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任意継続被保険者制度見直しについて解説します!

202211日より健康保険の任意継続被保険者制度が一部改正となります。
本コラムでは法改正の内容について解説してまいります。

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1.退職後の健康保険の選択肢は?

退職後の健康保険の選択肢としては、(1)任意継続制度、(2)国民健康保険、(3)家族の被扶養者、(4)特例退職被保険者制度の4つがあります。以下でそれぞれについて簡単に説明していきたいと思います。

(1)従来の任意継続制度

a)任意継続制度の加入要件

 任意継続制度とは資格喪失日の前日までに被保険者期間が継続して2か月以上ある場合に、加入できる制度です。任意継続制度に加入する場合は、資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に社員本人が在籍時に加入していた健康保険組合もしくは協会けんぽへ申請を行う必要があります。現在使用している保険証は会社に返却もしくは任意継続の申請書送付時に一旦返却し、任意継続制度への加入が認められると新たな保険証が発行されます。

b)任意継続制度の加入期間

任意継続被保険者の加入期間は以下の資格喪失原因(2)~(5)に該当する場合を除き、2年間です。なお、一旦加入すると国民健康保険や家族の被扶養者に任意に切り替えることはできません。

  1. 任意継続被保険者となった日から2年を経過したとき
  2. 保険料を納付期日までに納付しなかったとき
  3. 就職して他の健康保険に加入したとき
  4. 後期高齢者医療の被保険者資格を取得したとき
  5. 被保険者が死亡したとき

c)任意継続制度に加入した場合の保険料

保険料は退職時の標準報酬月額をベースに決定されます。在職時は会社が保険料を半分負担しており、退職後は本人が全額負担をするため、原則として保険料は在籍時の2倍になります。ただし、標準報酬月額には上限があるため、高額所得者については在籍時より保険料が低くなることがあります。

(2)国民健康保険に加入

a)国民健康保険の加入要件

 国民皆保険の日本では、国民健康保険の加入手続きは、社員が居住している各市区町村で行います。国民健康保険に加入する際には在職時の健康保険の健康保険資格喪失証明書を求められますので、喪失手続きを行う際に併せて資格喪失証明書の発行を依頼し、社員本人に交付します。

b)国民健康保険の加入期間

 後期高齢者医療制度や就職して健康保険に加入するなど、他の制度に加入するまで国民健康保険に加入することができます。

c)国民健康保険の保険料

 国民健康保険の保険料は前年の所得をベースに決定されます。具体的な金額は市町村や退職理由によって異なりますので、各市区町村に問い合わせる必要があります(最近は所得金額等を入力するとホームページ上で保険料額を算出できる市区町村もあります)。任意継続制度と異なり扶養という考え方がないため、扶養する親族がいる場合には扶養親族の分の保険料が上乗せされ、国民健康保険料の方が高くなるケースがあります。一般的には高額所得者及び扶養親族が多い方は任意継続制度、所得が多くない場合や解雇等の保険料が減免される退職理由で退職される場合には国民健康保険料が、社員本人の保険料負担が低くなるケースが多いです。

(3)家族の扶養に入る

a)家族の扶養に入る要件

 家族が加入している健康保険によって異なりますが、協会けんぽで被扶養者になる場合の要件は以下の通りです。なお、扶養の認定のために必要な書類は家族が加入している健康保険によって異なりますので、家族の会社の担当者へ確認する必要があります。

 1.被保険者である家族の収入により主として生計を維持していること

 2.年間収入130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は年間収入180万円未満)かつ

  同居の場合:収入が被保険者の半分未満

  別居の場合:被扶養者の収入が被保険者からの仕送り額未満

なお、収入とは過去における収入のことではなく、被扶養者に該当する時点以降の見込み額をいいます。

 3.3親等以内の親族もしくは内縁関係の配偶者の父母および子であること

なお、配偶者、直系尊属、子、孫、兄弟以外の3親等内の親族は同一世帯でなければなりません。

b)家族の扶養の加入期間

 他の健康保険制度に加入するまでは、上記要件を満たしている限り扶養に入ることができます。

c)家族の扶養に入る場合の保険料

 家族の扶養に入ると保険料はかかりませんので、社員の家計にとっては最も有利な選択肢です。ただし、上記の通り収入要件等がありますので年金額が多い場合などは扶養に入ることができません。

