お役立ちコラム

販売奨励金を支払った場合の消費税

1.はじめに

 

キックバックやリベートなど販売奨励金といった謝礼という内容の商慣習に対する消費税の取り扱いはどのようになっているのでしょうか。基本的な取り扱いから軽減税率との関連についても見ていきたいと思います。

 

 

2.販売奨励金を支払う場合

 

消費税法において、「売上げに係る対価の返還等」の範囲の中に「事業者が支払う販売奨励金等」というものがあります。

(国税庁HP  https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/14/01/01.htm

これによると、売上に係る対価の返還等の範囲に属する販売奨励金とは、「事業者が販売促進の目的で販売奨励金等の対象とされる課税資産の販売数量、販売高等に応じて取引先に対して金銭により支払う」ものとなっています。よって、販売数量、販売高等との対応関係が認められないような販売奨励金については、「売上に係る対価の返還等」には含まれませんので、注意が必要です。例えば、委託先の拡販のために経費を補填する場合などは、売上高の減額処理ではなく、販売促進費としての経費処理することが正しい方法と考えられます。

 

 

3.販売奨励金と交際費、その他の経費との関係

 

販売奨励金は内容によっては交際費とするか迷う場合があります。

租税特別措置法関係通達61の4(1)-3では次のように決められています。

「法人がその得意先である事業者に対し、売上高若しくは売掛金の回収高に比例して、又は売上高の一定額ごとに金銭で支出する売上割戻しの費用及びこれらの基準のほかに得意先の営業地域の特殊事情、協力度合い等を勘案して金銭で支出する費用は、交際費等に該当しないものとする。」

このように、売上割戻しに該当するような販売奨励金については交際費に含まれないとされています。

一方で、リベート取引としておこなわれるものでも、金銭に変えて一定の物品を交付する場合や得意先を旅行、観劇等に招待する場合、得意先の従業員等に対して個別に取引の謝礼として金銭を支出する場合など、税務上交際費に該当する場合もあります。(措置法基本通達61条の4(1)-4、61条の4(1)-15)

また、「販売奨励金」という内容の取引でも、売上に係る対価の返還等に該当しない販売奨励金については、単純に損金に該当するものもあります。販売代理店等の従業員の健康診断費用や特約店等の従業員を被保険者とする掛捨ての生命保険の保険料を負担した場合など(措通61の4(1)-7(注))がこれに該当します。

 

 

4.消費者に直接キャッシュバックを行った場合

 

事業者ではなく商品を購入した消費者に直接キャッシュバックを行う場合も考えられます。

このような場合でも消費税法上、「売上に係る対価の返還等」の取引に該当しますので、上記と同様の取扱いとなります。

(国税庁HP 消費者に対するキャッシュバックサービスの課税関係

 

 

5. 販売奨励金を受け取る場合

 

今度は商品を購入した事業者がその取引を行った後に、上記の販売奨励金を受け取った場合の消費税の取り扱いはどうでしょうか。消費税法32条では、仕入れに係る対価の返還等を受けた場合の処理は、課税期間において控除される課税仕入れ等の消費税額の合計額から課税仕入れに係る対価の返還等を受けた金額に係る消費税額の合計額を控除することとなっています。

それではどのようなものが、「仕入れに係る対価の返還等」に該当する販売奨励金となるのでしょうか。

消費税法基本通達12-1-2において「事業者が収受する販売奨励金等」とはどういったものかについての記載があります。ここにおいても、販売促進の目的で販売奨励金等の対象とされる課税資産の販売数量、販売高等に応じて取引先から金銭により支払いを受ける販売奨励金等であるかどうか、また、それが役務の提供や新たな資産の譲渡の対価としての性質を有していないかどうか、当該課税資産の仕入れに係る取引の対価と対応関係にあるかどうか、が重要とされています。

