お役立ちコラム
予算管理の策定、活用方法について
はじめに
今回の経理・会計・税務BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のコラムは、予算管理についてです。
「来期の予算を立てるので数値を積み上げて欲しい」、「予算と実績に乖離があるけど原因は何だろうか?」
予算について日常的に意識をせざるを得ない方は多いのではないのでしょうか。
予算は、会社経営上は目標として設定をしますが、上場企業では中期計画と称して投資家に3ヶ年計画を明示してそれをクリアすることを投資家に対して表明したりします。
上場をしていない会社であっても、来期1年の予算を策定して会社の経営計画発表会等で共有をして全社で目標達成に向けて行動している会社も多いです。
本コラムでは予算の設定方法や活用方法等について確認をしていきます。
予算の策定方法
1.社内公表予算と社外公表予算
予算を策定する前に、会社として予算の金額をふたつ持っているかどうかを確認する必要があります。 ふたつというのは、社外向けの予算と社内向けの予算の2種類です。 全ての会社がふたつの予算値を持っているわけではありませんが上場会社のように投資家等外部に数値を公表している会社は2種類の予算を持っているケースが多いです。
ひとつ目の社外向け予算とういのは株主等の投資家に対して約束をした数値で、達成することが必須の数値です。予算を達成できなければ株価が下がって時価総額が減少する事になりかねません。そのため必達するように月次で数字を追いかけていくことになります。
もうひとつの予算は社内向けに設定している予算で、ここまで達成したらうれしいという多少無理な面も含んでいる予算です。もちろん全く達成不可能な予算値を設定するケースはありませんが、社外に約束をしているものではないので、社外向けよりもやや高い数値を設定します。
つまり、前者の社外向け予算は必ず達成しなければならない予算で、後者の社内向け予算はこうなったらいいなという、多少願望も含めた達成する難易度が高い予算といえます。
ただ、このようなふたつの予算を、全ての会社が作成しているわけではありません。特に上場していない会社であれば予算値を一つしか設定していないケースの方が多いです。実務上も予算をふたつ持つと管理が二重になり煩雑になりますし、適正な予算値を策定しているのであればひとつの予算であっても十分に機能します。
2.上意下達か下意上達か
次に予算の策定の方法になります。まず作成の起点が誰かという視点で考えます。
ひとつは経営陣から下ろしていく上意下達のトップダウン型です。この場合には経営陣の方で予算的にありたい姿をまず決めます。具体的には「売上をいくらにしたい」、「その結果利益をいくら確保したい」というように経営陣からお達しのような形で決めていく方法です。
もうひとつは下意上達のボトムアップ型です。こちらの方は現場の方から達成しようと考えている売上や利益の数値を経営陣に提示していくやり方です。
それぞれ長所短所があります。
まずトップダウン型の場合には経営陣が考えている理想の形を数字で表したものとして提示されるので、会社の進むべき方向性と合致する事になります。そのため中・長期経営計画とも整合が取れ、全社一丸となって目標に向かう体制が構築しやすいです。
ただデメリットとして現場の状況を考えずに数字ありきで設定された場合、現実的ではない予算が設定されることになり、現場のモチベーションが下がる懸念があります。
対してボトムアップ型の場合、現場で予算を作成するので自分たちが設定した予算に対して責任感が強くなり、社員たちが他人事ではなく自分事として予算に対して接するようになることが大きなメリットです。
ただ、ボトムアップ型の場合のデメリットとして現場が考えるので、あまりチャレンジングな予算を設定する事が無く少し頑張れば達成できる程度の保守的な数字を設定してしまいがちです。
どちらも一長一短ありますが、実務的にはトップダウン的な要素とボトムアップ的な要素を組み合わせて予算の策定が行われるケースが多いです。
予算の活用方法
1.前期と当期の比較
予算は作成することが目的ではなく活用しなければ意味がありません。そのため、どのように活用していくのかということが策定後の課題です。
会社の実績数値は少なくとも月次ベースで集計します。そのため、予算の活用も月次単位で行うことが基本となります。
予算の活用の一番重要なテーマは、予算と実績の比較ですがその前に前期実績と当期実績の比較について触れます。
多くの会社で予算を策定する際に前期の実績をもとにします。そのため前期の実績を比較して、今期の実績がどのように推移しているのかを比較することになりますが、比較にあたっては損益計算書の勘定科目ごとに比較を行います。損益計算書では収益や費用が内容ごとに勘定科目というくくりで区分されて表示されます。
前期と当期を比較する場合にはこの勘定科目という収益や費用の分類ごとに比較を行います。
2.予算実績対比の実績
前期との分析を行った後に、予算と実績の比較をします。
予算の策定も基本的に損益計算書の勘定科目や補助科目レベルで設定をしますので、前期の比較と同様に勘定科目や補助科目レベルで比較をします。
予算を策定する時は一定の根拠でもって数値を算出します。そのため実績がでたら当初の仮説としての前提条件と、実績に何の乖離があったのかを分析することになります。
例えば売上に関していえば数量が予定通り販売できなかったのであれば価格の問題なのか、競合他社の動向なのか、あるいは提供している商品やサービスとマーケットのニーズが合っていないのかなどの原因を特定していくことが重要です。
3.年度見込の試算を行って再分析
予算と実績を月次レベルでタイムリーに行うことが予算管理の肝のひとつですが、年度の後半に入ってくると単純に実績と比較するだけでは足りません。年間の見込みと予算を比較することが必要になってきます。
期末時点で到達見込みと当初立てた年間予算との間に、どのような乖離が出そうかを確認するプロセスです。
社外向けの予算として外部に約束している予算と、実績の見込みを比較して、予算に到達しそうでない場合は何とか予算に達するように今まで策定したアクションプランの確実な実行や、それで足りないようであれば追加の施策を考えなければなりません。
おわりに
今回は予算管理についてその策定や活用方法について確認をしていきました。
予算については基本的にどの会社でも策定している物かと思いますので、その理解は非常に重要となります。本コラムがその理解の一助になれば幸いです。
この度は経理・会計・税務BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のコラムをお読みいただきありがとうございます。
次回の経理・会計・税務コラムでまたお会いしましょう。
執筆者:笠井
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