お役立ちコラム

これを見れば全部わかる!経理アウトソーシングについてあらゆる疑問にお答えします

経理業務を効率化する方法のひとつにアウトソーシングがあります。今回は経理アウトソーシングにおける費用感やメリット・デメリットなど、様々な疑問にお答えしてまいります。経理業務のアウトソーシングを検討されている方は是非お読みください。



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1. そもそも経理業務ってどんなことがあるの?


まずは基本から。
そもそも経理業務とはどのような業務を指すのでしょうか?
「経理」は「経営管理」の略で、もともとはお金に限らず経営資源を管理することを意味します。いまでは、主に「お金の流れを管理すること」と一般的には認識されています。経理は、自社の財政状況、経営実績、税金などを数値化して、経営者や株主へ資金に関する情報を提供します。具体的に経理部門が担う業務は、主に5つあります。

(1) 資産管理
資産情報の収集、記録、資産管理台帳の作成と更新
(2) 支払業務
入力データ・証憑類の整理・確認、帳簿への記録、計算、伝票・帳簿の作成、振り込み手続き
(3) 予算・利益管理
予算・利益管理に関するデータの入力、分析業務
(4) 債権債務管理
債権情報(売掛金、未収金)や債務情報(買掛金、未払金)の一元管理、入金、支払い部門および債権・債務計上部門管理
(5) 決算関連業務
月次・年次決算業務、各種申告書作成支援、決算書作成業務
※引用元 :BPO(業務プロセスアウトソーシング)研究会報告書 平成20年6月 経済産業省)

細かい業務内容を並べるとさらに多くの経理業務がありますが、大まかな分類ではこのようになります。
ちなみに、「会計」は家計簿をつけるようにお金の出入りを記録する会計帳簿を作成する業務です。「会計」は経理業務の一部と言えるでしょう。「財務」は資金調達、資産運用を行う業務です。経理が作成した賃借対照表や損益計算書をもとに、銀行との融資交渉、投資、M&A(合併や買収)などを行います。

2. 経理業務を効率化するにはどうすればよいか?


上記のように経理業務な経理業務を効率化するために有効な方法はどんなものがあるでしょうか?
以下は、ビジネススキームの変化やITの発達によって出現した手法です。アメリカで誕生し、日本企業にも徐々に導入されつつあります。


(1) クラウドサービス(ASP)の利用
クラウドサービスは、インターネット経由でアプリケーションサービスを利用する形態です。以前は「ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)と呼ばれていましたが、ほぼ同義です。
現在では説明不要なクラウドサービスですが、改めてそのメリットは、
・ 自社で情報システムを開発・保守する必要がない
・ 初期費用を抑え、導入期間が短縮できる
・ 保守、メンテナンス、アップデート等はサービス提供側が実施
・ インターネットに接続できる環境があれば、社外利用が可能
既に経理や会計機能に特化したクラウドサービスが多く提供されており、利用されているユーザーも少なくないでしょう。


(2) BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)
BPOは「ビジネス・プロセス・アウトソーシング」の略語で、日本では「アウトソーシング」とほぼ同じ意味で使用します。企業が自社の業務を専門事業者に外部委託することです。
「業務コストの削減」「人手不足の補完」「専門家への委託による業務品質の向上」「業務の標準化」など、さまざまなメリットがあります。


(3) ストラテジック・アライアンス
ストラテジック・アライアンスは、日本語で戦略的提携と訳します。アウトソーシングを提供する企業が、顧客企業と対等なパートナーとして提携します。双方の企業にとって新しい分野を補完し合い、自社のコア事業を活かすことが可能です。外部リソースを利用するという意味で、新しいアウトソーシングの形態と言えるでしょう。


(4) シェアードサービス
「シェアードサービス」は、自社のグループ企業に業務委託する方法です。A社とB社(A社のグループ会社)の経理業務を、C社(A社のグループ会社)へ委託するイメージです。自社グループ内へ委託するため、外部委託する「アウトソーシング」とは意味が異なります。


当コラムでは、(2)BPO=経理アウトソーシングについて、詳しく解説していきます。

3. 経理をアウトソーシングするメリット・デメリットとは?


