お役立ちコラム

社員の兼業を容認する際の注意点はなんでしょうか?

当社は製造業です。就業規則で従業員の兼業を禁止していましたが、不況により生活水準の低下を防ぐべく、兼業を容認することを検討しています。会社として「兼業」を認める際、どのようなことに留意すべきでしょうか。

注意すべき点として、下記のような点が挙げられると思います。

①移動中の災害

本業から兼業先、あるいは兼業から本業先への移動中の災害は労災保険の通勤災害が適用されることになるので、その場合の労災給付の平均賃金は移動先の会社を基に算出することになります。

②時間外労働

一日の労働時間は、通算して処理されることになります。例えば、本業で6時間勤務後に兼業先で3時間勤務した場合は、通算した9時間が本人の労働時間となり、法定労働時間を超えた1時間分の時間外手当を支払う必要があります。支払義務を負うのは、8時間を越える部分の勤務をした後で、勤務をさせた兼業先の企業になります。

③長時間労働による精神疾患等

兼業による長時間労働が原因として精神疾患等を発症することも考慮しなければなりません。労災の認定基準を上回る過重労働の最中に発症すれば業務起因性が認められ、労災扱いになる可能性が高くなります。この場合、本業か兼業先のどちらの平均賃金にて算出するのか明確な判断は公にされていませんが、労働時間の把握をし、業務の軽減措置を図らなかった双方に法的責任があると考えられます。

 

 このように兼業を認める際には上記のほかにも実務上の注意が必要になります。企業が兼業を認める際には、一定のルールを設けた上で規定を整備し、説明会等を開催し、周知した上で十分な管理を行うことが重要となってくるといえるでしょう。

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