お役立ちコラム

退職所得控除額の計算方法の注意点-2回目の退職金の支給を受けた場合-

今回は、転職に伴い退職金の支給を複数回受けた場合の退職所得控除額について説明します。

 

■ 基本的な退職所得控除額の計算方法

 

退職所得の金額計算に必要な退職所得控除額は、退職金の支給を受けた会社での勤続年数に応じて次の算式により算定されます。

  • 勤続年数20年以下・・・40万円×勤続年数(1年未満切上)
  • 勤続年数20年超・・・・800万円+70万円×(勤続年数(1年未満切上)-20年)

 

基本の算式は上記となりますが、退職金が2回目である場合には、退職所得控除額の算定について一部注意が必要な場合があります。

 

 

■ 例外的な退職所得控除額の計算方法

 

ケースとしては多くはないと考えられますが、前年以前4年以内に前職の会社から退職金を受けており、かつ2社目の退職金の支給を受ける会社との勤続期間に重複がある場合は、重複している期間の勤続年数について調整(みなし重複期間)があり退職控除額を次のように計算します。

 

○[前職の退職金の収入額] >[前職の勤続期間に対する退職所得控除額] の場合

[新たな会社の勤続期間に対する退職所得控除額]-[重複期間を勤続年数とみなして計算した金額]


 

○[前職の退職金の収入額]<[前職の勤続期間に対する退職所得控除額] の場合

[新たな会社の勤続期間に対する退職所得控除額]-[みなし重複期間(※以下により調整)とみなして計算した金額]

※みなし重複期間の算式

前職の退職金額800万円以下・・・退職金額 ÷ 40万円

前職の退職金額800万円超・・・・(退職金額-800万円) ÷ 70万円 + 20

 

次からはQ&A方式による具体例を利用して、2回目の退職金の支給を受けた際の退職所得控除額の計算方法を確認します。

 

<事例1>5年以上前に一度退職金を受け取っており、今回が2回目の退職金受給となる場合の退職所得控除額の計算方法

 

A社に21年4ヶ月勤務(H1年4月~H22年7月)した後、B社に即転職、8年8ヶ月勤務(H22年8月~H31年3月)し、この度退職することになりました。 A社を退職する際に一度退職金を受け取っていますが、B社退職時に受け取る退職金の退職所得控除額はどのように計算されるのでしょうか?

 

今回B社から受け取る退職金がどの期間に基づいて計算されているかによって退職所得控除額が異なることになります。

 

(1)B社での勤務期間を基礎として退職金を計算している通常のケース

大抵の場合は、このケースが多いと考えられます。B社での勤務期間は8年8ヶ月ですので勤続年数は20年以下となり下記のように計算します。

 

B社の退職所得控除額:40万円 × 9年 = 360万円

 

(2)A社とB社、通算での勤務期間に基づいて退職金を計算するケース

A社とB社が同系列会社であるといった場合には、B社からの退職金の計算をA社での務期間も含めた通算期間に基づいて行っている場合があります。そういったケースでは、通算勤続期間により計算した退職所得控除額から、A社の退職金についての勤続期間により計算した退職所得控除額を控除します。控除後の残額が、B社退職時の退職所得控除額となります。

 

(イ)通算勤続期間(A社+B社=30年)により計算した退職所得控除額:

800万円 + 70万円 × (30年 - 20年) = 1,500万円

                                

(ロ)A社の勤続期間(21年4ヶ月)により計算した退職所得控除額:

800万円 + 70万円 × (21年(※注)- 20年) = 870万円

(※注:1年未満切捨)

 

(ハ)B社の退職所得控除額:(イ)1,500万円 - (ロ)870万円 = 630万円

 

 

<事例2>4年以内に一度退職金を受け取っており、今回が2回目の退職金受給となる場合の退職所得控除額の計算方法

 

A社に27年4ヶ月勤務(H1年4月~H28年7月)し、退職の際、退職金を受け取りました。また、B社に10年9ヶ月勤務(H20年7月~H31年3月)し、この度退職することになりました。

今回のB社退職時に受け取る退職金の退職所得控除額はどのように計算されるのでしょうか?