経理アウトソーシングは、会社の経営を円滑かつ効率的にするために役立つサービスです。
経理アウトソーシングにはさまざまなメリットがありますが、デメリットも見落としてはいけません。双方をきちんと確認した上で、信頼できる経理アウトソーシング会社を選ぶようにしましょう。



経理アウトソーシングのメリット



(1) 経理にかかる人件費や教育・採用コストをカットできる
経理アウトソーシングを利用する上で一番のメリットがコスト削減です。
自社で経理スタッフを抱えると、その分の人件費だけでなく教育コストや採用コストなどがかかってしまいます。 また、経理担当者が退職してしまった際には採用にかかるコストもかなり増えて、経営を圧迫するという可能性も...
年間で経理スタッフに支払っている給与や経理に関わるコストと比較して、経理アウトソーシング会社に依頼する方が低コストの場合は、外注もひとつの経営策といえます。


(2) 繁忙期などの仕事配分を考えずに済む
月末、年末、年度末、繁忙期は、経理の仕事は非常に忙しくなります。
反対に閑散期もあり、経理の仕事の配分をその時期によって変えていかなければなりません。
経理の仕事をアウトソーシングすれば、業務配分などを考える手間をなくすことができます。 忙しい時期のみ、また時間がかかる業務のみ外注するという方法も有効です。


(3) 社員による経理の不正を防ぐことができる
社内の事情、会社間の情報を握っていると、経理スタッフは不正を行いやすくなります。 また、長年同じスタッフに経理業務を任せていると、会社の資金の着服、数値をごまかすといった不正に気づきにくくなることも...
経理アウトソーシング会社では数値のチェックを正確に行っているだけでなく、ビジネスパートナーとしての契約関係にあり、不正にはより厳しい体制を取っていることが大前提となります。
契約に従って、正しく経理の管理を行ってくれることでしょう。


(4) 法律の改訂に迅速な対応ができる
会計規則や税金にまつわる法律は日々微妙に変化しています。
社内の経理スタッフだと、専門家ではない限り情報を見落としている可能性もありますが、経理アウトソーシング会社なら経理のエキスパートが揃っており、常に経理に関する最新の情報を共有し、プロとして迅速にしっかりとした対応を行うことでしょう。


(5) より生産性の高い業務に集中できる(コアコンピタンス)
経理の業務を完全にアウトソーシングすることで、それまで経理の仕事をしてきた社員に他の仕事を与えることができます。
経理業務にかかっていた時間およびコストを本来の会社に必要な業務に回せば、より生産性の高い業務を行うことができるでしょう。
このことを「コアコンピタンス」ともいいますが、少ない社員人数の中で企業としての得意分野に注力し、より効率的に業務を進めたいという場合には、経理アウトソーシングは大変役立ちます。


経理アウトソーシングのデメリット



(1) 社内に経理のノウハウが蓄積されない
経理の仕事をすべてアウトソーシングしてしまうと、社内に経理ができるスタッフがいなくなり、経理業務のノウハウが蓄積されません。
経理アウトソーシング会社との契約を終了した際、社内に引き継げるスタッフが不在という事態に陥り、苦慮する可能性があります。
アウトソーシングする業務を縮小するときや、自社で内製化を進める際に、ノウハウ等を提供してくれる経理アウトソーシング会社を選ぶことで、問題を解決できるかもしれません。


(2) イレギュラーな業務内容に対応困難
経理は毎日毎月同じ業務ばかりではありません。新しいプロジェクトが発足した際や、トラブルが起きた際にも経理には迅速な対応が求められます。
しかし経理アウトソーシング会社は原則として契約に則った内容の仕事を行うため、イレギュラーな対応には必ずしも対応できるわけではないというデメリットがあります。
オプションをつけられる経理アウトソーシング会社や、イレギュラーな仕事内容にもきちんと対応してくれる経理アウトソーシング会社を選びましょう。


(3) 経理アウトソーシング会社による情報漏えいの恐れがある
経理の業務をアウトソーシングするということは、会社の経理状況を開示するということになります。
会社の経理の状態が外部に丸分かりになってしまうため、情報漏えいに関してはとくに慎重にならなければなりません。 投資などを行っている会社の場合は、競合他社にその内容が漏れてしまうという恐れもあります。
依頼する経理アウトソーシング会社がきちんと情報漏えいに対しての対策を取っているか、セキュリティは万全かどうか、契約前にはホームページだけでなくスタッフにしっかり確認を取っておくようにしましょう。

4. アウトソーシングの費用はどのくらい?


