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パワハラ対策の義務化

34482001_s.jpg2020年6月よりパワーハラスメント防止措置が事業主の義務となりした。

中小企業については2022年4月1日から義務化され、それまでの期間は努力義務となります。

 

これまでもパワハラに関しては職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループで議論されておりましたが、法律上のルールは存在しませんでした。

 しかしながら、2016年に厚生労働省が実施した各種アンケートでは、職場でパワハラを受けたという回答が約3割、都道府県労働局における「いじめ・嫌がらせ」の相談件数も2018年度には8万件を超えるという状況があり、対策の必要性が求められており、今回の法律制定に至りました。

 では、具体的にどの様な防止措置が求められているのでしょうか。目次に沿って、詳細を述べていきたいと思います。

 

目次

1.   パワーハラスメントの定義

2.   法律の条文の読解

3.   事業主が行う防止措置の具体的内容

 

1. パワーハラスメントの定義

 

 パワーハラスメントの定義を見ていきましょう。

職場におけるパワーハラスメントは、職場において⾏われる

(1)優越的な関係を背景とした⾔動であって、

(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、

(3)労働者の就業環境が害されるもの

 

であり、(1)から(3)までの3つの要素を全て満たすものをいいます。

なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で⾏われる適正な業務指⽰や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。

 

「職場」とは

事業主が雇⽤する労働者が業務を遂⾏する場所を指し、労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、労働者が業務を遂⾏する場所であれば「職場」に含まれます。

勤務時間外の「懇親の場」、社員寮や通勤中などであっても、実質上職務の延⻑と考えられるものは「職場」に該当しますが、その判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加や対応が強制的か任意かといったことを考慮して個別に⾏う必要があります。

 

「労働者」とは

正規雇⽤労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員などいわゆる非正規雇⽤労働者を含む、事業主が雇⽤する全ての労働者をいいます。

また、派遣労働者については、派遣元事業主のみならず、労働者派遣の役務の提供を受ける者(派遣先事業主)も、自ら雇⽤する労働者と同様に、措置を講ずる必要があります。

 

2. 法律の条文の読解

 新しい条文は以下です。


<労働施策総合推進法(抄)>

(雇用管理上の措置等)

第30条の2 事業主は、職場において⾏われる優越的な関係を背景とした⾔動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

2 事業主は、労働者が前項の相談を⾏ったこと⼜は事業主による当該相談への対応に協⼒した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。


 

 職場におけるパワーハラスメントについて事業主に防止措置を講じることを義務付けています。併せて、事業主に相談したこと等を理由とする不利益取扱いも禁止されています。

 

3. 事業主が行う防止措置の具体的内容

 法律が求める「雇用管理上必要な措置」とは具体的にどの様な事を行うのでしょうか。

 

 事業主が雇用管理上講ずべき措置として、主に以下の措置が厚生労働大臣の指針に定められています。事業主は、これらの措置について必ず講じなければなりません。

なお、派遣労働者に対しては、派遣元のみならず、派遣先事業主も措置を講じなければな

らないことにご注意ください。

 

◆事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

(1)職場におけるパワハラの内容 ・ パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し 、

労働者に周知・啓発すること

(2)行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること

 

◆相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

(3)相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること

(4)相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること

 

◆職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

(5)事実関係を迅速かつ正確に確認すること

(6)速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと

(7)事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと

(8)再発防止に向けた措置を講ずること

※(6)は事実確認ができた場合のみ実施、(7)及び(8)は事実確認ができた場合でもできなかった場合でも実施しなければなりません

 

◆そのほか併せて講ずべき措置

(9)相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること

(10)相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

 

法制化を受け、やむを得ず実施される措置もあるかとは思いますが、適正に実施する事が、働く労働者の労務トラブルの未然防止や軽減に繋がり、そして労働者も安心して働ける事で、余計なストレスを感じる事なく、ご自身の最良のパフォーマンスを発揮出来る様になると思われます。今回の法改正を良い機会と捉えて、是非積極的な施策を実施して頂ければと思います。本コラムがその一助となれば幸いです。

 

(引用元:厚生労働省HP)

 

(執筆者:緒方)

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