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源泉所得税の「納期の特例」総まとめ!

■ 源泉所得税の納付

 

自社の従業員に給料を支払うときや弁護士、税理士等に報酬を支払うときには報酬額から源泉所得税を控除して、その控除した源泉所得税を税務署に納める必要があります。この源泉所得税の納付期限は原則として、支払をした月の翌月10日までとなっています。したがって、毎月給料や報酬の支払いがある場合は毎月源泉所得税を納付しなければならないとういうことになります。

 

もしも源泉所得税が納期限までに完納されなかった場合にはその税額の10%の不納付加算税が徴収(5,000円未満は不徴収。)されます。ただし、自発的に納付し、税務調査等により指摘があることを予知して納付されたものでない場合には5%となります。また、納期限の翌日から納付日までの日数に応じて延滞税を納付しなければなりません。なお、不納付加算税や延滞税は所得計算上損金不算入となります。

 

 

■ 納期の特例

小規模な事業者の事務負担を軽減するという観点から源泉所得税の納期の特例が設けられています。この特例を適用すれば、毎月納付しなければならない源泉所得税の納付を年2回の納付のみとすることができます。

対象期間 納期限
1月1日から6月30日 7月10日
7月1日から12月31日   1月20日

 

この適用が受けられるのは給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者です。常時10人以上というのは平常の状態の人数が10人未満かどうかで判定します。したがって、繁忙期のみ臨時にアルバイト等を雇用しているような場合は特例の適用を受けることができます。ただし、建設業者のように日雇労働者を日々雇い入れることが常態となっている場合はその日雇労働者の数を加えて人数の判定をしなければなりません。(所得税法基本通達216-1https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/38/01.htm#a-01

また、この特例の適用を受けるためには、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を税務署に提出する必要があります。

 

 

■ 適用を受けられるのはいつから?

 

申請書の提出をすると税務署長から承認又は却下の通知がされます。申請書を提出した日の属する月の翌月末日までに税務署長から承認又は却下の通知がない場合には、その申請月の翌月末日において承認があったものとされ、申請月の翌々月の納付分からこの特例が適用されます。

 

 例)申請書を提出した月が2月中の場合

2月支給分の給与等は3月10日まで、3月から6月支給分の給与等は7月10日までに納付することになります。2月支給分の源泉所得税を納付しなかった場合は不納付加算税や延滞税が発生してしまいますので、届出してすぐはいつから特例の適用が受けられるのか注意する必要があります。

 

 

■ 納期の特例の対象とならないもの

 

納期の特例の対象となるのは次の支払いに係る源泉所得税に限られています。

(1)給与等及び退職手当等

(2)弁護士、税理士、司法書士、社会保険労務士など、特定の資格を持つ人に支払う報酬・料金

 

したがって、上記以外の原稿料や講演料、デザイン料、モデル料などに係る源泉所得税は納期の特例の適用がないため支払月の翌月10日までに納付をしなければなりません。

 

 

■ 適用をやめるとき

 

給与の支給人員が常時10人未満で亡くなったときは納期の特例が受けられなくなるので「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を税務署に提出します。

また、半年に1回まとめて納付するので金額が大きくなり1回の納付の資金負担が大きくなるのを避けたいという理由や半年に1回のことなので納付を忘れてしまうリスクを避けたいという理由で自ら納期の特例の適用をやめようとする場合も「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を税務署に提出します。毎月納付の場合より納付額が大きくなるため、納期の特例で納付を忘れてしまうと不納付加算税を課される可能性が高くなります。

 

 

■ 毎月納付もOK

 

半年に1回だと期間が長すぎるのでもっと短いスパンで納付をしたいという場合は、上記の「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を提出しなくても毎月納付をすることができます。なお、納期限の期間内であればいつ納付しても良いので毎月ではなく、2か月ごと、3か月等の期間で納付することもできます。この場合には特に届出等は不要です。

 

 

■ 住民税の納期の特例

 

源泉所得税の納期の特例についてご紹介してきましたが、従業員の給料から源泉徴収する住民税についても納期の特例があります。

 

<適用要件>

源泉所得税とほぼ同じ要件となります。

・給与の支払を受ける者の人数が常時10人未満であること

・住民税の滞納がないこと

・特別徴収税額の納期の特例に関する申請書を地方自治体へ提出すること

 

<納期限>

対象期間、納期限は源泉所得税と異なりますので注意が必要です。

対象期間 納期限
6月~11月分  12月10日
12月~翌年5月分   翌年6月10日
 

 

<適用開始時期>

承認を受けた月分の住民税から適用を受けることができます。

例)承認日7月5日

 → 6月分:7月10日まで納付、7~11月分:12月10日まで納付、12~翌年5月分:翌年6月10日まで納付

 

納期の特例を活用することで事務負担軽減や資金繰り改善を図ることができる場合があります。従業員10人未満の事業主の方でまだ納期の特例の適用を受けていない場合は適用を検討してはいかがでしょうか。

 

 

参考資料

源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2505.htm

 

 

執筆者:髙木

 

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