では、いざ経理アウトソーシングを行いたいとなった場合、どのくらいのコストを見込めばよいのでしょうか?
ここでは、経理アウトソーシングに必要な料金の種類や相場、費用感について解説していきます。



経理アウトソーシング料金の構成



経理アウトソーシングの料金は、いくつかの費用によって構成されています。具体的な構成を見てみましょう。

a.稼働費
稼働費は、経理業務(仕訳の記帳・債権債務管理・決算処理・入出金処理・財務分析など)に携わってもらうために発生する費用です。アウトソーシング会社の稼働率が上がるにつれ、費用も高くなります。
b. 技術費
>技術費は、経理業務を行うためのシステム導入費用などを指します。「会計ソフトの導入費」が代表例です。業務委託する経理業務の内容によって技術費は変動します。なお、技術費の料金体系には下記のような種類があります。
① システム導入費用
② 月額使用料
システムによって、①②両方または片方のみ発生する場合があります。
c. 管理費
経理業務に関する資料・コストなどを管理するための費用です。経理業務の改善に取り組んでくれるアウトソーシング会社もあるため、経理業務の効率化などで悩んでいる会社におすすめです。経理業務のうちアウトソーシング会社に何パーセント管理してもらうかで、料金が変動するケースもあるため注意しましょう。
d. 初回登録料
アウトソーシング先によっては、初回費用として登録料が発生することがあります。
設定価格は数万円~数十万円前後と幅広いです。申し込むタイミングによっては、初回登録料が免除されるケースもありますが、登録料が発生しない会社のなかには月額料金を割高にしている場合もあるため、十分検討しましょう。


料金変動の要因



(1) アウトソーシング要員数および稼働日数
アウトソーシング会社が業務を行うために必要とする要員数と稼働日数が増えるにつれて、料金は高くなる傾向があります。アウトソーシングする経理業務が多くなると稼働時間も増えやすくなり、費用がかさむ原因となります。
アウトソーシング要員を減らして費用を抑えることも可能ですが、人員が少ない分業務が完了するまでの日数が延びる恐れもあるため、注意しなければなりません。


(2) 納期
アウトソーシング先に対して、短納期で制作物の納品を依頼した場合も料金は高くなります。理由は、アウトソーシング会社側も納期を短縮することで要員を増やさなくてはならず、人件費が増えるためです。
また、深夜帯・土日・お盆やゴールデンウィーク内の稼働をアウトソーシング先へ依頼した場合は、割増料金を請求されることもあるため、事前に確認しておきましょう。


③ 経理業務の難易度
一般的には、アウトソーシングする業務の難易度が高く、専門的になるほど料金は高くなります。人件費や業務に導入するシステム費用が増えたりする可能性があるためです。
アウトソーシング会社にとっても専門性の高いスペシャリストほど単価が高額となるためです。


経理アウトソーシング料金の目安



アウトソーシング料金の目安は、該当する業務を担う人件費と比べて割安かどうかがポイントになります。
例)時給1,000円 アルバイト1名
  1,000円×8時間×20日=16万円
  交通費、採用広告費を考慮して時給2,000円とすると、1名あたり毎月32万円

上記のように人員を雇用した場合の費用と比べてアウトソーシングの料金が割安になるかどうかが目安となります。なお、業務のアウトソーシングにより社会保険料の支払いが無く、その分の費用を抑えることができます。

5. アウトソーシングに向いている企業


次に、経理アウトソーシングはどのような企業に向いているか?という点です。
中小企業では、大企業とは違って他部門の社員が経理業務を兼任していたり、慢性的な人手不足で経営の足かせとなっていたり...。
そんな悩みを解消してくれるのが経理のアウトソーシングです。



中小企業が抱える問題



中小企業の多くは、人手不足という問題を抱えています。また、仕事を受注する営業部門や商品を仕上げる製造部門などにリソースが割かれ、経理に力を入れている中小企業は少ないのではないでしょうか。
日々のルーティン業務に追われることで、経理の観点から経営にフィードバックする機会や、最新の経理知識を深める余裕もありません。経理は業績を左右する判断のベースとなる情報を提供する部門にも関わらず、そこにマンパワーを注げていないのが、中小企業の人手不足がもたらす影響のひとつです。



中小企業こそ経理アウトソーシングに向いている



人手不足を抱える中小企業だからこそ、日々の業務はもちろんのこと、経理業務をアウトソーシングすることで経営をより効率化できます。
「人件費を抑えコストダウンにつながる」、「専門的な知見を活用できる」、「不正防止」など、アウトソーシングによるメリットは前述の通りです。専門職として社内にスタッフを要することが難しい中小企業の方が、経理アウトソーシングのメリットは大きいといえるでしょう。

6. 経理アウトソーシングを選択する場合のポイント


それでは、実際に経理アウトソーシングを採用する場合のポイントを考えてみましょう。
具体的にどのような経理業務を選択してアウトソーシングするのか、外部に依頼する際にはどのような点に注意しなければならないかを述べていきます。



アウトソースできる経理業務の例



経理には、ルーティン業務をはじめ決算業務など、さまざまな業務があります。経理をアウトソーシング化する際は、自社の業務負荷や自社固有の状況に応じて、部分的なアウトソーシングにするのか、フルアウトソーシングにするのかを選択することが必要です。
アウトソーシング可能な経理業務の一例は、次の通りです。

