お役立ちコラム

二つの会社で勤務する場合の労働保険・社会保険の取り扱い

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同時に二つの会社で勤務することになった時、労働保険・社会保険についてはどのように取り扱えばよいでしょうか?

今回は、こちらについてお話したいと思います。

 

(1)労災保険について

 労災保険の保険料は、それぞれの会社が支払う賃金に基づいて、それぞれの会社が負担します。全額会社負担となります。

なお、労災保険については、雇用保険や社会保険のような加入基準がなく、個人ごとに加入手続きをする必要はありません。勤務を開始した時、強制的に全ての従業員が加入したものとみなされます。毎年7月10日までに労働保険の年度更新をして、労働保険料(労災保険料と雇用保険料)を納付します。

 

(2)雇用保険について

雇用保険については、加入基準があり、「1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上雇用する見込みがある」場合、雇用保険に加入が必要となります。

二つの会社で勤務をして、二社とも雇用保険の加入基準を満たしていない場合は、どちらの会社も加入しませんので、この場合、雇用保険料はかかりません。

次に、片方の会社だけ加入基準を満たしている場合は、その会社で資格取得の手続きをします。未加入の会社では雇用保険料はかかりません。

また、アルバイトを掛け持ちしたりして、両方の会社で加入基準を満たしている場合がありますが、法律上、重複して雇用保険に加入できないことになっていますので、原則は賃金の高い方の会社で加入します。

 

(3)健康保険・厚生年金保険について

 健康保険と厚生年金保険については、加入基準があり、「1週間の所定労働時間及び1ヶ月間の所定労働日数が、正社員の1週間の所定労働時間及び1ヶ月間の所定労働日数の4分の3以上である」場合、原則加入が必要となります。また、平成29年4月からは、厚生年金保険の被者数が常時501人以上の会社、および被保険者数が常時500人以下の企業のうち、一定の要件を満たした会社で働く、本来の加入基準を満たさないパート・アルバイトの方でも社会保険の加入対象となることになりましたので、単純に「1週間の所定労働時間及び1ヶ月間の所定労働日数が、正社員の1週間の所定労働時間及び1ヶ月間の所定労働日数の4分の3以上である」ことに該当しない場合でも、直ちに未加入と判断できないところもあります。

(詳しくは、日本年金機構HPの

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2017/20170315.files/01.pdfをご参照下さい。)

 

 また、両方の会社で役員に就任する場合は、常勤か非常勤かで判断します。常勤の場合は加入義務があり、非常勤の場合、加入義務はありません。

 そして、二つの会社で勤務をして、二社とも社会保険の加入基準を満たしていない(加入義務がない)場合は、どちらの会社も加入できません。

片方の会社だけ加入義務がある場合は、その会社で資格取得の手続きをします。なお、未加入の会社では、資格取得の手続きは当然しないことになります。

ちなみに、雇用保険は加入基準を満たしていても重複して加入できないことになっていますが、健康保険・厚生年金保険は、それぞれの会社で加入義務がある場合は重複して加入手続きをする必要があります。よくあるケースですが、加入義務がある場合に加入手続きを怠っていることが行政指導等で発覚した場合は、さかのぼって社会保険料が徴収されます。一般従業員については考えにくいですが、代表取締役や役員については、子会社や関連会社で兼任する等して十分あり得えますのでご注意下さい。

 

2つの会社で社会保険に加入することになった場合は、「所属選択・二以上事業所勤務届」という書類を年金事務所に提出して、どちらか一方の会社を被保険者本人が選択することになっています。そして届出の提出先は、選択する方の年金事務所です。また、以前から在籍している会社で健康保険被保険者証が発行されている場合は、整理番号が変更されますので、一旦、健康保険被保険者証を返還する必要があります。そして、通常の資格取得の場合と同じように、新しく選択した会社の健康保険被保険者証が手元に届きます。健康保険の傷病手当金等、各種給付の手続きは、選択した会社で行います。

 

(4)注意事項

先にお伝えした通り、役員に関しては二社で役員を兼務することはままあることで、その場合、本来二社で健康保険・厚生年金保険に加入しなければならないところ、一社で加入していることから、もう一社での手続きを失念するケースが散見されます。常勤役員とみなされたら、過去に遡り、加入手続きが必要ですので、役員の考え方について最後に補足致します。

 

(役員を「被保険者」とする判断基準)~日本年金機構 疑義照会回答

① 事業所に定期的に出勤しているか

② 法人における職以外に多くの職を兼ねていないか

③ 役員会等に出席しているか

④ 役員への連絡調整または職員に対する指揮監督をしているか

⑤ 法人に対してどの程度意見を述べ、影響を与える立場にあるか

⑥ 法人からの報酬の支払いの実態

 

以上、判断に窮することがありましたら、参考にして下さい。

 

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