お役立ちコラム

税金が変わる!?不動産を売却した時のテクニック!

今回は個人の方が賃貸用不動産を譲渡したときに、会計処理方法により税金が安くなるかもしれないというお話です。

個人の方が賃貸用不動産を譲渡して売却益が出たときは、譲渡所得税の申告納付が必要となります。そして、譲渡所得に対する税金は、事業所得や不動産所得、給与所得などの所得と分離(分離課税)して計算することになります。譲渡所得に関する税率は長期間保有している場合(譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える土地や建物と売却した場合)は15%、所有期間が短期である場合は30%となります(復興特別所得税・住民税は別途生じます。)。

これに対して、賃貸用不動産の収益にかかる不動産所得の税率は、所得に応じて税率が増加する累進課税を採用しております。そうすると、不動産所得と譲渡所得の税率は異なることになりますので、譲渡所得と不動産所得のどちらの費用にするか選択できる場合には、税率が高い所得の費用とすることで税金を安くすることができます。

このようなどちらの費用にするか選択することができる費用として、「事業期間中に譲渡した賃貸用不動産の減価償却」があります。個人の減価償却はいわゆる「強制償却」とされていますので、必ず減価償却を行う必要があります。ただし、この強制償却は年間の計算を対象としており、年の中途で譲渡した場合に月数按分を強制されるということではございません。

このことが記載された所得税基本通達49-54には下記の通り記載されております。

「年の中途において、一の減価償却資産について譲渡があった場合におけるその年の当該減価償却資産の償却費の額については、当該譲渡の時における償却費の額を譲渡所得の金額の計算上控除する取得費に含めないで、その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入しても差し支えないものとする。(平13課個2-30、課資3-3、課法8-9追加)」

 

不動産の売却に関する譲渡所得税は多額に上ることも多いので、状況に応じて譲渡時までの月数に応じた減価償却費の計上を行うか否かを検討してみてください。上記の話は事業所得に関する事業用不動産でも同様となります。

会計処理により税金が増減する数少ない場面の一つとなりますので、是非ご記憶に留めて頂ければと思います。

 

<参考文献等>

国税庁HP タックスアンサー No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3202.htm

 

国税庁HP 償却累積額による償却費の特例及び堅牢な建物等の償却費の特例/その他/年の中途で譲渡した減価償却資産の償却費の計算

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/08/13.htm

 

 

執筆者:青木

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