  • 売上管理業務
  • 請求書、見積書、注文書の作成業務
  • 受発注管理業務
  • 経費精算、管理業務
  • 現金出納帳管理業務
  • 記帳業務
  • データ入力業務
  • 出荷、在庫管理業務
  • 伝票審査業務
  • 事業計画書の作成業務
  • 月次決算業務
  • 四半期決算業務
  • 期末決算業務
  • 税務決算業務


外部に委託する際のポイント



(1) 自社の固有業務を定型化できるか?
どんな会社にも自社固有の業務は存在するもの。そういった業務を一般化し定型化することが可能かどうか、しっかりと見極めることが必要です。
特に業歴の長い会社の場合、現在に至るまでの間に自社固有の業務がたくさん生まれているはずです。アウトソーシング対象すべての業務をリストアップし、定型化が可能かどうかの事前チェックは欠かせません。


(2) 例外のパターン化は可能か?
自社固有業務と同様、どんな会社にも経理上の例外パターンは存在します。それらをパターン化することが可能かどうか、判断が必要です。
法的に遵守しなければならない部分は、どんな会社も統一できる処理になりますが、日々のちょっとしたルーティン業務のなかには、自社判断による例外処理もあるでしょう。
経理業務をアウトソーシング化するためには、それらの例外処理をパターン化できるかどうかが重要です。本当に必要な例外処理なのかどうか、事前に見直し判断するようにしましょう。


(3) 自社の状況を理解してもらえるか?
汎用的な業務を代行するアウトソーシング先では、自社固有の状況を理解し、対応してもらえないケースもあります。自社固有の状況に対応が可能なアウトソーシング先かどうかの見極めも重要です。


(4) 自社の人材育成は不要か?
経理をアウトソーシングすると、ノウハウはもちろん自社には蓄積できません。また、将来的な人材育成にも結びつきません。そういった状況が自社にとって問題がないかどうかも、しっかりと判断する必要があります。
すべての業務を委託する必要がないため、仮にルーティン業務に追われているようであれば、その部分だけでも外部委託するという選択肢もあります

7. 経理アウトソーシング先を比較するポイント


最後に、アウトソーシング先の会社を選ぶ際の比較や選定のポイントとして、5つの観点を上げていきます。



(1) 適正なコスト
アウトソーシングのコストは安いに越したことはありませんが、あまりにも安すぎる場合は注意が必要です。委託する業務内容によっては、それに見合ったコストがかかるのは当然のこと。汎用的に処理することを前提にコストが抑えられているようなら、希望するアウトプットが得られない可能性もあります。業務内容から適正なコストの提示を受けているかどうかをチェックしましょう。


(2) 品質を見極める
経理業務には、それぞれの会社ならではの業務や方針があるもの。機械的に業務をこなすだけでなく、自社固有の状況を理解して業務を担ってもらえるアウトソーシング先かどうか、品質を見極めるのも重要なポイントです。自社固有の処理や状況を汎用的に定型化することで、生産業務に支障が出てしまっては本末転倒。経営に生かせる高い品質のアウトプットが得られるかどうかチェックしましょう。


(3) スピード感
経理をアウトソーシングする目的のひとつとして、スピーディーな経営判断を行うことが挙げられます。そのため、アウトソーシング先の業務スピードは無視できないところです。導入スピードはもちろんのこと、業務の処理スピードがどの程度なのかは、事前に把握できればそれに越したことはありません。


(4) 実績をチェック
多くの会社を手がけているアウトソーシング先のほうが、ノウハウの蓄積も期待できます。さまざまなケースに対応できるアウトソーシング先かどうかは、効果を出した実績の内容から判断するようにしましょう。経理業務は、業種業態だけではなくそれぞれの会社に固有の業務も存在します。豊富な実績があれば、例外処理を適正に行うスキルがあるなど、信頼感がアップします。


(5) セキュリティ面
アウトソーシングをする場合は、自社の重要な情報を渡すことになります。堅牢なセキュリティが確保されているかは、セキュリティの認証制度を取得しているかどうかなどで判断できるかもしれません。できれば現場見学を行ったうえでアウトソーシング先を選定するようにしましょう。

まとめ


いかがでしたか?
経理業務は会社固有の要素が含まれ、すべてを自動化することは難しく、どうしても人の手を必要とする業務です。経理のアウトソーシングと一言で言っても、コストやメリット・デメリット、アウトソーシング先の選定方法など、考慮しなければならない点が多くありました。
経営判断のスピードアップをさせるには、経理の業務改善は欠かせません。アウトソーシング化も業務改善のひとつ。そのための検討材料のひとつとして当コラムがお役に立てれば幸いです。

以上

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