お役立ちコラム
不注意で紛失した鍵の代金は賃金から控除できますか?
-
数店舗の飲食店を経営しています。先日、その1店舗の従業員が、酔って店の鍵を紛失しました。盗難等の犯罪に対応するため、その店の鍵を交換することにしました。
その際の交換費用は、紛失した従業員の給与から天引きをしたいと考えていますが、この場合、認められますか? -
労働基準法では、賃金について「その全額を支払わなければならない」と定めています。
よって、社会保険や所得税などの法定控除のほか、親睦会費、社宅費、組合費など「賃金の控除協定」で定めた以外のものを賃金から控除することは認めていません。
ですから、使用者が労働者に債権を有しているからの理由で、一方的に賃金の一部を相殺して支払いしないことは許されません。これについて、最高裁も「労働者の賃金債権に対しては、使用者は、使用者の労働者に対して有する債権をもって相殺することは許さない・・・。このことは、その債権が不法行為を原因としたものであっても変わりはない」としています(日本勧業経済会事件 最高裁 昭36.5.31)。
しかし、実際に故意又は過失によって権利の侵害を受けた場合には、現実に生じた損害について賠償を請求することは禁止されていませんから、会社が、賃金を全額支払いした上で、別途、鍵の交換費用を請求しても問題はありません。
ただし、その場合であっても、損害を従業員だけに負担させるのは公平に反しますので、従業員の過失の大小、会社の管理責任上の過失など、諸般の事情を考慮して損害額を決めるべきでしょう。
関連コラム
- 障害者の法定雇用率 段階的な引き上げ決定
- 障害者の法定雇用率が段階的に引き上げられます。(令和6年4月以降)目次障害者の法定雇用率の段階的引き上げ常用雇用労働者、障害者のカウント方法除外率の引き下げ障害者雇用のための事業主支援1.障害者の法定雇用率の段階的引き上げ民間企業の法定雇用…
- 治療と仕事の両立支援を考えましょう
- 【会社が治療と仕事の両立支援を行う意義】「治療と仕事の両立支援」とは、病気を抱えながらも働く意欲・能力のある労働者が、仕事を理由として治療機会を逃すことなく、また、治療の必要性を理由として職業生活の継続を妨げられることなく、適切な治療を受け…
- SDGs達成のために人事部門が取り組むべき施策とは?
- ここ数年、ニュースなどで大々的に取り上げられることが多いSDGs、企業経営の中では避けては通れないテーマとなっています。その中で、人事労務担当者として自社のSDGsについて取り組む場合、具体的にどのように進めていけば良いでしょうか。17ある…
- 男女の賃金差異の公表が義務化されます!
- 令和4年7月8日に女性活躍推進法に関する制度改正がされ、情報公表項目に「男女の賃金の差異」を追加するともに、常時雇用する労働者が301人以上の一般事業主に対して、当該項目の公表が義務づけられることとなりました。【法改正の背景】日本における男…
- 社内だけでは済まされない!社外関係者とのハラスメント対策について
- 2019年5月、改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)が成立しました。改正法は、大企業では2020年6月、中小企業では2022年4月から施行されています。パワハラ防止法において事業主に求められていることは、自社の雇用する労働者間にお…
当サイトの情報はそのすべてにおいてその正確性を保証するものではありません。当サイトのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、賠償責任を負いません。具体的な会計・税務判断をされる場合には、必ず公認会計士、税理士または税務署その他の専門家にご確認の上、行ってください。