間中に限り、健康保険料・厚生年金保険料の支払が本人・会社とも免除されます。免除期間は、延長手続をすれば最長で子が3歳に達するまで続きます。

 

■ 雇用保険から本人が受けられる給付

育児休業給付金が支給されます。支給額は、支給対象期間(1か月)当たり、原則として休業開始時賃金日額×支給日数の67%(育児休業の開始から6か月経過後は50%)相当額です。

 

 

<育児休業中の従業員が第2子を妊娠した場合>

 

育児休業中の従業員が第2子を妊娠しました。社会保険の取扱はどのようになりますか?

 

育児休業期間中に次の子の産前産後休業が始まると、最初の子にかかる育児休業は自動的に終了します。社会保険の取扱はそれぞれ以下のようになります。

 

(1)第1子の育児休業中に第2子を妊娠し、産前休業の請求がある場合

第2子の産前休業開始日の前日をもって第1子の育児休業が終了します。

 

(2)第1子の育児休業中に第2子を出産し、産前休業の請求がない場合

第2子の出産日をもって第1子の育児休業が終了し、出産日の翌日より第2子にかかる産後休業が開始します。

 

■ 健康保険料・厚生年金保険料の免除

第1子の育児休業、第2子の産前産後休業ともに社会保険料は免除されますが、それぞれ「育児休業等終了届(※)」「産前産後休業取得者申出書」の提出が必要です。

※育児休業等終了予定年月日以前に産前産後休業を開始(「産前産後休業取得者申出書」を提出)した場合は、当該終了届の提出は不要です。

 

■ 出産手当金

第2子出産前に取得している休業が、第1子の育児休業か第2子の産前休業であるかを問わず、出産手当金の支給要件を満たしていれば、被保険者からの申請に基づき支給されることとなります。

 

■ 育児休業給付

第1子の育児休業が終了すると同時に、育児休業給付も支給終了します。

 

 

<一日だけ育休を取得する男性社員の取り扱い>

 

1日だけ育児休業を取得する男性社員がおります。社会保険の手続きをご教示ください。

(1)社会保険料は免除されますか?

(2)休業する1日分は無給ですが、育児休業給付金は支給されますか?

 

社会保険料の免除、育児休業給付金の支給の両方とも、男性・女性にかかわらず適用されます。それぞれの詳細は以下のとおりです。


(1)社会保険料の免除について

 

社会保険料の免除対象となるのは、育児休業等を開始した日の属する月分から育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月分までとなっています。

育児休業を1日だけ取得される場合は、上記から

  1. 月の途中で1日だけ休業する場合⇒保険料免除なし(免除対象となる月が存在しない)
  2. 月末日の1日だけ休業する場合⇒その月のみ保険料免除される

となります。

 

(2)育児休業給付金について

 

支給単位期間(休業開始日から起算して1ヶ月毎の期間)に休業終了日が含まれる場合は、全日休業が1日でもあれば支給されます。1日だけ育児休業を取得して無給となるケースはこれに該当します。ただし、 その育児休業日が会社の公休日と重なっている場合は支給対象となりませんので、ご注意ください。

 

 

<育児休業中の出勤について>

 

育児休業中は、社会保険料が免除になりますが、雇用保険料も免除になりますか?

 

社会保険料とは異なり、雇用保険は免除になりません。

育児休業中に賃金の支払いがなければ、雇用保険料の負担はありませんが、賃金の支払いがある場合は、雇用保険料の負担が必要になります。

 

 

<育児休業期間中の転籍について>

 

育児休業中は、社会保険料が免除になりますが、雇用保険料も免除になりますか?

 

社会保険料とは異なり、雇用保険は免除になりません。

育児休業中に賃金の支払いがなければ、雇用保険料の負担はありませんが、賃金の支払いがある場合は、雇用保険料の負担が必要になります。

 

 

<育児休業期間中の転籍について>

 

育児休業給付金を受給中の社員が転籍する事になりました。転籍先でも引き続き育児休業給付金を受給することが可能でしょうか?

 

転籍先で1日も間を空けずに雇用保険被保険者資格を取得し、引き続き育児休業を取得した後に復帰する予定であれば、引き続き育児休業給付金を受給することが可能です。

育児休業給付金申請書は、既に発行されているものがそのまま使用できます。事業所番号は転籍前の事業所のものになっていますが、問題ありません。

単位期間の途中で転籍となった場合、転籍前・後の期間について、それぞれの事業所で就業日数・就業時間・賃金額の証明を行う必要があります。申請先は、申請対象期間の最終日に属している事業所(転籍先)を管轄するハローワークとなります。

 

公開日:2017年01月16日

更新日:2019年07月23日

執筆者:染野

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