お役立ちコラム

経営分析の8つの指標

はじめに


ここでは経営分析について考えてみます。

決算書の中身を理解した上で、会社の経営状態をチェックしていきます。

経営分析は、会社の強みや弱みを客観的に把握するために有効な手段です。

経営分析でできること


経営分析には大きく2つの方法があります。比較分析と実数分析です。

比較分析とは、決算書の数値から比率を算出して検討する方です。

具体的には、構成比率分析、相互比率分析、指数分析といったものがあります。

構成比率分析は、自己資本比率、売上高総利益率などがあります。

自己資本比率が高い場合には、一般的には負債が少ない状態を示し、財政面での健全性が高いことを示していると考えられます。

売上高総利益率が高い場合には、営業力の強さを示していると言えます。

相互比率分析には総資本経常利益率、流動比率などがあります。

総資本経常利益率はROAといわれるもので、のちに詳しく説明しますが、他人資本である借入金と株主からの拠出である自己資本を合わせた総資本から生み出す経常利益がどの程度であるかを見る指標です。

これが高ければ「効率的に稼いでいる」と見ることが出来ます。

流動比率はのちに出てきます「安全性分析」に使われる指標です。流動比率が高いと支払能力や資金余裕度が高いとみることが出来ます。

指数分析とは、ある期を100としてそれ以外の期の傾向値を算出する方法です。

経営分析をする上で会社の傾向をつかむためには、過去数年間の比較を行うことが有益です。

期により特殊な事情が発生する場合があるため、単に前期比較だけでは正しい分析ができないからです。

実数分析とは、会社の実際の数値を分析する方法です。

例えば、決算書2期を並べて比較するのがこの方法です。

実際の数値でそのまま増減を比較するので直感的でわかりやすく、どこに問題があるか分析し次の手を考えるといった手段、皆さんも通常使っていると思います。

それでは経営分析を判断するうえで、必要な視点とは何でしょうか。

それは主に4つあります。

収益性、安全性、成長性、生産性です。

収益性分析は利益を獲得する力、安全性分析は資金の余裕度、成長性分析は売上や利益の成長度合い、生産性分析は従業員の生み出す付加価値の状況を見ていきます。

また、経営分析は決算書に記載された項目や金額を使用するため、限界があるということを知っておかなければなりません。

数値により行う分析のため、経営者の資質や従業員の優秀さといった点を反映させることは出来ませんし、組織や商品構成の変化が頻繁に行われるような会社では、分析の中身が異なるため比較した結果をそのまま使うことが出来ません。

過去の決算書に基づいて比較する経営分析では、将来の予測に結びつけることが出来ないという点もあります。

収益性分析-売上高総利益率


売上総利益率は会社の粗利を判断する指標で、売上総利益を売上で割って求めます。売上総利益率は、会社が生み出す付加価値の割合を示しているので、高ければ高いほど良いです。

収益性分析-自己資本利益率(ROE)


自己資本利益率は、決算書の税引き後の当期利益を自己資本(純資産の部)で割れば算出できます。

株主の投資した資金を使ってどれだけ儲けを出したかがこの指標ですから、高ければ高いほど望ましい、ということになります。

安全性分析-流動比率


支払能力や資金の余裕度の分析を安全性分析といいます。まずは流動比率を見ます。

これで短期の支払い能力を分析します。

当然、流動資産が流動負債を上回っていないと、短期的な支払い能力が不足しているということになりますので、非常にまずいです。

理想的には流動比率は200%を超えていると良いといわれています。

安全性分析-固定比率


固定比率は、固定資産を自己資本(純資産)で割って算出されます。

この指標で、固定資産への投資を当面返済する必要のない自己資本でどの程度カバーしているかがわかります。

ですので、固定比率は100%未満であれば、固定資産への投資が、返済の必要がない自己資本の中でまかなわれていることになり、望ましいということになります。

ただし、長期的な資金で固定資産投資が賄われていればよいという観点もあり、その際に用いられる指標が固定長期適合率です。

これは、固定資産を、自己資本と固定負債の合計で割って算出します。固定長期適合率は、少なくとも100%を下回る状態にする、という点がポイントです。

固定長期適合率が100%を超えるということは、自己資本と固定負債で固定資産の投資がまかなえていない状況を示し、短期の債務である流動負債で固定資産投資をしていることとなり、返済スケジュールが厳しくなっていることが想定されることになります。

安全性分析-自己資本比率


自己資本比率は、自己資本を総資本(総資産)で割って算出します。

この比率は、総資本のうち自己資本の占める割合を示しますので、割合が高いほど健全な財務体質であることを示します。こ

の比率は30%以上が望ましいとされています。自己資本を挙げるためには3つの方法があります。

    01.増資をする

    02.利益を上げて内部留保を厚くする

    03.資産を売却する

の3つです。

①は第3者の増資をしてもらう、②は利益を出す、ということなのですが、③については、自己資本比率は、自己資本を総資本(総資産)で割って算出するため、総資産を増やしすぎないスリムな経営にすることで自己資本比率を上げることが出来る、ということです。

成長性分析-売上高増加率


売上高増加率は、当年度の売上高から前年度の売上高を差し引いた金額を、前年度の売上高で割って算出します。

しかし、売上だけ伸ばして利益がついてこなければ会社の体力はなくなってきます。

ですから利益の伸び率をみることも重要です。

当期の経常利益から前期の経常利益を差し引いた金額を、前期の経常利益で割って算出する経常利益上昇率でこれを確認します。

また、成長性分析をする際には、過去数年間の比較や競合他社との比較をすることも重要です。

生産性分析-労働生産性


労働生産性は、付加価値÷従業員数で算出されます。
そして付加価値を求める方法は2つあります。

一つは「控除法(中小企業庁方式)」で二つ目は「加算法(日銀方式)」です。

控除法による付加価値の算出方法は、売上から外部購入額を引いて求められます。
加算法による付加価値の算出方法は、経常利益+人件費+支払利息+賃借料+減価償却費+租税公課で求められます。

労働生産性を分解すると次の式になります。

労働生産性=(付加価値/売上高)×(売上高/従業員数)

これから見えることは、売上に占める付加価値を上げ、従業員一人一人が効率的に売上を上げるようになれば、労働生産性は上がるということです。

この数式をさらに分解すると次の数式になります。

労働生産性=(固定資産/従業員数)×(売上高/固定資産)×(付加価値/売上高)

(固定資産/従業員数)は労働装備率といい、これを高めるためには設備投資を行って人の作業を機械等に置き換える必要があります。

(売上高/固定資産)は固定資産回転率といい、これを高めるためには、設備投資を有効活用して効率的に売上を上げていく必要があります。

労働生産性が高まり、従業員の給料を上げることができれば、社員のモチベーションを上がりハッピーになれるのです。


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