そしてこれらの条件に該当する場合には仕入代金の一部の返還とみなし得ると解釈され、仕入れ返還の処理をすることになります。

仕入れの対価との間に対応関係は認められないもので、役務の提供の対価として金銭を受け取った場合に該当するとみなされますと、課税資産の譲渡等の対価の額に当たるとされてしまいますので、注意が必要です。

(審判例:平17.3.22裁決、裁決事例集No.69 )

 

 

6.販売奨励金と軽減税率

 

販売奨励金にも対象となる取引には軽減税率が適用されることとなります。

上記で説明した、売上に係る対価の返還等又は仕入れに係る対価の返還等に該当する「販売奨励金」については、それぞれその対象となった課税資産の譲渡または課税仕入れの事実に基づいて適用される税率で判断することとなります。

つまり、売上の対価の返還等又は仕入れの対価の返還等の対象となった取引が「飲食料品の譲渡」であれば、軽減税率が適用されることになります。

消費税の軽減税率制度に関するQ&A )

 

 

7.売上に係る対価の返還等がある場合の請求書の記載

 

令和元年10月1日から令和5年9月30日までの間は、今までの請求書等保存方式を維持しつつ、区分経理に対応するための措置として「区分記載請求書等保温方式」が導入されます。

では、上記で記載した「販売奨励金」を支払う場合の請求書については、どのように規定されているのでしょうか。

国税庁が発表した「消費税の軽減税率制度に関するQ&A」によると、売上げに係る対価の返還等を行った場合や仕入れに係る対価の返還等を受けた場合、一定の事項が記載された請求書の保存はもとめられていないようですが、一定の事項を記載した帳簿を保存する必要があります。帳簿に記載する事項は、以下のとおりです。

 

<売上げに係る対価の返還等に該当する販売奨励金>

 

・売上に係る対価の返還等に係る課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及びその旨

・税率毎に区分した売上げに係る対価の返還等をした金額

 

<仕入れに係る対価の返還等に該当する販売奨励金>

 

・仕入れに係る対価の返還等が他の者から受けた軽減対象資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及びその旨

よって、販売奨励金の取引を記帳する場合には、これらの点を記載することを忘れないよう、注意が必要です。

 

 

8.類似するその他の取引について(報奨金)

 

販売奨励金が外部の取引先に支払うものであるのに対し、社内で功績のあった人に対して社内制度としての報奨金を支払う場合もあります。こういった場合に、消費税の課税関係はどのようになっているのでしょうか。

消費税法基本通達11-2-4によると、事業者が、業務上有益な発明、考案等をした自己の使用人等に支給する報償金、表彰金、賞金等の金銭のうち次に掲げる金銭については、課税仕入れに係る支払対価に該当する、とされています。

ただし注意が必要なのは、報奨金を受け取る側において、それが給与所得となるか、その他の所得(譲渡所得、雑所得、一時所得)となるかによって、消費税の課税関係も異なることとなるということです。支払った相手先である使用人側で、それが給与所得となるものについては、支払った会社側においても消費税は課税対象外となることとなります。

先ほどの消費税法基本通達11-2-4には、事務若しくは作業の合理化、製品の品質改良又は経費の節約等に寄与する工夫、考案等をした使用人等に支給する報奨金のうち、「特許又は実用新案登録若しくは意匠登録を受けるに至らないものに限り、その工夫、考案等がその者の通常の職務の範囲内の行為である場合を除く」とありますので、通常の職務の範囲内の行為であれば給与所得となり、会社側でも消費税課税関係は非課税の取り扱いをすることとなります。

 

 

9.おわりに

 

以上、主に販売奨励金の消費税の課税関係について、記載してきました。消費税については、課税売上げとするか、課税仕入れとするか、もしくは消費税対象外の取引となるのかにより収める税金の額が変わってきます。よって取引事実や内容をしっかりと吟味し、適切な税務処理となるよう注意していきたいと思います。

 

執筆者:山梨

 

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