お役立ちコラム

「家なき子の特例」、三親等内の親族の家に居住している場合は適用不可!?

田舎の母が亡くなり実家を相続することになりました。この家は父が他界した後、母が一人で暮らしていました。私は現在、東京の叔母の家を借りて生活しており、これまで家を所有したことはなく、ずっと独身です。今回、小規模宅地等の特例の適用は受けられますか?

小規模宅地等の特定居住用宅地等の特例とは、被相続人等の居住の用に供している宅地等について一定の要件を満たす場合には、その評価額から最大330㎡まで80%減額される制度です。被相続人と同居していない親族がこの制度を利用するには取得者が以下の要件をすべて満たす必要があります。いわゆる「家なき子の特例」と呼ばれているものです。

·  「相続開始前3年以内に日本国内にあるその人又はその人の配偶者の所有する家屋に居住したことがないこと」

·  「被相続人に配偶者がいないこと及び相続開始の直前において一緒に住んでいた親族で相続人に該当する者がいないこと」

·  「その宅地等を相続税の申告期限まで有していること」

今回のご質問者は、実家を申告期限まで所有していれば上記にすべて該当しますので小規模宅地等の特例の適用を受けることができると考えられますが、

しかしながら、平成30年4月1日の改正により、いわゆるこの「家なき子の特例」については上記要件にさらに要件が追加され、以下に該当する者は除外されることとなりました。(措法69の4③二ロ)

(1)相続開始前3年以内に、その人の3親等内の親族またはその人と特別な関係のある法人が有する国内にある家屋に居住したことがある者 

(2)相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者

この追加要件について検討してみると、叔母はご質問者の三親等内の親族であるので、(1)に該当してしまうことになります。

しかし、この改正には経過措置が手当されており、平成30年3月31日時点で当初の要件を満たしている場合において平成32年3月31日までに相続開始があったときには「家なき子の特例」は適用可能となります。(税制改正法案附則118②)

したがって、もしご質問者の相続開始の日(お母様の亡くなられた日)が平成32年3月31日以前であれば、当初要件又は経過措置により「家なき子の特例」を受けることができますが、平成32年4月1日以降でしたら改正要件が適用されるため受けることができないこととなります。

 

 <参考文献等>

国税庁HPタックスアンサー 

相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例) 

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm

 

執筆者:高木

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