お役立ちコラム

繰延税金負債の支払可能性がない場合とは?

当社は過去(3 年)及び当期のすべての事業年度において、重要な税務上の欠損金が生

じており、翌期においても重要な税務上の欠損金が生じることが見込まれため、繰延税金資産の回収可能性はないとして、繰延税金資産は計上しておりません。

 現状では翌期以降の業績の回復も見込まれないため、税金の支払もないと見込んでいます。

この場合、繰延税金負債の支払可能性はないと思われるため、繰延税金負債についても計上しなくて問題ないでしょうか。

 

税効果会計において、一時差異等に係る税金の額は、将来の会計期間において回収又は支払が見込まれない税金の額を控除し、繰延税金資産又は繰延税金負債として計上しなければならないとされております。(税効果会計基準 第二.二.1)

 このときに一時差異等に係る税金の支払が見込まれない場合の具体例として、日本公認会計士協会が公表している「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」24項において、「事業休止等により、会社が清算するまでに明らかに将来加算一時差異を上回る損失が発生し、課税所得が発生しないことが合理的に見込まれる場合に限られる。」とあります。

 このように繰延税金負債の支払可能性がない場合とはごく限定的なケースであり、単に税金の支払が見込まれないことをもって計上しないとすることはできないと考えらます。

 <参考文献等>

「税効果会計に係る会計基準」

http://www.fsa.go.jp/p_mof/singikai/kaikei/tosin/1a918b.htm

「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」

https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/zeikouka_2016_1.pdf

「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」

http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/101114_6.html

 

執筆者:小坂

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