お役立ちコラム
海外子会社の設立費用等の損金扱いについて
-
海外子会社設立時の費用等を親会社が支払う場合と海外子会社で支払う場合での税務上・会計上の留意点を教えてください。
-
会計の観点からは、その費用をどちらが支払っても、入出金等の事実を各社が記帳している限り、特段の留意事項はないものと考えております。
しかし、税務の観点からは、その費用が親会社か海外子会社のどちらが負担すべきものかという点によって、損金算入可否の判断が変わってきますので注意が必要です。具体的には海外子会社が負担すべき費用を親会社が負担してしまうと、親会社から海外子会社への寄附金と認定されるリスクがあります。なお、仮に寄附金認定された場合には、国外関連者への寄附金として全額損金不算入の扱いとなります。
どちらの会社が負担すべきかという線引きについては、一般には、子会社設立前の費用(各種現地調査費用、設立に際しての現地弁護士法人や会計事務所等へ支払う報酬、設立のための出張費用等)は親会社の全体的な戦略の下、その必要性に基づいて行われるため、親会社が負担することに大きな問題は生じないものと考えております。対して、子会社設立後の費用(子会社業務のサポートや各種管理業務のための出張費用や、会社運営のための必要経費)については、親会社と海外子会社でどちらの負担とすべきか区分する必要が生じるものと思います。
以上より、ご質問の費用については、内容によっては親会社の申告上損金否認のリスクがあります。明確に否認される項目が列挙されているわけではないので、個別の内容ごとに判断を伴うものとなりますが、親会社が費用負担をすることには税務上のリスクが伴うこと、ご留意いただければと思います。
参考文献:「海外進出・展開・撤退の会計・税務Q&A」(著者:佐和周)
関連コラム
- 企業版ふるさと納税の延長とその概要
- はじめに今回の経理・会計・税務BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のコラムは、企業版ふるさと納税の延長とその概要についてです。令和7年度税制改正大綱により企業版ふるさと納税の適用期限3年間延長が発表され、令和10年3月31日までの…
- 法人税に関する改正措置について
- はじめに 今回の経理・会計・税務BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のコラムは、法人税の改正措置についてです。1.法人税に関する改正措置とは「令和7年度税制改正大綱」で法人税に係る措置として、中小法人の軽減税率の見直し及び防衛特別…
- 税務会計とは
- はじめに今回の経理・会計・税務BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のコラムは、税務会計についてです。1.所得と利益の違い会計の話をする際に避けて通れないのが、税金についての話です。なかでも、会社を運営していると支払わなければならな…
- 償却資産税の期限はあっという間
- はじめに今回の経理・会計・税務BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のコラムは、償却資産税についてです。償却資産税は償却資産に係る固定資産税の通称であり、償却資産とは、土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産で、その減価償…
- 賃上げ促進税制の改正について
- はじめに 令和6年度税制改正大綱にて賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を緩和し、物価上昇を十分に超える持続的な賃上げが行われる経済の実現を目指す等の観点から賃上げ促進税制の強化が行われました。この中で特に大きな改正点として5年間の…
当サイトの情報はそのすべてにおいてその正確性を保証するものではありません。当サイトのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、賠償責任を負いません。具体的な会計・税務判断をされる場合には、必ず公認会計士、税理士または税務署その他の専門家にご確認の上、行ってください。
