お役立ちコラム
令和6年税制改正大綱外形標準課税の改正について
はじめに
令和5年12月に令和6年度の税制改正大綱が発表されました。
今回はその中の外形標準課税の適用対象法人の改正について確認していきます。
外形標準課税は元々事業年度末日の資本金が1億円を超える法人に対して課されていました。
この要件は今後も残りますが、それ以外の場合にも今後外形標準課税の対象となる予定になっています。
改正の経緯や内容について事前にしっかりと把握しておきましょう。

外形標準課税の意義とこれまでの経緯
1.事業税
外形標準課税は事業税の一部です。
事業税には所得割に加え、外形標準課税である付加価値割や資本割があります。
所得割は所得が課税標準であるため、基本的に赤字であれば課税されません。
一方で付加価値割や資本割は付加価値額や資本金等の額が課税標準となるため、赤字であっても課税される点に特徴があります。
企業は事業を行うにあたって行政サービスを受けているはずであり、この行政サービスに対する税額は赤字であっても負担すべきといった考え方から外形標準課税が設けられています。
2.従来の対象法人
外形標準課税は資本金1億円超の法人を対象としていました。
資本金が1億円を超えるような法人はそれだけ事業規模が大きく、行政サービスを受けている量も大きいし税金を負担できる能力も高いと考えられることから赤字かどうかにかかわらず相応の負担を求める観点で設けられています。
3.外形標準課税の対象拡大
前述の通り外形標準課税の対象は資本金が1億円を超える法人です。
そのため、外形標準課税の対象から外れることを目的として資本金の額を1億円以下に設定したり、減資を行うことで課税を免れるといった事が起こりました。
これによって外形標準課税制度の意義、経緯、役割から見て、公平性・税収の安定性が損なわれる事態が懸念され、制度的な対応を検討することが必要とされ外形標準課税の対象拡大へと繋がっていくことになりました。
外形標準課税の改正内容
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改正前 |
改正後 |
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事業年度末の資本金の額が1億円を超える法人 |
事業年度末日の資本金が1億円を超える法人 |
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➀減資への対応 当事業年度の前事業年度に外形標準課税の対象であった法人であって、当該事業年度に資本金1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える法人 |
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②100%子法人等への対応 資本金と資本剰余金の合計が50億円を超える法人又は相互会社・外国相互会社の100%子法人等うち、当該事業年度の資本金が1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超える法人 |
➀減資への対応(令和7年4月1日以後に開始する事業年度より適用)
改正前に外形標準課税の対象外である法人については現行の基準(資本金1億円超)に該当しない限り引き続き外形標準課税の対象外となります。
また改正後に新設される法人についても現行基準に該当しない限り外形標準課税の対象外となります。ただし下記の要件を全て満たす場合には外形標準課税の対象となります。
ア) 前事業年度末の資本金が1億円を超える(前事業年度は外形標準課税の対象)
イ) 当該事業年度に資本金が1億円以下となる(減資)
ウ) 資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える
②100%子法人等への対応(令和8年4月1日以後開始する事業年度より適用)
資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える法人の100%子法人等は、資本金が1億円以下であっても資本金と資本剰余金が2億円を超える場合については外形標準課税の対象となります。
なお、公布日後に当該子法人が親法人に対して資本剰余金から配当を行った場合には、当該配当に相当する額を資本金と資本剰余金の合計額に加算して判定をすることになります。
要約すると下記の要件を全て満たす場合という事になります。
ア) 資本金と資本剰余金の合計が50億円を超える法人又は相互会社・外国相互会社の100%子法人等である
イ) 当該事業年度末の資本金の額が1億円以下である
ウ) 当該事業年度末の資本金と資本剰余金の合計(子法人が親法人に対して資本剰余金から配当を行った場合には当該配当額を加算)が2億円を超える
おわりに
今回は外形標準課税の改正について内容を確認していきました。
現行の要件は維持されたまま、新たに要件が追加されていますので外形標準課税の対象となる法人が増加することが想定されます。
外形標準課税は赤字であっても納税が必要となるものですので、今後自社が課税の対象となるかどうか事前にしっかりと確認をして把握しておくようにしましょう。
執筆者:笠井
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