お役立ちコラム
賞与の受け取りを辞退した役員の所得税について
-
役員としての賞与の受け取りを辞退しました。この場合、所得は発生しないと考えてよいのでしょうか。
-
賞与を受け取れることとなったことと、その受け取りを辞退したこととは全く別個の事とみなされるため、原則として所得税は課税されます。
この場合の源泉徴収についても、「給与等その他源泉徴収の対象となるものの支払者が、当該源泉徴収の対象となるもので未払のものにつきその支払義務の免除を受けた場合には、当該債務の免除を受けた時においてその支払があったものとして源泉徴収を行うものとする。」とされております(所得税法基本通達181~223共-2)。ただし、会社の債務超過の状態が相当期間継続し、その支払をすることができないと認められる場合は、この限りではない(源泉徴収しなくて差し支えない)とされています(同通達但書)。
また、役員が次に掲げるような特殊の事情の下において、一般債権者の損失を軽減するため、その立場上やむなく、自己が役員となっている法人からの賞与の受け取りを辞退した場合には、当該辞退した部分については、源泉徴収をしなくて差し支えないとされています(所得税法基本通達181~223共-3)。
(1)当該法人が特別清算の開始の命令を受けたこと
(2)当該法人が破産手続開始の決定を受けたこと
(3)当該法人が再生手続開始の決定を受けたこと
(4)当該法人が更生手続開始の決定を受けたこと
(5)当該法人が事業不振のため会社整理の状態に陥り、債権者集会等の協議決定により債務の切捨てを行ったこと
したがって、役員が受け取りを辞退したことによって、その債務免除益が、賞与を支払うべきであった法人の益金に算入される場合であっても、辞退の原因が上記の条件に該当するものであれば、源泉徴収は不要ですし、役員に所得税は課税されません。
<参考文献など>
所得税法基本通達181~223
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shotoku/28/01.htm
関連コラム
- 源泉所得税の「納期の特例」総まとめ!
- ■ 源泉所得税の納付 p; 自社の従業員に給料を支払うときや弁護士、税理士等に報酬を支払うときには報酬額から源泉所得税を控除して、その控除した源泉所得税を税務署に納める必要があります。この源泉所得税の納付期限は原則として、支払をし…
- 退職所得控除額の計算方法の注意点-2回目の退職金の支給を受けた場合-
- 今回は、転職に伴い退職金の支給を複数回受けた場合の退職所得控除額について説明します。 p; ■ 基本的な退職所得控除額の計算方法 p; 退職所得の金額計算に必要な退職所得控除額は、退職金の支給を受けた会社での勤続年数に応…
- 日本とデンマークの新租税条約(源泉所得税)
- 「所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とデンマーク王国との間の条約」(以下「新条約」といいます。)が平成30年12月27日に発効し、源泉所得税については平成31年1月1日から適用が開始されること…
- 派遣会社への業務委託料、源泉徴収は必要?
- この度、弊社で人材派遣を利用することになりました。派遣社員を雇用する場合、派遣会社に支払う業務委託料に対して源泉徴収の必要はあるのでしょうか?
- 外国法人に対する原稿料の支払いをする場合、源泉徴収は必要?
- 非居住者の方に、会社のパンフレットに使用する原稿を作成してもらったので対価として原稿料を支払いました。この場合、源泉徴収しなければならないのでしょうか。
当サイトの情報はそのすべてにおいてその正確性を保証するものではありません。当サイトのご利用によって生じたいかなる損害に対しても、賠償責任を負いません。具体的な会計・税務判断をされる場合には、必ず公認会計士、税理士または税務署その他の専門家にご確認の上、行ってください。