お役立ちコラム

令和7年税制改正大綱所得税基礎控除や給与所得控除の見直し

はじめに


 今回の経理・会計・税務BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のコラムは、令和7年税制改正大綱所得税基礎控除や給与所得控除の見直しについてです。

令和612月に令和7年度の税制改正大綱が発表されました。

今回はその中で個人所得課税の改正について基礎控除や給与所得控除の見直し、特定親族特別控除(仮称)の創設について確認していきます。

これらは個人の方ならば影響を受ける場合が多く、かなり身近な改正となっていますので、今後の動向も含め関心を持っていただけますと幸いです。

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基礎控除・給与所得控除の見直し



1.基礎控除


物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除の控除額及び給与所得控除の最低保障額の引上について言及されました。

これにより基礎控除について、合計所得金額が 2,350 万円以下である個人の控除額が10万円引き上げられています。

現行

合計所得金額

基礎控除

2,400万円以下

48万円

2,400万円超 2,450万円以下

32万円

2,450万円超 2,500万円以下

16万円

2,500万円超

-

令和7年分以後

合計所得金額

基礎控除

2,350万円以下

58万円

2,350万円を超え 2,400万円以下

48万円

2,400万円を超え 2,450万円以下

32万円

2,450万円を超え 2,500万円以下

16万円

2,500万円超

-


2.給与所得控除


給与所得控除については55万円の最低保障額が65万円に引き上げられます。

これまで所得税が発生することとなるいわゆる「103万円の壁」 (基礎控除48万円+給与所得控除55万円=103万円) というのもがありましたが、今回の改正により「103万円の壁」は「123万円の壁」(基礎控除58万円+給与所得控除65万円=123万円)となる事になります。

令和61211日に「103万円の壁」は178万円を目指して来年より引き上げるという自民党、公明党及び国民民主党の幹事長間での合意があり話題となりましたが、今回の税制改正大綱では123万円となるという事になりました。

ただし税制改正大綱には「上記の各項目の具体的な実施方法等については、引き続き関係者間で誠実に協議を進める。」とも記載され、今後の動向を注視していく必要がありそうです。

特定親族特別控除(仮称)の創設



3.特定親族特別控除(仮称)


 現状1922歳の扶養親族がいる場合、63万円の所得控除が認められています。

ただし控除を受ける為にはいくつか条件があり、その中の一つにその親族の年間の合計所得が48万円以下(給与のみの場合には給与収入103万円以下)というものがあります。

48万円以下の要件については、基礎控除等の見直しに伴い今後58万円以下に引き上げられはしますが、現下の厳しい人手不足の状況において、特に大学生のアルバイトの就業調整について、税制が一因となっているとの指摘があり、19歳から22歳までの大学生年代の子供等の合計所得金額が85万円(給与収入150万円に相当)までは、親族が特定扶養控除と同額(63万円)の所得控除を受けられ、また大学年代の子等の合計所得金額が85万円を超えた場合でも親等が受けられる控除の額が段階的に低減される仕組みが導入される事となりました。

居住者が生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族等(その居住者の配偶者及び青色事業専従者等を除くものとし、合計所得金額が123万円以下であるものに限る。) で控除対象扶養親族に該当しないものを有する場合には、その居住者のその年分の総所得金額等から下の表の通り控除することが出来ます。

親族等の合計所得金額

控除額

58万円超85万円以下

63万円

85万円超90万円以下

61万円

90万円超95万円以下

51万円

95万円超100万円以下

41万円

100万円超105万円以下

31万円

105万円超110万円以下

21万円

110万円超115万円以下

11万円

115万円超120万円以下

6万円

120万円超123万円以下

3万円

おわりに


 今回は基礎控除や給与所得控除等を中心に令和7年度税制改正大綱で改正のあった箇所を確認していきました。

現状税額に与える影響はそこまで大きくありませんが、特定親族特別控除(仮称)については所得金額次第ですが控除額が大きくなる可能性があります。

今回の改正は多くの方々にとって非常に身近なものとなっておりますのでこれを機会にぜひご確認下さい。

経理・会計・税務BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のコラムをお読みいただきありがとうございます。次回のコラムでまたお会いしましょう。

執筆者:笠井


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