お役立ちコラム
増収増益でも株主は満足していない!?
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当社は5年前から経営目標として利益額の前年対比1%増を掲げ、順調にその目標を達成していきました。しかし、先日開催した株主総会において一部の株主から、当期の利益額では株主の期待に応えるには不十分であるとの意見がありました。 利益額の増加が株主を重視した経営に繋がると思っていましたがそうではないのでしょうか。
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経営目標としての利益額は、事業規模や資本効率を考慮していないため、経営目標として不適切な場合があります。例えば、前年と比較して増収増益であるときに、経営目標が利益の増加であれば会社の経営は順調であるように見えます。しかし、増収増益でも製造コストがかさんで利益率が低下している場合があり、その時に製品の収益性が低下している事実を見落としてしまう可能性があります。
このように利益額のみでは収益性や事業規模、資本効率が考慮されていないことから、一般的に利益額よりも利益率や投下資本利益率の方が経営目標として望ましいとされています。
ただし、投下資本利益率等についても自己資本コストが考慮されておらず、投下資本利益率等がプラスであることをもって、企業価値が上昇したとは言えない状況があります。
株主は銀行等からの借入金に係る利息支払後の金額をもとに配当が行われ、かつその金額は不確定です。内部留保がなければ配当が支払われないこともあります。
このように投資家にとって、株式投資は貸付金よりも不確実性が高いことから、そのリスクプレミアム分を加味したリターンを要求することになります。
会計上の利益を用いた投下資本利益率等は他人資本コストが考慮されていても、上記のような自己資本コストが考慮されておりません。
この問題を解決する利益概念としてEVA(Economic Value Added、経済付加価値)があります。
EVAはNOPAT(※1)から資本コストを差し引いたものであり、株主が期待するリターンを組み込んだ利益概念になります。
ご質問の株主は、貴社が利益を獲得しているものの株主が期待するリターンを獲得できていないことを指摘しているものと思われます。
経営目標としてEVAを導入することで、経営目標が株主の利害と一致し、より株主を重視した経営に繋がると思われます。
(※1)
NOPAT(Net Operating Profit After Tax)・・事業活動により生み出された税引後利益
執筆者:小坂
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