(4)特例退職被保険者制度

a)特例退職被保険者制度の加入要件

 特例退職被保険者制度とは、厚生労働省から「特定健康保険組合」の認可を受けた健康保険組合のみ実施できる制度です。加入期間が20年以上、40歳以降に10年~15年(健康保険組合によって異なる)ある、老齢厚生年金の受給権者となっていること、の全ての条件を満たしている場合、特例退職被保険者制度に加入することができます。老齢厚生年金の受給開始年齢があがっていることと、そもそも当該制度を導入している健康保険組合が少ないことから、対象者は非常に限定的です。

b)特例退職被保険者制度の加入期間

後期高齢者医療制度に加入する75歳に達するまで、特例退職被保険者制度に加入することができます。任意継続制度と異なり、2年間の制限はありません。

c)特例退職被保険者制度の保険料

 健康保険組合ごとに異なりますので、健康保険組合へご確認下さい。

2.今回の法改正の内容は?

 今回の法改正により上記任意継続の説明の部分赤字部分2点が以下のように変更となりました。

(1)任意の資格喪失

(保険料を納付しなければ実質任意の時期に資格喪失できるものの)従来は任意の資格喪失はできないこととなっていましたが、今回の法改正で申出により任意の時期に資格喪失が可能となりました。任意継続被保険者が、任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を保険者に申し出た場合には、その申出が受理された日(協会けんぽや健康保険組合の郵便受けに投函された日等)の属する月の翌月1日に任意継続被保険者の資格を喪失することとなります。なお、申出の際には以下の2点にご留意ください。

・申出書を受理した日の属する月も被保険者であるため、被保険者証については原則として申出書に添付しないこと(翌月1日以降に保険者が指定する方法(郵送等)で返却すること)

・原則として、申出後に取り消しはできないこと

(2)健康保険組合における任意継続被保険者の保険料の見直し

 任意継続被保険者の保険料の算定基礎は、「資格喪失時の標準報酬月額」又は「任意継続被保険者が属する保険者の管掌する全被保険者の平均の標準報酬月額」のいずれか少ない額とされています。しかし、今回の法改正により、これらに加え、健康保険組合が規約で定めることにより、「資格喪失時の標準報酬月額」又は「当該健康保険組合における全被保険者の平均標準報酬月額を超え、資格喪失時の標準報酬月額未満の範囲内において規約で定める額」を当該健康保険組合の任意継続被保険者の保険料算定基礎とすることが可能となります。仮に、全ての健保組合が保険料の算定基礎を従前の標準報酬月額とするなど一定の仮定をおいた場合、健保組合の保険料収入は約100億円の増(令和4年度)と試算されています。

3.今回の法改正でこんな場合はどうなる?

Q1. 任意継続被保険者が任意の資格喪失をする場合、その申出が受理された日の属する月の保険料は支払う必要がありますか?

A1. 任意継続被保険者の資格喪失日は保険者が申出書を受理した日の属する月の翌月1日となります。そのため、申出が受理された日の属する月は、任意継続被保険者となり保険料を納付する必要があります。例えば、3月5日に資格喪失の申出が受理された場合は、4月1日が資格喪失日となるため、3月分の保険料納付は必要となります。

Q2. 任意継続被保険者が任意の資格喪失の申出をしたが、申出のあった日が保険料納付期日の 10 日より前であり、当該月の保険料をまだ納付していなかった場合、資格喪失の取扱いはどうなりますか?

A2. 当該月の保険料を納付期日までに納付しなかった場合、喪失日は申出が受理された日の属する月の翌月1日ではなく、健保法第38条第3号の規定に基づき、当該月の保険料の納付期日の翌日となります。

Q3. 保険料の前納を行った任意継続被保険者についても、任意の資格喪失が可能ですか。可能である場合、前納した保険料の扱いはどうなりますか。

A3. 保険料の前納を行った任意継続被保険者についても、任意の資格喪失が可能です。 また、健康保険法施行令(大正 15 年勅令第 243 号)第 51 条では、前納に係る期間の経過前において任意継続被保険者がその資格を喪失した場合、前納した保険料のうち未経過期間に係るものを還付することとしており、任意の資格喪失をした場合にも、同様の取扱いとなります。

 退職後の健康保険についてはいくつかの選択肢があります。健康保険組合独自の給付がある場合もありますので、保険料や給付の内容を検討の上、ご自身にとって最適な制度を選択されることをお勧めします。


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【参考】

厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000739687.pdf

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T211115S0010.pdf

(執筆者:中谷)

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