 

はじめに、B社から受け取る退職金の計算をA社での勤務期間も含めた通算期間に基づいて行う場合は、<事例1>をご参照ください。

 

計算期間を通算しておらず、前年以前4年内にA社から退職金を受けている場合、A社退職金に係る勤続期間と今回受け取るB社退職金に係る勤続期間とに重複期間があるかどうかによって、B社退職時の退職所得控除額は異なります。

 

(1)勤続期間に重複期間がないケース

参考までに今回のケースではありませんが、重複期間がない場合は次のようになります。

B社退職時の退職所得控除額:40万円  × 11年 = 440万円

 

(2)勤続期間に重複期間があるケース

今回はA社とB社は勤続期間に重複あります。そのため受け取るB社退職金にかかる勤続期間により計算した退職所得控除額(b)から、勤続期間が重複している部分の期間(1年未満切捨)を勤続年数とみなして計算した退職所得控除額(a)を控除した金額が、B社退職時の退職所得控除額となります。なお、(a)について、前回のA社退職金受取時の退職所得控除額に控除不足があれば、みなし重複期間により計算します。

 

具体的には次の様になります。

 

(イ)B社退職金にかかる勤続期間により計算した退職所得控除額(b)

40万円 × 11年 = 440万円

 

(ロ)前回のA社退職時の退職所得控除額

A社退職時の退職所得控除額:800万円 + 70万円 × (28年-20年) = 1,360万円

 

(ハ)最後に、前回のA社退職金とその控除額である上記②とを比較し、控除不足額の有無に応じて(a)を算出し、(b)から(a)を差引きます。

 

<A社退職金が、仮に1,500万円であった場合>

  • 1,500万円>1,360万円 ⇒ 控除不足なし、重複期間の調整不要
  • 重複期間:8年1ヵ月(H20年7月~H28年7月)
  • 重複期間に係る退職所得控除額:40万円 × 8年(※注)= 320万円・・・(a)
  • B社退職時の退職所得控除額(b)-(a):440万円 - 320万円 = 120万円

(※注:1年未満切捨)

 

<A社退職金が、仮に1,000万円であった場合>

  • 1,000万円<1,360万円 ⇒ 控除不足あり、重複期間の調整必要
  • みなし重複期間の算定

 

A社での勤務期間:

(1,000万円-800万円)÷70万円(注)+ 20年 = 22年

A社でのみなし勤務期間: H1年4月~H23年3月(22年)

みなし重複期間:2年9ヵ月(H20年7月~H23年3月)

 ・みなし重複期間に係る退職所得控除額:40万円×2年(注)=80万円・・・(a) 

 ・B社退職時の退職所得控除額(b)-(a):440万円-80万円=320万円

(※注:1年未満切捨)

 

<補足> 

退職所得控除の勤続年数の求め方は?

 

退職所得控除の計算の勤続年数の期間は、原則、退職金の支払者の下で退職の日まで引き続き勤務した期間となります。

長期の欠勤や病気での休職の期間も、勤続年数に含めます。

勤続年数の期間に1年に満たない端数があるときは、基本的には1年に切り上げます。

また、契約社員から正社員に切り替わった後、退職金を支給された場合、退職金の計算期間が正社員からの規定になっていた場合でも、退職所得控除の勤続年数は実際に勤務した年数となりますので、この場合、契約社員の時から退職日までの期間となります。

 

<参考文献等>

 

国税庁HP 

・タックスアンサー No.2732 退職手当等に対する源泉徴収

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2732.htm

 

・基本通達30-10 

前に勤務した期間を通算して支払われる退職手当等に係る勤続年数の計算規定を適用する場合

http://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/04.htm

 

所得税法 30条5項1号

所得税法施行令 70条1項1号

所得税法施行令 70条1項2号、2項

 

公開日:2017年11月20日

更新日:2019年07月26日

執筆者:高木(佳)

 

 

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