お役立ちコラム

社員に対して過払していた手当は返還請求が可能か?

弊社は、賃金規程に18歳未満で、所得税法上の扶養対象となる家族を有する社員に扶養手当を支給する旨を規定しています。ところが、処理上のミスにより、18歳を過ぎても支給しており、本人も疑問を持つことなく、支給をうけていたとのことです。会社のミスとは言え、他の社員との不公平感を防ぐため、過払い分の手当についての返還請求をしたいのですが、可能でしょうか。

一般的に、労働契約に基づかない、受ける権利のない金銭が支払われた場合、返還請求をすることは可能といえます。

労働基準法には細かな規定はありませんが、民法703条の不当利得に該当し、正当な理由なく受けた利益については、受益者の善意、悪意を問わずに返還義務が生じるというものです。

上述より、今回のケースの場合、会社も労働者も気づかずに支払われていたものであったとしても、受ける権利のない手当を受けていた社員は会社へ過払い分を返還する義務が生じてきます。

この場合、会社が有する不当利得の返還請求権の消滅時効は、民法上の一般債権とされ、10年となります。いずれにしても、会社側が確認を失念していたという点、受け取った社員が認識していなかった=賃金規程や諸手当の基準についての社員への周知が徹底されていなかったという落ち度は否めないので、一方的な返還請求をするのではなく、充分な説明と、話し合いにより、無理のない解決をされることをお勧めします。

春は、卒業・就職等で、扶養家族の変更が多い時期です。健康保険上の扶養、税法上の扶養ともに、確認をされてはいかがでしょうか。

関連コラム

社会保険適用拡大のコストについて試算してみた
令和6年(2024年)10月から、短時間労働者の社会保険加入義務が、被保険者数101名以上の企業から、51名以上の企業へ拡大される。短時間労働者の社会保険の加入要件は次のとおりだ。・週の所定労働時間が20時間以上・所定内賃金が月額8.8万円…
年収の壁に関する5つの観点
年末調整の時期となり、扶養に関する年収の壁、という話題が多くなりましたが、住民税や社会保険を含めた、年収の壁を下記のように5つにまとめました。①住民税に関する壁(年収100万円前後)②所得税に関する壁(年収103万円)③社会保険に関する壁(…
エクスパッツの取扱について
エクスパッツについて気を付けるべきことを教えて下さい。
医師国保
医師国保に加入している者が、医師国保の資格を喪失するのは、どのような場合ですか?
家族のマイナンバー収集
従業員の家族のマイナンバーは収集しなくてはならないのでしょうか?収集時の注意点があれば教えてください。

当サイトの情報はそのすべてにおいてその正確性を保証するものではありません。当サイトのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、賠償責任を負いません。具体的な会計・税務判断をされる場合には、必ず公認会計士、税理士または税務署その他の専門家にご確認の上、行ってください。