お役立ちコラム

経営分析 会社の儲け具合を見る「収益性分析」

はじめに


今回の経理・会計・税務BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のコラムは、収益性分析についてです。

細部にわたって会社を分析し、会社の強みや弱みを客観的に把握するには、経営分析という手段をとることが非常に有用です、経営分析を実施し、他社の強みを把握することによって自分の会社の問題点をあぶりだし、これからどのような戦略を実施すべきか明らかになります。

本コラムでは会社の儲け具合を見る「収益性分析」について確認していきます。

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経営分析について



1.比率分析と実数分析


経営分析を行うにあたってその手法は、大きく「比率分析」と「実数分析」の二つに分けることができます。

比率分析とは、決算書などの数値から比率を算出して、検討する手法で、ある数値の全体の中に占める割合を計算する「構成比率分析」や、貸借対照表と損益計算書相互の比率といった関連した数値を分析する「相互比率分析」などがあります。

次に、実数分析とは、会社の実際の数値そのものを分析する手法で、一般的には、比較貸借対照表と比較損益計算書を作成する方法があります。決算書を2期並べて比較することはまさに実数分析にあたります。


2.経営分析に使用する資料


経営分析に使用する資料について、前提として分析をする人が分析対象会社の外部の人であるか、内部の人であるかによって、入手できる資料にも違いが出てきます。

外部の視点で分析するのであれば、外部分析となり、経営分析するための資料を入手するのは容易ではありません。

分析対象会社が上場企業の場合はインターネット上から有価証券報告書を入手して経営分析に使うことができます。

それに対して上場していない会社の場合は、決算報告書や附属明細書を入手するのがやっとだと思われます。入手出来る資料が限られているので部門別の分析などを行うことは難しいです。

次に内部分析を行う場合は、自社の資料ですので、資料を豊富に入手できます。

外部分析で入手できる資料に加えて部門別、商品別、担当者別等さまざまな切り口から資料が入手できるので、外部分析と比較してより深い分析ができます。

ただ、自社の内部分析はできたとしても同業他社と比較するといった場合においては、外部分析もしなければ比較はできません。

そのため、内部分析と同じ項目を比較したくてもできない場合が多いということを認識しておく必要があります。

収益性分析



1.売上高総利益


会社の稼ぐ力を見る収益性分析のはじめに登場するのが、「売上高総利益率」です。会社はどれだけ売り上げが増えても、利益が出なければ儲けているとは言えません。

売上高総利益率は、会社の粗利率を判断する指標で、売上総利益を売上高で割って求めます。

売上高総利益率は、会社が生み出す付加価値の割合を示しているので、高いほど望ましいです。そして、会社が創出している付加価値の高さを示す指標なので、非常に重要な指標の一つです。

特に同業他社と比較して低い場合は、自社にブランド力がなく、価格競争になった場合に企業体力が持たないことにもなりかねませんので、望ましくない状況です。

ただ、会社の企業戦略によっては、必ずしも高さを目指す必要はありません。例えば、競合を負かすために売価の圧倒的な低さを売りに販売攻勢をかけるケースがあります。

そのような場合は、売上高総利益率は低くなります。

また、売上総利益は会社の付加価値を意味しますので、それほど付加価値がないのに、あまりに高すぎると他の会社も儲かると思って、その業界に参入してくるかもしれません。

適正な付加価値を付けて売上高総利益率を向上させることが重要になってきます。

また、前年との対比で利益率が前年を上回っているかどうかや、同業他社との比較で利益率が上回っているかをチェックすることで、会社の状況を把握することも重要です。

売上高総利益率を上げていくことは重要なテーマですが、逆にその数値が下がっている場合は、①売上の単価が下がってきていないか、②商品・サービス構成や販売先の構成が変わってきていないか、③仕入れや生産コストが上昇しているのか、といった課題がないかどうかを確認しておきましょう。


2.自己資本利益率


会社がいかに効率的に資本を活用して利益を生み出しているかを見る指標のことを「資本利益率」といいます。

ここで、資本の活用とありますが、資本というのは会社に投入される資金のことをいい、銀行などのように外部から借りてきたお金(他人資本といいます。)と、株主から拠出されたお金(自己資本といいます。)の両方のことを指します。

資本利益率というのは、利益を資本の金額で割って算出しますが、誰の立場で考えるかで、「自己資本利益率(ROE)」と「総資本経常利益率(ROA)」とに区分されます。

自己資本利益率は、株主の立場で効率的に稼いでいるのかを見る指標です。別名としてROEReturn on Equity)ともいわれています。自己資本利益率は、株主から出資された元手に対してどの程度の利益を上げているかを測定するものなので、高ければ高いほど望ましいです。

株主が拠出した資本は自己資本ですから、自己資本を使ってどれだけの利益を生み出したかを株主の視点から考えます。

自己資本利益率は、税引後の当期利益を自己資本(決算書の純資産額)で割って算出します。株主の投下した資本を使ってどれだけの儲けを生み出したのかが、この指標の意味するところです。

上場企業において、2014年に経済産業省が発表した報告書(通称、伊藤レポート)において、最低8%のROEを企業は株主にコミットすべきと記載され、注目度は非常に高くなっています。

また、株主の中に外国人株主が増加しており、外国人株主が留意する指標であることも、意識されている要因のひとつです。

そのため、中期経営計画でROE10%以上にすることをうたっている企業も少なくありません。


3.総資本経常利益率


会社全体の立場から考えると投下した資本については、株主からの拠出である自己資本のみならず、銀行などからの借入である他人資本も含めた総資本で考える必要があります。

総資産というのは貸借対照表でいうと、他人資本に該当する負債の部と、自己資本に該当する純資産の部の合計をいいます。

会社全体の立場から算出される資本利益率は、「総資本経常利益率」といいますが、経常利益を総資本で割って計算します。

総資本経常利益率は別名ROAといいますが、Return On Assetsの略称です。

総資本経常利益率は、売上高経常利益率と総資本回転率に分解できます。

「総資本回転率」は、売上高を総資本で割って求められるものですが、会社に投入されたすべての資本が効率的に使われているかを見る指標です。

総資本回転率が高ければ高いほど、総資本が有効的に使われて売上高が上がっていると想定されます。

総資本回転率は、総資本の構成要素である売上債権や棚卸資産に従い、さらに「売上債権回転率」(売上高÷売上債権)や「棚卸資産回転率」(売上高÷棚卸資産)へ分解することができ、それぞれの構成要素の問題点を確認することが可能です。

おわりに


今回は会社の儲け具合を見る「収益性分析」について確認していきました。経営分析は万能ではありません。

経営分析という手法を使うにあたって、限界もありますので、その限界も知っておくことも重要です。本コラムがその理解の一助になれば幸いです。

この度は経理・会計・税務BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のコラムをお読みいただきありがとうございます。次回の経理・会計・税務コラムでまたお会いしましょう。

執筆者:藤田

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