お役立ちコラム
男性版「産休」制度?どう変わる、男性の育児休業
男性版「産休制度」の新設?
男性の育児休業取得率は徐々に上昇しているとはいえ、いまだ10%未満という状況です。
そこで厚生労働省の労働政策審議会では男性の育児休業取得促進策を打ち立て、現在開催中の通常国会に法改正案を提出しています。おもな方向性は下記となります。
- 子の出生直後の休業(出生時育児休業)
- 妊娠・出産(本人または配偶者)の申出をした労働者に対する個別の働きかけおよび環境整備
- 育児休業の分割取得
- 育児休業取得率の公表の促進
- 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
どのような改正案なのでしょうか?ひとつひとつ見ていきましょう。
(1)子の出生直後の休業(出生時育児休業)
現行の育児介護休業法でも、男性の育児休業は取得可能であるものの1か月前に申出を行うこととされており、出産が早まった場合に出産直後の取得ができない仕組みとなっています。男性の育児休業取得時期は産後8週間に集中していることから、より柔軟で取得しやすい仕組みとして挙げられているのがこの男性版産休制度ともいえる新制度です。
- 対象期間については、子の出生後8週とすること
- 取得可能日数については、4週とすること
- 申出期限は現行の育児休業より短縮し、原則2週間前までとすること
- 分割して2回取得可能とすること
- 労働者の意に反したものとならないことを担保したうえで、労働者の意向を踏まえて、事業主の必要に応じ、事前に調整したうえで、新制度に限り、就労を認めること(休業中に就労することが可能)
(2) 妊娠・出産(本人または配偶者)の申出をした労働者に対する個別の働きかけおよび環境整備
調査結果において男性では6割以上が企業からの働きかけがなかったと回答していることから、事業主による個別の働きかけや職場環境の整備を進めることが有効と考えられます。
- 休業を取得しやすい職場環境の整備として、研修、相談窓口設置、制度や取得事例の情報提供等の複数の選択肢からいずれかを選択すること
- 本人または配偶者の妊娠・出産の申出をした労働者に対し、個別に周知し、取得の働きかけをすることを事業主に義務付けること
(3) 育児休業の分割取得
子の出生直後の短期間だけでなく、その後も夫婦交代等でのまとまった期間の休業取得を促進するため、育児休業を分割して取得できるようにすることも有効です。
- 分割して2回取得可能とすること
- 1歳以降の延長の場合の取扱いとして、開始日を柔軟化することで、各期間の途中でも夫婦交代を可能とすること
(4) 育児休業取得率の公表の促進
企業自ら積極的な取組を進めていくという社会的な機運を高めるため、育児休業の取得率の公表を促すことも有効と考えられます。
- 大企業(常時雇用する労働者が1000人超)に男性の育児休業取得率または育児休業等および育児目的休暇の取得率の公表を義務付けること
(5) 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
雇用形態にかかわらず休業を取得しやすくなるよう、要件緩和も効果的です。
- 有期雇用労働者の育児休業・介護休業の取得要件のうち「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」の要件を廃止すること。ただし労使協定を締結した場合には無期雇用労働者と同様に、事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である労働者を対象から除外できるものとする
この改正により、男性の育児休業取得パターンが増え、これまでより男女問わずワーク・ライフ・バランスのとれた働き方が実現できるようになり、第一子出産後に約5割の女性が退職している現状において、女性の雇用継続にもつながるとされています。
出典:厚生労働省 「第34回労働政策審議会雇用環境・均等分科会」【参考資料】男性の育児休業取得促進等に関する参考資料集
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15443.html
上記の制度化に伴い、雇用保険の育児休業給付金制度も見直されることになります。
- の出生後8週間以内の育児休業期間についての新たな給付金制度(出生時育児給付金制度)を新設する
- 子の出生後8週間以内の休業において一時的な就労の取扱いを制度化する
- 新たな給付金の給付率や制度は現行の育児休業給付金と同等とし、67%の給付率が適用される期間は新制度と育児休業給付金の期間を通算することとする
- 育児休業の分割取得への対応として、2回目以降の休業に対する休業前賃金、被保険者期間の判定は初回時を適用する
参考資料:厚生労働省「育児休業」介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案要綱」の諮問及び答申について
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000073981_00008.html
2週間以上の育休取得で社会保険料免除へ
男性の育児休業取得促進の動きは社会保険料の免除制度においても進んでいます。
現行の育児休業中の社会保険料免除は、月末時点での休業取得状況により判断されるものです。実態として休業取得が月末を含めた短期間と、月途中の短期間とでは免除対象者が変わるという不公平が生じています。また賞与支給月の月末に休業取得した場合、たとえ休業が1日であっても賞与の保険料が全額免除されることで、免除を目的とした短期間の育児休業取得を選択する誘因が働きやすい状況にあります。
これを次のように改正する方向性で検討が進んでいます。
- 育児休業の取得のタイミングによらず、その月の月末が休業中である場合に加え、その月に2週間以上の休業を取得する場合にも免除対象とする
- 新設の男性版「産休」制度でも社会保険料を免除する
- 賞与の社会保険料については連続して1か月を超える休業取得者に限り免除対象とする
参考資料:厚生労働省「第135回社会保障審議会医療保険部会」資料3
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15049.html
ご紹介した新制度はこれから審議されることになりますが、少子高齢化対策として何らかの改正が行われることになるでしょう。
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(執筆者:平野)
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