お役立ちコラム

居住用財産の見込み取得について

3人いた子供たちが皆独立したので、現在住んでいる家を売却して、小さめの家を買うことにしました。今の家はバブル全盛のときに購入したため、売却したときに多額の譲渡損(約1,000万円)がでる見込みです。ただ、それでもまだましな条件で売れることが分かったので、取り合えず売ることにしました。一方、新たに住む予定の家屋は現在売主と交渉中で、来年の取得となりそうです。確か、自宅の売却損は、給与所得(毎年約1,000万円)から控除できると聞いたのですが、売る年と買う年が違っていても適用できますか?

居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算の対象となる買換資産(新たな居宅)は、譲渡資産(売却した居宅)の譲渡年の翌年見込み取得が認められています。つまり、売却年度において新たに取得する居宅の取得価額等が確定していない場合でも、確定申告によりこの特例の適用を受けることが出来ます。従いまして、その損失を譲渡年の給与所得から控除することが可能で、結果的に納税は不要(給与に対する源泉税等の還付)となります。

 

但し、見込み取得とした場合の注意点として、譲渡年の翌年末までに要件を満たしている必要があります。例えば、交渉がもつれて翌年中に購入できなかったり、新居宅について償還期間10年以上の住宅ローンを組めなかった、購入できたはよいが居住の用に供していないというようなケースです。この場合には、翌々年の4月30日までに、本年分の確定申告書を譲渡損の損益通算しなかったものとして計算する修正申告書の提出及び増額した税額の追加納税が必要となります。なお、通常修正申告の場合には、延滞税や過少申告加算税が課せされますが、見込み取得したことによる修正申告については、延滞税や過少申告加算税は課せられず、増額した税額の納税のみで済みます。

 

なお、新たに購入した居宅の取得価額が、確定申告書に記載した取得価額と異なることとなった場合には、同じく修正申告書等の提出が必要となります。具体的には、新居宅の取得価額が取得価額に見積額に満たない場合には、修正申告書の提出が必要となり、取得価額の見積額を超える場合には、更正の請求をすることが出来ます。

また、適用にあたっては、以下のような諸々の要件がありますので、ご注意下さい。

1.譲渡した家屋を譲渡年の1月1日において5年を超えて所有していたこと

2.譲渡した相手が親族等特別の関係のある者でないこと

3.新居宅の床面積が50平米以上であること

4.新居宅について償還期間10年以上の住宅ローンを有すること など

参考条文

国税庁HP

タックスアンサーNo.3370 マイホームを買換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)

http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3370.htm

タックスアンサーNo.3383 マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除を適用した後の修正申告

http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3383.htm

関連コラム

副業収入の確定申告
【はじめに】今回の経理・会計・税務BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のコラムは、副業収入の確定申告です。近年、働き方の多様化により、副業を持つ人が増加しています。しかし、会社員として年末調整を受けている方にとって、副業収入がある…
令和7年税制改正大綱所得税基礎控除や給与所得控除の見直し
はじめに 今回の経理・会計・税務BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)のコラムは、令和7年税制改正大綱所得税基礎控除や給与所得控除の見直しについてです。令和6年12月に令和7年度の税制改正大綱が発表されました。今回はその中で個人所得…
外国子会社合算税制(CFC税制)-令和6年度税制改正大綱-
はじめにみずほ銀行がCFC税制の適用を巡り課税処分を争った事案が、昨年秋、最高裁にて結審しました。注目を集めたCFC税制について、令和6年度改正ポイントを解説します。1.CFC税制とは?CFC税制は、諸外国の例に倣い昭和53年日本にも導入さ…
令和5年分以降の財産債務調書の見直し
【はじめに】 令和5年分より財産債務調書制度の見直しが行われますが、そもそも財産債務調書制度をご存じでしょうか。財産債務調査制度は税金申告の適正性を確保する観点から、平成27年度の税制改正によって創設されました。一定の要件を満たす者に対して…
退職所得課税の見直しについて
はじめに令和5年4月岸田総理大臣を議長とする第16回新しい資本主義実現会議が開催され、その中で退職所得課税制度の見直しも議論がされました。退職金は、長年の勤労に対する報償的給与として一時に支払われるものであることなどから、退職所得控除を設け…

当サイトの情報はそのすべてにおいてその正確性を保証するものではありません。当サイトのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、賠償責任を負いません。具体的な会計・税務判断をされる場合には、必ず公認会計士、税理士または税務署その他の専門家にご確認の上、行ってください。