お役立ちコラム

買掛債務管理

【購買業務の概要】


発注から代金支払いまでの流れを購買業務といいます。購買業務を管理する目的は、適正な品質のものを適正な価格で、必要な時期に購入することができる体制を整備することにあります。

この管理を徹底することで、企業はコストを管理し、利益を最大化することができるようになります。

【仕入計上基準】


仕入計上基準には次の2つがあります。

    01.納品基準

    02.検収基準


望ましいのは2の検収基準です。検収とは品質検査や動作確認等の作業をいいます。また、内部牽制の観点から、検収作業は発注担当者とは別の担当者が行う方がよいと考えられます。

【購買代金の決済手順】


購買代金の決済手順は以下のとおりです。

    01.請求内容の確認および債務計上

    02.支払依頼

    03.支払実行

    04.債務消込


請求内容の確認、債務計上については、数量、単価、金額等の内容を確認し、問題がなければ買掛金債務を計上する、といった業務になります。

支払依頼の注意点は二重払いの防止です。このためには支払依頼を行った請求書には支払い済印を押すなどしておくとよいでしょう。

支払実行の際には、内部統制を図るために、支払を実行する担当者と支払の承認をする担当者を別にし、支払先、支払金額に誤りのないようにしておくことが重要です。

債務消込については、支払い漏れがないかチェックできるよう、取引先別に管理し、債務残高と会計帳簿残高が一致していることを確認できるようにしておきます。

【債務残高管理】



1.債務残高の確認と管理


債務残高の確認で、見つかる主な誤りは次のようなものがあげられます。

    01.返品、値引きの手続き漏れ

    02.請求書の誤り

    03.会計処理の誤り

このような原因を追求し、残高を一致させていきます。


2.支払管理


資金繰の観点から、支払債務をどのように支払うかは重要です。決められた決済条件により支払われていないものや、長期に渡って未決済になっているものがないかどうか確認し、問題となっている未払いの債務がないか常に把握しなければなりません。

また、買掛金の残高確認の際、見積書は購入の事実を確認することができないため、証憑として適切ではありません。

【仕入値引き、仕入割戻し、仕入割引】



1.概要


仕入値引きとは、商品の品質不良や破損等の理由により販売代価から控除することをいいます。

仕入割戻しとは、一般的にはリベートと呼ばれているもので、購入実績に応じて一定の金銭を受け取ることをいいます。

仕入割引とは、受取利息に似ている性格のもので、支払期日よりも早期に支払いをした場合に、一定の金額が支払われるものをいいます。


2.計上時期の違い


仕入値引き、仕入割引については、値引き、割引が行われた事業年度で計上しますが、

仕入割戻しについては、少し注意が必要です。

購入日の属する事業年度、仕入割戻額の通知を受けた日の属する事業年度、実際に支払われた日の属する事業年度など契約内容により異なります。

計上する場合には、契約内容や値引き・割戻しの算定資料等を照合し、金額を確認することが大切です。


3.仕訳方法


値引きと割戻しの仕訳の仕方ですが、直接仕入高から控除してもよいし、「仕入値引き」勘定を使って間接的に控除してもどちらでもかまいません。


① 直接控除法

借方:買掛金*** /貸方:仕入高***


② 間接控除法

借方:買掛金*** /貸方:仕入値引き

損益計算書上の区分では、仕入、仕入値引き・割戻しについては、営業利益に含まれることになりますが、仕入割引については、上記に記載したように受取利息に似ているため、営業外収益に含まれることになります。

【残高管理】



1.在庫管理の必要性について


効率的な企業活動を行ううえでは、在庫管理という考えが必要不可欠です。在庫がないと注文が入ったときに即座に納品できないし、在庫が過剰にあると経営に支障をきたします。また、在庫管理には販売用のものとそれ以外のものについても管理が必要になってきます。

ここでは、販売用の在庫(棚卸資産)管理について確認していきます。


2.棚卸資産の管理方法


棚卸資産の管理方法には3つの方法があります。


① 現物管理

これは実際の数量を直接管理する方法です。入荷時には納品書と現物の確認、出荷時には

出荷伝票と現物の管理をして照合します。


② 帳簿管理

これは納品書、請求書、出庫伝票等の証憑に基づき、残高を管理する方法です。会計システムに、棚卸資産の入出庫の都度、記帳して反映させていきます。


③ 実地棚卸

これは事業年度終了時に実際の数量を数えて点検する手続きをいいます。企業によっては

毎月実地棚卸を行うこともあります。


3.実地棚卸


実地棚卸の目的としては、主に「数量の確定」と「在庫品質の確認」の2点あります。これにより、実際の数量を把握し、滞留品や不良品等の有無を確かめ、適切に評価するとともに帳簿残高と照合して実在する棚卸資産を確定させることになります。

実地棚卸の手順は、以下のようにして行います。

帳簿残高の確認→実地棚卸報告の確認→残高照合・検証→差異原因の究明→報告データの修正依頼→実地棚卸の報告

このようにして、帳簿残高と実地残高の差異を確認し、差異の原因究明をし、帳簿残高を実地残高に合わせます。


4.棚卸資産管理の意義


企業は棚卸資産を販売することにより収益を得ることができますが、棚卸資産を管理することにより、顧客に対してタイムリーに良好な品質を販売することができます。これは余分な経費を抑え、より大きな収益を得ることにつながります。

【受払管理】


1.内容

受払管理とは、ものの受入れ(仕入れ)、払出し(出庫)を把握し、数量と金額を管理することです。棚卸資産の受払管理は企業の在庫や収支に大きな影響を及ぼすので、適切な管理が必要になります。

2.意義

受払管理をきちんと行うことにより、以下のようなメリットが生じます。

    01.正確な棚卸資産の残高を把握することができる。

    02.適正な在庫水準を保つことができる。

    03.円滑な仕入れと販売活動を行うことができる。

【適正在庫】



1.概要


適正在庫とは、在庫することによるコストを最小限に抑え、品切れを起こさず、かつ過剰な在庫を持たない状態をいいます。

在庫が過剰な場合と過少な場合でどのようなメリット・デメリットがあるのか、考えてみましょう。

在庫が過剰な場合には、販売機会の損失を防ぐことができますが、保管費や処分代など余分な費用がかかったり、滞留による在庫の品質低下が起こります。

在庫が過少な場合は、滞留が起こらず、在庫品質の低下リスクを減らすことができ、管理費用が減少しますが、販売機会の損失を招いたり、単位当たりの仕入れコストが増加したり、発注回数が増加するという手間が増えてしまいます。


2.適正在庫の設定


適正在庫を設定するときは、①販売計画及び納入状況を確認し、②商品の特性について考慮する必要があります。

①については、品切れをおこさないための数量を把握することができ、②については、商品の特性を踏まえ、発注量を調整することにより仕入れコストを減少させることができます。


3.適正在庫の検証


適正在庫を保つためには、①数量面、②年齢面の2つから管理を行っていく必要があります。①については、事前に設定された基準の在庫数量と実際の在庫数量を確認することにより、超過原因の究明を行い、対応策を策定します。②については、在庫期間についてです。在庫の品質低下を防ぐため、在庫として残る期間について、基準と実際を比較し、超過していればその内容を確認し、原因究明を行い、対応策を策定します。

いずれも、市場動向の変化等に応じて基準の見直しを行うことが大切です。

以上、買掛債務の管理と在庫管理について考えてきました。適切な管理を行うことにより、効率的な企業活動を展開していきましょう。

執筆者:山梨


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