お役立ちコラム

育児休業中に給与を満額支給した場合の世帯手取り額の違い

当社では子育て支援の一環として育児休業中に無給ではなく休業前の給与を満額支給しようと考えております。対象従業員の世帯収入は無給とする場合と比較してどのように変わるのでしょうか?

育児休業中に給与を満額支給した場合、以下の点で収入・支出が変わってきます。個別の事情によって具体的な金額は異なりますが、無給の場合と比較した世帯収入の増加額は支給した金額より少なくなります。

 

①育児休業給付金

 給与を満額支給した場合、以下の受給要件を満たさなくなるため育児休業給付金は受給することができません。

i)育児休業期間中の各1か月ごとに、休業開始前の1か月当たりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと

ii) 就業している日数が各支給単位期間(1か月ごとの期間。下図参照)ごとに10日(10日を超える場合にあっては、就業している時間が80時間)以下であること。(休業終了日が含まれる支給単位期間は、就業している日数が10日(10日を超える場合にあっては、就業している時間が80時間)以下であるとともに、休業日が1日以上あること。)

 育児休業給付金の支給額は、支給対象期間(1か月)当たり、原則として休業開始時賃金日額×支給日数の67%(育児休業の開始から6か月経過後は50%)相当額のため、給与を満額支給した方が収入金額は増えることになります。ただし、給与支給した場合には給与所得として課税される一方、育児休業給付金は非課税で所得税・住民税はかかりません。

 

②社会保険料の免除

 育児休業中の保険料の免除については、「育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等(育児休業及び育児休業に準じる休業)期間」について免除すると定められており、有給か無給かは要件になっていないため、有給であったとしても申出書を提出することにより免除を受けることが出来ます。社会保険料の控除がなくなるため、従業員にとっては育児休業前より手取り額が増える結果となります。

 

③配偶者の税扶養

 上記①の通り、事業主からの給与は課税されるのに対し、無給で育児休業給付を受けた場合は非課税となります。そのため、育児休業期間中に配偶者が配偶者控除を受けられるかどうかが変わる可能性があります。

 

④認可保育園の保育料

 認可保育園の保育料の計算方法は自治体ごとに若干異なりますが、基本的に世帯全員の合計所得をベースに算出されます。育児休業給付は非課税ですので合計所得に含まれないのに対し、給与を支給した場合は合計所得に含まれるため、保育園入園初年度の保育料が無給の場合より高くなります。

 

執筆者:中谷

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